前回の第5回「二極化するコロナネイティブ就活生。企業の争奪戦が始まった「優秀層」獲得の秘訣とは?」に引き続き、コロナ禍で大きく変わった採用スケジュールを踏まえ、秋冬の就活戦線で、学生を確実に採用する方法について解説します。
前回の説明の通り、2024年卒の学生たちには、例年以上に早く就活に取り組み始めた早期層と、秋以降に就活を始める後発層に分かれる、二極化が見られます。
そして近年と同じ傾向ではありますが、2024年卒でも積極的で優秀な学生(偏差値上位校の学生)ほど早くから就職活動を始めています。ただ、特に24卒の特徴としては、この早期層よりも後発層への人数の偏りが例年より非常に大きくなっていること、その結果として例年であれば早期に動き出していたような優秀な学生も後発層には多く含まれる、言わば玉石混交の状態です。
結果、この秋冬の就活戦線においては、採用スケジュールに大きな変化が表れます。企業は、早くから動き出して、就活習熟度が高い早期層と秋からやっと動き始める後発層という2つのタイプの学生を同時に対応することになり、それぞれに向けたアプローチ方法、コンテンツを用意しなければならないのです。従来の「一本道の採用スケジュール」で、今までのようなコンテンツを提供しても採用に結びつけるのは難しいと考えて下さい。
以下は、2023年卒を対象にした「就活フェーズごとの活動時期」についてのデータです。ここからも二極化を読み取ることができます。
例えば「自己分析の開始」は2年生の「12月」からどんどん上がって行き、3年生の「6~7月」でピークを迎え、そこから下がるのですが、「10~12月」に再び上がります。これは早期層に遅れて活動を始めた後発層の学生がこの時期「10?12月」にやっと自己分析を始めるという「ふたこぶ現象」が存在するということです。
また、この表を縦に見ると、「10~12月」に就活の情報収集や自己分析を開始する学生がいる一方で、「業界を絞り始める」学生が30%近くいます。このようにスケジュールが大きく異なる早期層と後発層には、異なる内容のコンテンツで対応する必要があります。
以下は「各月の就活イベントに求めるもの」について2023年卒から収集したデータです。
「10~12月」には、「自己分析」を支援するもの、「魅力的なインターン」、「魅力的な業界や企業」を発見できるコンテンツの数字が高くなっています。これは、後発層の学生のニーズです。一方で、「選考対策」も34%と数字が高く、これは早期層の学生が期待しているコンテンツだと思われます。
二つの層が同時に動くというこの現象は、2024年卒ではさらに顕著になると予想され、この秋冬は「すでに内定を獲得した学生」と「就職活動に目覚めたばかりの学生」に如実に分かれることになるでしょう。
それでは、具体的に、それぞれの層に向けてどのようなコンテンツを準備すればいいのでしょうか?
2023年卒を対象にした「実施されたコンテンツ 志望度に寄与したコンテンツ」についてのデータを見て下さい。
右側の「志望度に寄与したコンテンツ」で上位に来るのは、「面談」「座談会」「懇親会」など、社内の様子を把握できて、社員と直接触れ合えるコンテンツです。中でも、トップの「社員/リクルーター面談」は70%を超えています。
繰り返しますが、2024年卒はコロナ禍によって大学の先輩やクラスメイトと触れ合う機会が持てなかった断絶の世代です。就活中に社員やリクルーターとやり取りする中で信頼関係を築き、肌の温度を感じられる距離で企業の魅力を訴求すれば、学生の心にも印象深く残るでしょう。
また、左側「実施されたコンテンツ」では下位にくる「内定者インターン」、「社員総会などの社内イベント」も、右側データを見れば半分近い学生が、志望度に寄与したと回答しています。「社員総会」などはもともと行われているイベントですから、実施に対する採用チームの工数もそれほどかかりません。
採用チームが目の回るほど忙しいことは、経験者である私にもよくわかります。こういった既存のコンテンツをうまく活用しながら、様々な角度・頻度で学生との接点を演出し、惹きつけ続けていけると良いでしょう。
もう一つ、「非志望企業でも選考参加したくなる要素」という面白いデータがあります。
2024年卒の早期層の傾向として、サマーの段階ですでに業界や企業を絞っている学生たちがとても多いです。秋冬に通常通りインターンやイベントを開催しても、すでに他の業界や企業に的を絞った学生が振り向いてくれる可能性は低いでしょう。ただし、前回説明しましたが、なかには絞った「つもり」になっているだけの学生たちもいるので、閃きを与えるようなテーマのイベントを企画すれば、興味を引くことができます。
このデータによると「内定を出す時期が早い」、「フィードバックが充実している」という実利性の高いものが人気です。このような内定に直結する内容のイベントを秋冬に実施すれば、サマーにあまり学生を集めることができなかった企業は、ボリュームゾーンである後発層と同時に早期層の学生も振り向かせることができる可能性があります。
それから「出会った社員が魅力的だった」、「社員の人柄、雰囲気が掴めそう」は、参加したくなる要素として30%近い数字となっています。就職活動を通して自分の将来をかなり強く意識するようになった学生たちに対し、社員が「一緒に成長していきましょう」という寄り添いの姿勢を見せれば、選考参加への意欲を掻き立てることができます。
結果として上記データの右側「参加後の志望度の変化」を見ると、この二項目とも、志望度が劇的に向上していることがわかります。また、「社員が自分のことを認知し評価された」ことも、参加したくなる要素としては20%以下ですが、参加後の志望度は90%近くが向上したと答えています。
まずは「内定を出す時期が早い」などの具体的な果実をアピールし、参加した学生に対して、社員を動員してハートを掴む方法が、効果的でしょう。
また、別のデータでは「就活中に出会った企業の商品やサービスを知る過程で、企業イメージがよりポジティブに変わった」という回答が9割近くに上るという結果も出ています。コロナネイティブ世代は、就活が企業ブランドと大きく結びついている世代とも言われるので、ファンづくりの観点から採用プロセスを見直したり、学生に対して適切に自社商品やサービスを訴求することは必須です。
実は、同じデータで「ネガティブに変わった」という回答も7割近くに上っています。Z世代は社会課題への意識が高く、その企業が社会課題に対してどういうスタンスで活動しているか?商品開発やサービスの展開がどのように課題解決に繋がっているか?という点に強い関心を持っています。そのため、企業が商品の機能的な説明、売上げや利益などビジネス色の強い話ばかりをしていると、抵抗感を持ってしまうようです。下手をすると就活によってブランドイメージそのものもダウンしかねないということを企業側は念頭に置くべきでしょう。
いずれにしても、採用側の企業としては、この秋冬の戦線は大いに注力する価値があります。
前回解説したように、2023年卒の学生は3年のサマーまでに出会った企業が第一志望になったという回答が約45%。ということは、残りの半数以上の学生は、秋以降に第一志望企業に出会ったことになります。しかも、なかでも「10~12月」は、一つの期間の数字としては最も高い割合(17.8%)の学生が、第一志望の企業と出会った時期と答えています。
この秋から就活を始める後発層だけではなく、早期層にとっても、就活の軸が定まり、機運が高まるのがこの秋冬のタイミングなので、企業は確実に学生を採用するためにも、このチャンスを活かして下さい。
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