太平洋を見下ろすサンフランシスコ南方の断崖で、スタートアップのZiplineが製作したドローンが、筆者の横にあるカタパルト発射台から電気モーターによって発射され、テスト飛行を開始した。従来の飛行機に似た固定翼設計を採用したこのドローンは、自動操縦で北に飛行して、風向きを基にアプローチのプランを建て、大きく旋回して、筆者の数メートル前の芝生に絆創膏と鎮痛解熱剤、胃薬が入った箱をパラシュートで落下させた。
ドローンに関連する技術が成熟し、物珍しいテストプロジェクトの段階を越えれば、皆さんも近い将来、ドローン配送を利用することになるかもしれない。2023年には、自動車で配達してもらったり、自ら店舗に足を運んだりしなくても、必要な薬やテイクアウトの夕食、電動ドライバーの電池、食洗機用洗剤などをドローンが宅配してくれるようになるかもしれない。
Alphabet傘下のWingでマーケティング責任者を務めるJonathan Bass氏によると、現在、同社のドローンは、オーストラリアとフィンランド、米国テキサス州の何十万人もの人々にサービスを提供しており、2023年にはサービスを拡大する予定だという。Bass氏は、Wingのサービスを利用できるようになる人々の数について、「数百万人規模になると予想している」と語った。
ドローン配送は、コーヒーを飲みたい場合や薬が必要な場合に、新次元の利便性と即時性を提供する可能性がある。また、交通量を減らし、二酸化炭素排出量を削減することもできる。パンデミックの発生を受け、私たちはそれまで実店舗で購入していたものを注文して配達してもらうようになったが、ドローンによって、そうした習慣が完全に定着する可能性もある。
今から10年前、Amazonは「Prime Air」プロジェクトを立ち上げて、ドローン配送を初めて披露したが、当時は、注目を集めたいだけの企画と嘲笑する者もいた。テクノロジーやプライバシー、規制に関する課題もあったが、状況は変わりつつある。
Drone ExpressやMatternet、DroneUp、Mannaといった企業は、各社とも精力的に活動している。その結果、テキサス州やカリフォルニア州、バージニア州、オハイオ州、ジョージア州、ユタ州、ノースカロライナ州、アーカンソー州の多くの住民は、複数のドローン配送サービスから好きなものを選べるようになっている。国際的な事業も成熟しつつあり、欧州で規制が緩和されたほか、オーストラリアでは大規模な事業が展開されている。Ziplineには、ルワンダとガーナで医療製品を配送してきた6年間の実績がある。DoorDashやWalmart、Krogerといった企業は、製品を顧客のもとに届けるために、ドローン配送会社と契約を結んでいる。
ほとんどの人にとって、ドローン配送は珍しい対象であり続けるだろう。しかしドローン技術は、前途有望だと証明され始めている。
利用者は通常、小売業者やレストラン、配送業者、またはDoorDashのようなサービスを通して、ドローンに配送してもらう製品を注文する。
FedEx、UPS、米国郵便公社(USPS)のどの業者が荷物を届けるのかということを米国のほとんどの人が気にしないのと同様に、ドローン配送会社も概ね黒子の役割を果たすようになると考えている、とアイルランドのドローン配送会社Mannaの最高経営責任者(CEO)であるBobby Healy氏は話す。「ドローン配送会社は、食料品会社や大手レストランチェーンなどの大手ブランドを支える形になるだろう」
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