スマートフォン分野におけるサムスンの最大のライバルであるAppleも、カメラに多額の投資を行っている。「iPhone 14」のProモデルでは、本体平面から突き出た比較的大型のレンズがカメラの性能を誇示しているが、Appleはセンサーをアップグレードし、解像度と暗所での撮影性能を向上させている。
スマートフォンの撮影画質を改善する主要な手法の1つは、ピクセルビニングと呼ばれるものだ。ピクセルビニングを使用すると、物理ピクセルの塊が結合されて大きな仮想ピクセルを作り出し、薄暗いときでもより多くの光を集められるようになる。つまり、解像度を犠牲にすることで、ノイズの軽減とカラーの向上を実現するということだ。
ピクセルビニングを使用しているのはサムスンだけではない。AppleのiPhone 14 Proや、Googleの「Pixel 7」、小米科技(シャオミ)の「Xiaomi 12T Pro」などのスマートフォンもこの手法を使用しているが、ISOCELL HP2はかなり高度な部類のセンサーに入る。例えば、AppleとGoogleは、4つの物理ピクセルを1つの仮想ピクセルに変換する2×2のピクセルビニングを使用している。サムスンのフラッグシップスマートフォンである「Galaxy S22」は2019年から3×3のピクセルビニングを搭載しており、明るい場所では1億800万画素の写真を、薄暗い場所では1200万画素の写真を撮影することができる。
サムスンのISOCELL HP2は、良好な条件下では、2億画素の写真を撮影できる。暗所では、ピクセルビニングによって、ピクセルを2×2の塊にグループ化し、5000万画素の画像にする。さらに暗い環境では、ピクセルを4×4の塊にする、「Tetra2pixel」という独自のピクセルビニング技術によって、1250万画素の写真を撮影する。
2022年に発表された2億画素の「ISOCELL HP3」では、2段階のピクセルビニングが利用可能だった。ただし、HP3はより小さなピクセルを使用するため、カメラのサイズを最小限に抑えられるものの、そもそも光を集めることがあまり得意ではない。2021年に発表されたISOCELL HP1にも、同じ問題があった。しかし、HP2では、HP1になかった機能がいくつか追加されている。
ピクセルビニングには、ほかにもいくつかの利点がある。カメラは外周部分を切り捨てることで、より遠くの被写体にズームインできる。この機能は、スマートフォンに従来のカメラレンズのようなズーム機能を持たせる取り組みにおいて、中核的な役割を果たしている。ピクセルビニングによって、高解像度の4K動画や8K動画の新しいオプションも可能になる。
ただし、ピクセルビニングには欠点もある。多くのピクセルを処理する作業は、バッテリーを大量に消費する。また、高解像度の写真を保存するには、大量のストレージスペースが必要だ。高解像度センサーは、原理的には優れているが、高品質のレンズと組み合わせない限り、最高の画質は得られない。
Yim氏は、「最高解像度の2億画素モードでは、より多くのRAMと電力が必要になる」と述べている。この水準の高解像度センサーがハイエンドのスマートフォンにしか搭載されないのは、そのためだ。
ISOCELL HP2にとって困難なのは、2億画素で撮影するときに色を判断することだ。デジタルカメラは、それぞれのピクセルで赤色、緑色、青色のいずれかの色の光を捉えるが、Tetra2pixel設計では、4×4の各ピクセルグループがそれらの色の1つしか捉えない。サムスンによると、16個のピクセルで構成されるそれらのグループ内で、必要とされる色のディテールを補うために、同社は人工知能アルゴリズムを使用しているという。
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