スマートフォンが「ドクターイエロー」に--JR西日本のスマホを活用した振動解析アプリ

 JR西日本は、10月18日~21日に千葉県の幕張メッセで開催された「CEATEC 2022」に初出展した。同社は会場にて、データやAIを活用したソリューションを多数紹介。その中で今回取り上げるのが、「スマートフォンを活用した振動解析アプリ」だ。

JR西日本が出品した「スマートフォンを活用した振動解析アプリ」
JR西日本が出品した「スマートフォンを活用した振動解析アプリ」

 このシステムは、市販のスマートフォンを活用し、列車の動揺をX軸、Y軸、Z軸の3方向で判定。加えて、スマートフォンのカメラで撮影した前方映像や、取得したGPSデータと組み合わせ、AIで解析することで、線路の状態監視を可能とする。

 2022年10月現在は、同社自身のほか、数社の鉄道事業者で実証実験を実施している。将来的には、振動データの将来予測や、AI画像解析による設備状態の自動判定機能も追加する予定だという。

 鉄道業界での検測といえば、東海道・山陽新幹線を走る「ドクターイエロー」が思い浮かぶだろう。時速270キロで走行しながら、線路や電気、信号、通信設備を走りながら監視する車両だ。JR西日本ではこの新幹線のほかにも、「ドクターWEST」の愛称を持つ在来線用の検測車両を保有している。

JR西日本が保有する検測専用車両「ドクターWEST」
JR西日本が保有する検測専用車両「ドクターWEST」

 では、なぜ今回のようなシステムを開発するのか。理由は導入費用が挙げられる。

 ドクターイエローやドクターWESTのような車両は、高機能な一方で導入コストがかさむ。JR各社では導入が可能だが、中小の鉄道事業者での導入は困難だ。また、近年では山手線のような一般の営業列車に検測装置を搭載する例も増加しているが、こちらも専用車両ほどではないとはいえ、導入コストは決して低くはない。その結果、高機能なシステムを導入できない事業者では、作業員が列車に添乗して、あるいは徒歩で巡回して、目視や体感で状態を把握するという、旧来の体制に頼らざるを得ないのだという。

 そのような事業者に向けて、JR西日本が提案しているのがこのシステムだ。検測専用車両とは目的が異なるために定量的な比較はできないというが、日常的な保守整備において十分なデータの取得が可能だとしている。

 JR西日本はCEATEC 2022において、今回の振動解析アプリのほか、AIによるカメラ映像解析・検知システムや、AIによる機械故障予測システムといったソリューションを出展。JR西日本グループが開発した技術を外販し、営業に繋げていく考えだ。

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