10月6〜7日の2日間にわたり、宮城県仙台市の青葉通で、期間限定の社会実験「AOBADORI MACHI to HATARAKU」が行われた。これは“働き方”にフォーカスした沿道利活用に関わる社会実験で、青葉通まちづくり協議会が主催したもの。青葉通沿いに誰でも利用できるワークスポットが複数設置されたほか、キッチンカーも出店した。どのような取り組みとなったのか、詳しく紹介しよう。
なお、青葉通ではこれに先駆けて、9月23日〜10月10日の期間に駅の目の前にある車道と歩道を交通規制し、そこにワークスペースを設けたり、イベントを実施したりする「MOVEMOVE」という社会実験も実施している。
開催場所となったのは、仙台駅前から大町西公園駅付近まで約1.5kmの範囲。この場所に拠点を構える企業の協力によって、4つの「オープンオフィス」が設けられていた。1カ所は事前申込制&会員限定となっていたが、ほか3カ所は誰でも自由に利用可能。それぞれ、空間の使い方や雰囲気などに特徴があった。
仙台駅からもっとも遠く、大町西公園駅の近くにあったのが「BLANKシェアラウンジ」。ビル2階にあり、窓が大きいので解放感のある空間になっていた。
ソファ席もあるので、ゆっくりくつろいだり会議したりするのにも最適。静かで落ち着いた雰囲気の中、読書などすれば、あっという間に時間が過ぎてしまいそうだ。取材時にも4人の方がソファスペースを利用し、何やら打ち合わせしているようだった。
続いて訪れたのが、南町通に面したNTT東日本仙台青葉通ビル。その1階にある「スマート イノベーション ギャラリー」が、オープンオフィスとして開放されていた。
通常はNTTグループの被災した施設や復興工事など、東日本大震災に関する展示等が行われているスペース。4人掛けのテーブルがいくつか配置され、目の前には大型モニターが設置されていた。芝生を思わせるような緑色のカーペットが敷かれており、明るく清潔感のある室内だ。
NTT東日本スマートイノベーションギャラリーと国分町通を挟んで向かいに位置するのが、オリバーが手がける「OLIVER WORK STYLE PLACE2.5」。ショールームに設けられたコワーキングスペースで、家具の製造販売や空間プロデュース等など手掛ける企業だけあり非常におしゃれだ。
オープンデスクだけでなく、仕事に集中できる半個室型やパーテーションを設置したデスクも。仕事内容や気分などに応じてデスクを移動することで、生産性が高まりそうだ。
なお、各オフィスでは入口で名前と所属の記載を求められるが、公務員から会社員、さらには大学生まで幅広い層が利用しているようだった。当日は不安定な天候で雨もぱらつく中だったが、いずれのオフィスも利用者が見られ、働き方の多様化などに伴うニーズの大きさを感じられる。
オープンオフィスのほか、青葉通沿いには誰でも利用できる2つのポップアップオフィスも設けられていた。いずれも多くの人々が行き交う通り沿いにあり、フラッと気軽に立ち寄れる場所である。
青葉通沿い、屋外に設けられたデスクスペース。スタンディングデスクも用意され、ちゃんと各席では電源も取れるようになっていた。営業途中で資料を確認したり、ちょっと空き時間で作業したりと、隙間時間の活用に良さそうだ。
青葉通と東二番町通が交差する地点にある広い地下道。以前は噴水があったが、現在はただ通りを渡るのに歩くのみの場所となっていた。しかし、実際に足を運んでみると静かで明るく、まるでカフェのような雰囲気。通行人も「なんだ?」と興味津々に見ており、足を止めてスタッフに聞く人もチラホラ見られた。
もともと設置されていた椅子も活用されており、いくつものデスクが設けられた空間。しかし全体のスペースが広いので、通行人の邪魔になることもない。仕事はもちろん、ちょっと休んだり読書したり。
筆者も少しPCを広げて作業させてもらったが、ゆったりした大きさの椅子に座り、かなりくつろぎつつ集中できた。ここなら雨が降っても関係なく利用できるし、まさに“沿道利活用”を表した空間ではないだろうか。
このほか、この社会実験ではキッチンカーが出店。ランチしたり、ちょっと小腹が空いたタイミングでお腹を満たしたり。オフィスの利用者はもちろん、道行く人々も気軽に利用できる。
百貨店の藤崎の前にあるキッチンカー横には、デスクもあるイベントスペースがあった。ちょうど訪れた際はスラックライン(細いベルトの上でバランスを取って歩いたり飛んだりするもの)が設けられ、興味を持った方々が楽しんでいる。ただ“働き方”だけでなく、青葉通での過ごし方そのものに変化を与えようという意図が感じ取れた。
複数のオフィス空間に、人々にリフレッシュした気持ちや楽しみを与えてくれる、工夫いっぱいの社会実験。ちなみに、青葉通沿いには「DATEBIKEポート」というレンタサイクルが点在しており、好きな場所で乗って返却することができる。これを利用すれば、さらに青葉通りでの動きに自由度が増しそうだ。
ワーケーションというと観光地での取り組みをイメージしやすいが、このAOBADORI MACHI to HATARAKUは仙台駅前の街全体を巻き込んだ取り組み。もちろん付近には観光スポットもあるが、その一方でビジネス街でもある。バケーションを中心にしながら働くのも、仕事を中心としながらバケーション要素を加えるのも、どちらの意味でのワーケーションも実現できる可能性を秘めているのではないだろうか。
社会実験は期間限定だが、以後もアンケート結果などを踏まえて継続を考えているとのこと。何かしら形が変わる可能性はあるが、次の取り組みにも期待が膨らむ。なお、次回はこの社会実験がなぜ始まったのか、どんな狙いがあるのかなど、主催者である青葉通まちづくり協議会の方に聞いた話を紹介する。
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