ディー・エヌ・エーの子会社であるDeSCヘルスケアは8月22日、ヘルスケアエンターテインメントアプリ「kencom」で得られたビッグデータをもとに、健康診断などで行う検査の結果数値と歩数の関連性についての研究を実施し、その結果を発表した。
同社によると、運動が健康に寄与することについては、多くのエビデンスが蓄積されているという。たとえば、「1日の歩数は身体活動の総量の代替指標として扱うことができ、1日あたりの歩数目標は1万歩が良いとする先行研究」や、「1万歩未満でも歩数が1千歩増えるごとに死亡率の低下と関連することを示した先行研究」が存在する。
しかし、ほとんどの研究では、短期間の歩数しか評価されていないという。
同社は、2021年にkencomの登録利用が平均歩数の増加と関連することを示唆する共同研究論文を発表。今回の研究はそれに続き、より長期間の歩数データを用い、性別による違いも考慮した上で、歩数と検査値の変化量との関係を検証。心血管疾患リスク因子と長期間の歩数データの関連性を検討することが目的となる。
なお、保険者より許諾を得て提供されたビッグデータを用いており、kencom利用者の毎日の「歩数」「健康診断データ」「保険請求データ」を統合して解析している。
2015年4月〜2020年11月の間に受診した健康診断を「ベースライン健診」。その後24〜35カ月あけて受診した健康診断を「フォローアップ健診」とし、これらの間での健診検査値の変化量を算出。心血管疾患リスク因子として、体重や脂質などの健診検査値を利用している。
加えて、ベースライン健診前1年間の平均歩数の影響を考慮に入れた上で、ベースライン健診とフォローアップ健診の間の平均歩数が健診検査値の変化量とどのように関連するかを評価した。
なお、男女で関連が変化する可能性を考慮し、歩数と性別の交互作用を解析している。解析は、1万5708人の利用者が対象。参加者の平均年齢は、44.1プラスマイナス9.5歳で、おおむね健康であったという。
同研究結果では、「体重」「腹囲」「中性脂肪」の変化量は、1日あたり平均歩数と負の関連を持っており、「HDL(善玉)コレステロール」の変化量は、1日あたり平均歩数と正の関連を持っていたことが判明した。
ただし、男女で関連の仕方は異なっていたという。たとえば、女性では平均5000歩以上でないと体重変化量の傾きがマイナスにならない。
今回の結果は、長期的な身体活動が心血管疾患の健康にとって有益であることを示唆したものになる。また、長期的な心血管疾患リスクのモニタリングにスマートフォンに記録された歩数が有用であることを示唆している。
同社によると、大規模な集団を活用した同種の研究は過去にほとんど報告がなく、今回の研究成果は「Journal of the American Heart Association」誌(Impact Factor = 5.5)に論文採択されているという。
なお、同研究は、DeSCヘルスケア 森正樹博士、三宅邦明医師、ブリガム・アンド・ウィメンズ病院 予防医学部門 濱谷陸太医師、ハーバード大学医学大学院 I-Min Lee医師・博士との共同研究となっている。
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