バンダイナムコエンターテインメントは12月26日、「アイドルマスター」シリーズに関するカンファレンス「PROJECT IM@S カンファレンス」を、同社のxRスタジオ「MIRAIKEN studio」にて開催。複合現実分野に挑戦することや、ライブストリーミング発の新規アイドルプロジェクト「PROJECT IM@S vα-liv(ヴイアライヴ)」をはじめとした、今後の展開について発表を行った。
アイドルマスターは、2005年7月から稼動を開始したアーケードゲームを起点として多方面に展開。このカンファレンスでは、バンダイナムコグループが重点戦略として掲げるIP(キャラクターなどの知的財産)軸戦略の一環と位置付けている、アイドルマスターシリーズの今後について説明するものとなった。
バンダイナムコエンターテインメント 第3IP事業ディビジョン ディビジョン長 執行役員の田中快氏ならびに、同第3IP事業ディビジョン 765プロダクション ゼネラルマネージャーの波多野公士氏が登壇。あわせて、アイドルの天海春香も挨拶を行い、カンファレンスに華を添えていた。
冒頭は田中氏が、アイドルマスターのIP軸戦略について説明。これまで通りゲーム展開を軸にしながらも、アイドルたちの活動の可能性を広げ、ゲーム領域に閉じないアイドル活動の拡大を目的として7月に発表した「“MR”-MORE RE@LITY-プロジェクト」など、IPの軸を広げる挑戦をしていくという。
これまでも「PROJECT IM@S」の名目でメディアミックス推進プロジェクトを展開しているなか、2009年から続いていた「2nd VISION」から、新たに「3.0 VISION」を掲げ、変化の時代において、これまで以上に期待され愛される作品となれるよう、ゲーム作品を超えたマルチIP作品への成長を目指すという。
続けて波多野氏が登壇。まず、同氏が所属する「765プロダクション」について説明。この名称は、アイドルマスターにおけるアイドルたちが所属する事務所名にもなっている。波多野氏はこの名称について、パックマンやアイドルマスターなどの作品を生み出したナムコのクリエイティブに対するリスペクトとともに、事務所を現実に存在させることで、責任を持ってアイドルたちを輝かせる覚悟を表しているという。
まずアイドルマスターシリーズについて触れられた。アイドルマスターは、プレーヤーがプロデューサーとなり、トップアイドルを目指してアイドルを育成していくゲーム原作の作品。17周年を迎えており、現在は「アイドルマスター」「アイドルマスター シンデレラガールズ」「アイドルマスター ミリオンライブ!」「アイドルマスター SideM」「アイドルマスター シャイニーカラーズ」の5ブランドで展開され、登場するアイドルは300名を超えている。そしてゲーム展開を軸に、ユーザーはプロデューサーという立ち位置で、グッズ、音楽、書籍、アニメ、ライブイベントなど、さまざまな形でコンテンツ展開を通し、 アイドルプロデュース体験を楽しんでいると説明する。
ほかにも、グループ会社を含む100社以上のパートナー企業により幅広く事業を展開。軸となっているゲームについては、アプリゲームを中心に累計ダウンロード数4500万以上、音楽展開も累計楽曲数1300曲以上となっており、2022年に入ってサブスクリプションサービスの解禁も行われている。ライブ興行についても、オンラインを含め2022年だけで65万人を動員。2023年2月には、総勢100名以上が出演する5ブランド合同ライブを東京ドームで開催予定となっている。さらに2023年は“アニメイヤー”と位置づけ、4月にはゲーム原作コミックのアニメ化作品「アイドルマスター シンデレラガールズ U149」、秋には10周年を迎える「アイドルマスター ミリオンライブ!」のアニメ展開を予定している。
さまざまな展開を広げているアイドルマスターにおいて、次の目線として見据えているのが、2025年のシリーズ20周年。今回の3.0 VISIONは、20周年という節目を迎え、それを超えてもなお、未来に向けて歩みを進めていく意気込みとさらなる躍進への誓いと語る。
