電機大手決算出そろう--上海ロックダウン、円安などの影響大きく、部品不足は少しずつ解消へ

 国内電機大手の2022年度第1四半期(2022年4~6月)の決算は、半導体不足や部品不足の影響は徐々に回復傾向にはあるものの、依然として継続しているほか、原材料価格や物流価格の高騰、急激な円安、中国・上海のロックダウン、世界的なインフレの進行、そして長引くコロナの影響など、外的要因に大きく左右された内容となった。

 各社の決算内容を見ても、それらの要因が業績に与える影響が大きいことがわかる。

 日立製作所によると、第1四半期における半導体不足の影響は、売上高でマイナス400億円規模に達したほか、資材費の高騰では営業利益に対してマイナス350億円の影響があったという。さらに、中国・上海のロックダウンの影響では、売上高で約600億円、営業利益では約200億円の影響があったとする。

 パナソニックでも、第1四半期における原材料および物流費高騰の影響は営業利益でマイナス560億円に達しているとコメント。東芝は、半導体不足で営業利益に対してマイナス30億円、素材価格や輸送費の高騰でマイナス94億円の影響があり、これによって営業利益は前年割れの実績。シャープでは中国のロックダウンの影響で営業利益においてマイナス94億円、円安の影響はマイナス97億円になったという。

 だが、部品不足の影響は改善しつつある。NECでは「部材不足の状況は継続し、年間では一定のリスクは想定しなくてはならないものの、当初予測の範囲内で影響をマネージできたと考えている」とコメント。部材不足の影響も改善すると見ており、第1四半期には、調整後営業利益で、マイナス10億円の影響に留めた。富士通では第1四半期のマイナス影響は想定よりも大きかったとしながらも、「不足している対象部品の範囲が絞り込まれ、少しずつコントロールができてきた印象がある。前年度下期は、部品ベンダーから納入予定のものが入ってこないという状況が幅広い部材で発生していたが、足元では、不意に部品が無くなるということは起きず、どの部品が足りないか、どの程度足りないのかが、あらかじめわかっている状況にある」とする。部材の逼迫状況については、年内は継続するものの、緩やかに緩和していくという見方が各社に共通した認識といえる。

 このようにさまざまな外的要因が、業績をプラスにもマイナスにも左右する結果となったのが、第1四半期の結果だったといえよう。

想定外の上海ロックダウンの影響が色濃く

 だが、家電分野においては、3月下旬から5月末までに発生した想定外の上海ロックダウンが業績に大きなマイナス影響を及ぼしている。

 パナソニックでは、上海のロックダウンの影響で、国内家電で供給課題が発生。とくに電子レンジなどの販売が減少。「ロックダウンの影響は大きく、重点事業の海外における増販益や価格改定などではカバーできずに減益になった」としたほか、シャープでもドラム洗濯乾燥機やエアコンが上海ロックダウンの影響により、需要に応えるだけの商品が集まらなかったという。

 日立の家電事業を担当する日立グローバルライフソリューションズでは、中国・上海で洗濯機を制御する基板を生産したが、これが停止。日本での洗濯機の組み立てが行えない状況に陥ったという。「需要が強くても製品を供給できない状況が発生した」(日立製作所)という。その結果、家電の事業計画は、期初目標から下振れしており、通期見通しも前期割れの計画となっている。

 三菱電機では、空調家電事業において、上海ロックダウンや電子部品の需給逼迫の影響などにより、減少減益。ソニーでも、上海でのロックダウンの影響や市況の悪化により、テレビの販売台数が減少。前年同期の220万台から、130万台に大きく減少している。

 しかし、6月以降のロックダウンの解除により、その影響は落ち着きはじめている。
「上海ロックダウンの影響を受けた洗濯機や冷蔵庫には潜在的な強い需要がある。掃除機をあわせた3つの品目に生産を集中し、第1四半期で取れなかった需要を、下期で取っていくことになる」(日立製作所)、「ロックダウンが解除された2022年6月には、業績が大きく改善しており、2022年5月をボトムに回復に転じたと考えている」(パナソニック)という声があがる。ソニーも「上海でのロックダウンによる製造事業所の稼働低下や部品供給制約は、想定よりも早く改善している」と語る。

 また、ダイキン工業では、「空調事業は、上海ロックダウンにより、中国や日本を中心に、生産、供給面で影響を受けたが、戦略的売価施策や販売力強化、コストダウンなどの重点8テーマの徹底した実行により増収になった」とし、「今後、ロックダウンの再開や、断続的な発生に備えて調達、生産の複線化に取り組む」としている。

 一方で、円安影響も見逃せない。円安がプラス影響に働くソニーでは、その影響を大きく受けて、全社売上高および営業利益は、第1四半期として過去最高を更新。三菱電機も円安の影響を受けて、売上高は第1四半期としては過去最高を更新した。電機大手では海外比率が高い企業においてプラス影響が大きい。

中国生産に依存した体質からの脱却

 だが、全社的にプラスに働いている企業においても、家電事業についてはマイナス要素の方が大きい。

 シャープは、「白物家電では、海外で生産して、日本に持ってきている商品が多いため、円安はネガティブに働く。材料価格の高騰もあり、上期からは新製品の発売にあわせて、順次値上げをしており、下期には空気清浄機、エアコンなどの新製品の発売にあわせて売価に反映することになる」と語る。

 パナソニックでも、円安や材料価格高騰の影響を受けて、8月1日から、国内向け家電製品の出荷価格を順次改定している。対象商品は、冷蔵庫や洗濯機、掃除機、食洗機、電子レンジ、炊飯器、オーブントースターなど多岐に渡っている。

 また、日立グローバルライフソリューションズでは、トルコのアーチェリックと海外白物家電事業を合弁会社化しており、世界的な販売網を活用。「輸出にも力を入れることで、円安影響をリカバリーしていく」とする。バルミューダでも、「中国、香港、台湾に加えて、北米でも事業を強化。さらに、今後は東南アジアにもチャンスがあると考え、検討を開始している。輸入企業から、輸出入企業への転換を進めたい」と、円安の影響を受けて、事業構造の改革に乗り出す姿勢を示している。

 だが、こうした上海ロックダウンの影響や円安の影響は、国内生産への回帰には直結しない。

 パナソニックでは、中国で生産していたスティック掃除機を、滋賀県の八日市工場での生産に移行させることを発表したほか、冷蔵庫や洗濯機、美容家電の国内生産体制の強化に乗り出す姿勢を示したが、むしろ中心となるのは、日本向け製品の生産機能を中国からアジアに分散し、中国生産に依存した体質からの脱却を目指すことだ。

 シャープも「日本に工場を回帰することは考えていない」とし、その理由として、「基幹部品のほとんどが海外で生産されており、海外の工場でいかに原価を下げていくかが重要である」と語ったほか、「中国リスクには、2拠点生産体制によって対応する。エアコンや冷蔵庫はインドネシアとタイで生産し、空気清浄機もベトナムとタイで生産する」と語る。

 すべての製品が海外生産となっているバルミューダでも、「いまの円安を考えても、日本での生産はコストが高く、売価設定と原価のバランスを考えても、国内生産は、小型白物家電を作るのには向いていない。国内生産は考えていない」とする。

 ゼロコロナ対策を推進している中国では、今後も、いつ、どんな規模でロックダウンが行われるかは未知数だ。中国リスクの回避や円安対応は、国内生産への回帰ではなく、アジア全体における生産体制の分散という形が着地点となりそうだ。

 数々の外的要因を、いかに乗り切るかが、より鮮明な課題となって示されたのが2022年度第1四半期決算だったといえそうだ。

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