ではスマートフォンはどうか。2022年は新機軸を打ち出すスマートフォンがあまり登場せず、前半頃まで続いた半導体不足の影響もあって使えるチップセットなどが限定されたこともあって、没個性化が進んでしまった1年だったといえる。
そこに記録的な円安が到来したことで、端末価格への注目が一層高まってしまったことは間違いない。そのことを象徴したのがアップル製品で、「iPhone」シリーズを2022年7月に突如大幅に値上げしたことに落胆の声を上げる人は少なくなかったようだ。
同様に円安の影響で値上げを余儀なくされるメーカーが増える中、あえて勝負に出たのがグーグルである。グーグルは自社製スマートフォン「Pixel」シリーズの新機種をあえて割安な価格で販売することにより、日本市場でのシェアを拡大する戦略を取り、それが非常に好評を得たことは間違いないだろう。
またそのスマートフォンの価格を巡って、この1年関心を呼んだのはいわゆる「1円スマホ」の存在である。これは通信契約とのセット販売による値引きが2019年の電気通信事業法改正で禁止されたことを受け、スマートフォン自体の価格を大幅に引き下げて販売し、それに加えて通信契約に紐づく法律上の値引き上限を提供することで「一括1円」などの激安販売を復活させたもの。
この手法自体は2021年の半ば頃から見られたものだが、コロナ禍と端末値引き規制で販売が大きく落ち込んだ販売の現場を活気づけた一方、端末だけを購入しても大幅値引きが受けられるため、組織的な転売ヤーによる買い占めが多発するなど深刻な問題も生み出している。そこで2022年8月に公正取引委員会が不当廉売の恐れがあるとして緊急調査に乗り出して以降、携帯各社も一律な規制を求めるようになり、総務省で現在規制に向けた議論が進められている最中だ。
それゆえ2023年のどこかのタイミングで、1円スマホの手法に何らかの規制がかけられ再びスマートフォンを安く購入できなくなる可能性が高い。ただ大幅値引きと規制のいたちごっこは10年以上続いているものであり、総務省が力を注ぐ通信料金の引き下げよりもスマートフォンの大幅値引きの方が、契約獲得に効果のある非常に強力な“武器”となっている実態と消費者の本質が変わらない限り、結局同じようなことが再び繰り返されるのではないかと筆者は見ている。
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