PROJECT IM@Sとしても、2009年から2nd VISIONとしてメディアミックス展開とシリーズ作品の拡大を目指し、シリーズの一体感を高めてきたという。前述した2月の5ブランド合同東京ドームライブを、2nd VISIONの到達点であるとともに、3.0 VISIONに向けた第一歩と位置付けているという。ゲームを軸に据えたこれまでの多様な事業展開に加え、ゲーム領域で培った技術とノウハウを生かして、複合現実分野に挑戦。次世代のトレンドに向けて、強みであるアイドルプロデュース体験のさらなる進化を目指すという。
また、3.0 VISIONのアクションスローガンとして「CRE@TE POWER WITH YOU ! あなたらしさが、きっと誰かの力になる。」を掲げる。波多野氏は“アイドルマスターは肯定の物語”として、「私らしさ、あなたらしさ、アイドル1人1人のらしさがきっと誰かの元気になる。その思いとともに、3.0 VISIONは歩みを進めていく」と語る。
このスローガンとともに挑戦するのが複合現実領域で、主に展開を始めている「“MR”-MORE RE@LITY-プロジェクト」と、新たにリリースする「アイドルマスター ポータル」のローンチ。リアルとデジタルが掛け合わされ、相互に影響しあう複合現実の体験を推進していく。
「“MR”-MORE RE@LITY-プロジェクト」については、次のステップに向けた新企画として、2023年にKANDA SQUAREにて、アイドルマスター ミリオンライブ!の「765 MILLION ALLSTARS」のアイドルによる興行イベント「THE IDOLM@STER 765 MILLIONSTARS ”MR”フェスティバル(仮称)」の開催を発表。詳細は後日発表予定としている。
アイドルマスター ポータルは、これまで情報掲載サイトとして運営してきた「アイドルマスター OFFICIAL WEB」をリニューアルしたもの。Web3など時代のトレンドをとらえ、デジタルツインを見据えたプロデュース体験を実現する場という。リニューアルは段階的に行われ、初期段階ではサイトのUIデザインを一新したほか、バンダイナムコIDの導入により、ひとりひとりにあったパーソナライズ機能を提供する。
今後についても、エンタメコマースサイト「アソビストア」や配信プラットフォーム「アソビステージ」、MIRAIKEN studioとの連携強化、バンダイナムコIDを活用したサービス、アイドルたちと出会える場としてのコンテンツ開発や実装を進めていくとしている。
展開拡大に向けた取り組みについても発表された。まず社会貢献に向けた取り組みとして、アイドルマスター シャイニーカラーズと環境省がタイアップ。また“ALL BANDAI NAMCO”として、商品軸展開でのコラボや「アイドルマスター オフィシャルショップ」や各店舗の連動など、さまざま展開や取り組みを強化していくという。
そして大きな発表となったのが、ライブストリーミング発の新規アイドルプロジェクトであるPROJECT IM@S vα-liv。既報の通り、ライバー活動からアイドルを目指す候補生の物語で、「“MR”-MORE RE@LITY-プロジェクト」に特化した新コンテンツとなる。キャラクターデザインは、イラストレーターの森倉円氏が担当する。
波多野氏は「視聴者がプロデューサーとして、配信を通じてアイドルをプロデュースするという、新しいコンテンツ創出への挑戦」と語る。将来的には、キャラクターひとりひとりがアイドルデビューできるような、アイドルマスターの研修生制度のような立ち位置になれるようなことを目指すという。2023年春からの活動開始を予定しており、展開の詳細発表を行う配信番組も予定しているという。
カンファレンス後に行われた質疑応答では、波多野氏とマーケティング課マネージャーの狭間和歌子氏が登壇し、メディアからの質問に対応した。
――アイドルマスター ポータルの構想について、お話ください。
波多野氏:まず、2つやらなければいけないことがあります。1つはアイドルたちと出会えるような、アイドルがプロデュースできるような場にすること。もうひとつは、アイドルマスターはプロデューサーさん同士のコミュニケーションによって成長させていただいた作品なので、プロデューサーさん同士の交流が行える機能。この2つを考えています。それを通じて、必要になってくる機能が見えてくると思います。
――アイドルマスターシリーズにおける「vα-liv」の立ち位置を教えてください。
波多野氏:現状では、候補生をライバーとして、ストリーミングのプラットフォームで活動していくことのみを考えています。この先、新しいブランドのひとつとして展開するか、各ブランドに合流させるかは未定です。むしろここは、一緒にアイドルを育てていくプロデューサーさんたちと考えていきたいです。
