円安でもスマホを激安で買えた2022年、来年はどうなる?--0円廃止や通信障害など携帯業界1年振り返り - (page 2)

 そのネットワークに関してもう1つ注目を集めたのが、楽天モバイルへの4G向けプラチナバンドの再割り当てに関してだ。2022年10月1日に実施された電波法の改正を機として他の3社が持つプラチナバンドの一部の再割り当てを受けることを要求したが、3社もプラチナバンドが一部でも奪われるとなれば、ネットワークに与える影響は決して小さくない。

総務省「携帯電話用周波数の再割当てに係る円滑な移行に関するタスクフォース」第10回会合の楽天モバイル提出資料より。楽天モバイルはプラチナバンドを持つ3社から、5MHz×2幅ずつ割譲して再割り当てを受ける方針を示している
総務省「携帯電話用周波数の再割当てに係る円滑な移行に関するタスクフォース」第10回会合の楽天モバイル提出資料より。楽天モバイルはプラチナバンドを持つ3社から、5MHz×2幅ずつ割譲して再割り当てを受ける方針を示している

 それゆえ総務省の有識者会議で進められた議論では、10数回の議論を経てもなお楽天モバイルと3社との溝が埋まらない状況が続き、最終的に総務省が打ち出したのは楽天モバイルの意見を支持する内容であった。一方で3社からしてみれば、この結果は貴重なプラチナバンドを奪われるだけでなく、1000億円前後と見積もる費用を全額負担してデメリットにしかならない工事をしなければならなくなるなど、経営に与えるダメージも非常に大きい。

 そこで3社がいかにして、楽天モバイルの再割り当て申請を回避するかが注目されていたのだが、年末にNTTドコモが、700MHz帯の中で地上波デジタルテレビ放送などとの干渉を避けるために空けている周波数帯のうち、アップロードとダウンロードを合わせて3MHz×2幅を4G向けに割り当ててはどうか、と総務省で提案。楽天モバイルもこの案に支持を表明していることから、もし実現したとなればプラチナバンド再割り当てを当面回避できる可能性が出てきている。その行方は業界動向を大きく左右するだけに、2023年大きな関心を呼ぶことは間違いないだろう。

総務省「新世代モバイル通信システム委員会 技術検討作業班」第29回会合資料より。NTTドコモの提案を受け、干渉対策のため空けている700MHz帯の3MHz×2幅を、4G用に活用するための検討がなされることとなった
総務省「新世代モバイル通信システム委員会 技術検討作業班」第29回会合資料より。NTTドコモの提案を受け、干渉対策のため空けている700MHz帯の3MHz×2幅を、4G用に活用するための検討がなされることとなった

 他にも、KDDIがスぺースXの「Starlink」を通信インフラに活用するなど、衛星通信の活用に対しても関心が高まった1年だったといえるが、ここまで触れてきたものは全て4Gに関する内容であることに筆者は懸念を抱いている。なぜなら2022年、今後の主力となるはずの5Gに関しては積極的な取り組みがあまり見られず、大きな関心を呼ぶこともなかったからだ。

 そこにはやはり、冒頭に触れた料金引き下げの影響による携帯各社のコスト削減が、インフラ投資に大きく影響したことも少なからず影響しているようだ。「デジタル田園都市国家構想」掲げ5Gの普及を促進しているはずの政府が、料金引き下げ重視の姿勢を取ったことで実質的にそれを抑制する原因になっているというのは、まさに皮肉としか言いようがない。

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