――「vα-liv」については、アイドルマスターがVTuberに参入するという認識でいいのでしょうか。
波多野氏:VTuberの言葉の定義については、人によってさまざまなあるかと思います。「vα-liv」については、自社独自のプラットフォームである「ASOBISTAGE」をはじめ、YouTubeではチャンネル(アイドルマスターチャンネル)がありますし、TikTokやInstagramでも同様です。私たちはそれらをストリーミングの場所としてとらえて、ストリーミングで活躍するアイドルということで発表しました。
――アイドルマスターシリーズは、アイドルとキャストが存在している形となっていますが、「vα-liv」についてはアイドルのみになるのでしょうか。
波多野氏:今まさに検討中です。アイドルマスターが大事にしてきたものは、物語性と作品性の深さだと思ってます。それをストリーミングプラットフォームでどのように表現していくのかを、プロジェクト一同で議論を重ねています。
――楽曲のサブスク解禁について、SNS上でも反響が大きかったと思いますが、それについて率直な感想を教えてください。
波多野氏:本当にお待たせいたしましたと、その1点に尽きます。再生数からも、かなり好評となっていることがわかっています。本当にみなさんに待っていただいた、ある意味申し訳ない気持ちもあります。ここからは解禁したことのメリットいかしていきますし、そのプレゼンを改めてする必要があると感じています。
狭間氏:プロデューサーさんたちの反応を拝見して、アイドルマスターはコンテンツの軸となるものの1つが楽曲、ということの確信を強めることができました。それに対して嬉しい気持ちがあるとともに、満足いく形で配信できていない部分もあるということに反省をしています。
――現状、ブランドごとに楽曲解禁に関するスタンスは異なっていますが、これはこのままでしょうか。どこかのタイミングで足並みをそろえるお考えはありますか。
狭間氏:現状、サブスクの楽曲解禁に関しては、音楽レーベルさんと相談しながら、ブランドごとに対応を決めております。それについて、プロデューサーさんからいろんなコメントをいただいていることは、私たちも、レーベルのみなさまも把握しております。現段階では、今発表しているスタンスに従って進めていく予定です。そのなかで、プロデューサーさんたちの声を真摯に受け止めて、関係各位で相談をしていきながらスタンスを検討していきます。まだ満足いく形で配信できていないところがありますので、まずはきちんとみなさまにお届けすることができるよう尽力してまいります。
――そもそも楽曲のサブスク解禁はいつごろから検討されて、このタイミングになったのでしょうか。
狭間氏:ユーザーの声を受けてサブスク解禁していきたいという話は、1年以上前から出ていました。ですが、楽曲は複数の音楽レーベルに分かれているなどの事情もあり、いつどのような形で提供するのがいいのかという議論が長くなってしまった結果、このタイミングになりました。
――冒頭に時代の変化という言葉も出ていましたが、エンターテインメントやアイドルマスターに対して、ユーザーの期待や需要がどのように変化しているのか、それに対してどう応えていくのかをお話ください。
波多野氏:個人的な意見ではありますが、世の中が“好きだから応援する”という流れが強くなっているように感じます。アイドルマスターにおいて、一番の強みはアイドルとプロデューサーさんとの絆にあると思っています。その価値をプロジェクト一同で話し合いまして、技術面の補強や世の中の変化に対応していくという意味を込めて、3.0 VISIONを掲げるという発表をしました。
狭間氏:アイドルマスターは、プロデューサーさんとのコミュニケーションを通じて作ってきたコンテンツです。技術の進化で、よりリアルタイムでのインタラクティブ性が求められていると感じてますし、常にプロデューサーさんの声をスピーディーに拾って反映していくかが求められていると思います。
(C)窪岡俊之 THE IDOLM@STER TM&(C)Bandai Namco Entertainment Inc.
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