パナソニックホールディングスは、2023年3月期第1四半期(2022年4~6月)連結業績を発表した。売上高は前年同期比10.1%増の1兆9738億円、営業利益は39.0%減の637億円、調整後営業利益は45.0%減の657億円、税引前利益は32.2%減の735億円、当期純利益は36.0%減の489億円となった。
パナソニックホールディングス 取締役副社長執行役員グループCFOの梅田博和氏は、「売上高は、上海ロックダウンや、半導体、部材不足による生産および販売への影響はあるものの、車載電池などの販売増に加えて、Blue Yonderの連結化や為替効果によって増収となった」と、第1四半期の業績を総括した。
第1四半期における原材料および物流費高騰のマイナス影響は560億円。価格改定や合理化などによるプラス影響は273億円となっている。「そのうち原材料価格の高騰で約450億円の影響があり、価格改定で230億円を戻した。くらし事業における価格改定の反映はまだ少なく、最も進んでいるのがインダストリーとエナジーとなる。価格改定による良化は第4四半期にかけて、徐々に進展していくことになる」と述べた。
パナソニックグループでは、材料費の高騰で年間1500億円のマイナス影響を見込んでいるという。
梅田グループCFOによると、1トンあたり1万ドルを超えていた銅の価格は8000ドル近くに落ち着きはじめ、アルミニウムなども一時よりも価格高騰が沈静化しているというが、「沈静化した数字を織り込むのではなく、影響が大きい家電商品などへの波及をもとに、マイナス影響と価格改定の影響を公表値にしている」などと述べた。
また、為替については、インダストリーやエナジーではプラス影響があったものの、くらし事業ではマイナス影響があり、グループ合計ではゼロの水準だったという。
「第1四半期は、半導体不足や部材不足、上海ロックダウン、原材料や物流費の高騰が、各セグメントで幅広く影響した。第2四半期以降は、ロックダウンの解除により、その影響は改善に向かうが、半導体や部材不足、原材料および物流費の高騰については継続すると見込んでいる。代替品の調達や、価格改定などの対策を進めることで、影響の軽減を図っていく」と述べた。
セグメント別では、くらし事業の売上高は前年同期比7%増の8365億円、営業利益が15%減の383億円となった。「上海のロックダウンなどによる供給課題で国内家電が販売減となるなか、重点事業と位置づけた空質空調設備では欧州でのA2Wなどが好調であり、インド・中東アフリカを中心とした海外電材での販売増でカバー。売上高は為替影響を除くと前年並みになった」とする一方、「為替や原材料価格の高騰、物流費の高騰などの外部環境悪化の影響は、重点事業の海外における増販益や、国内外での価格改定などでカバーしたが、ロックダウンの影響は大きく、減益になった」という。
なお、くらし事業では、2022年8月1日以降に、国内向け家電製品の出荷価格を順次改定することを発表している。対象商品は、冷蔵庫や洗濯機、掃除機、食洗機、電子レンジ、炊飯器、オーブントースターなど幅広く、価格改定率は約3~23%増となっている。
「誠に申し訳ないが、家電商品の価格を改定させてもらった。この成果が業績に効いてくるのは第2四半期以降になる」としたほか、「発表している値上げ価格は、現時点での最善のものであり、この価格は再度変更するということは考えていない。価格改定に関する新たな施策は現時点ではない。ただし、よほど大きな変化がでた場合には、まずは企業努力をし、そのときの情勢次第で判断をすることになる」とも述べた。
くらし事業のうち、くらしアプライアンス社の売上高は前年同期比6%増の2055億円、調整後営業利益は53億円減の129億円、営業利益が30億円減の154億円。「海外は、アジアの冷蔵庫や洗濯機を中心に好調に推移して増収になったが、日本では、上海ロックダウンの影響などにより、電子レンジなどの販売が減少した。外部環境の悪化に対して、価格改定や合理化などの対策を進めたが、減販損もあり、減益になった」という。
空質空調社の売上高は前年同期比7%増の2210億円、調整後営業利益は44億円減の134億円、営業利益が30億円減の135億円。「欧州を中心に堅調に推移して増収となったが、為替のマイナス影響が大きく影響して減益になった」とした。
コールドチェーンソリューションズ社の売上高は前年同期比24%増の906億円、調整後営業利益は3億円増の15億円、営業利益が4億円増の15億円。日本と米国のショーケースを中心に堅調に推移して増収増益を達成した。
エレクトリックワークス社の売上高は前年同期比6%増の2169億円、調整後営業利益は18億円増の72億円、営業利益が16億円増の67億円となった。インドなどで、海外の電材商品が堅調に推移し、増収増益になった。
なお、中国・北東アジア社の売上高は前年同期比8%増の2440億円、調整後営業利益は1億円増の122億円、営業利益が21億円増の129億円となった。
一方、オートモーティブの売上高は前年同期比4%増の2696億円、営業利益が前年同期の22億円から、マイナス106億円の赤字となった。自動車生産減少の影響があり、売上高が減収になったのに加え、半導体などの部材高騰に対して、コストダウンや価格改定による影響軽減を進めたものの、減販損や減価償却費などの固定費の増加などにより、減益になった。
コネクトの売上高は前年同期比18%増の2448億円、営業利益は前年度の1億円の黒字から、マイナス95億円の赤字に転落。「オリンピック需要の反動減による現場ソリューション事業の販売減や、ノートPCなどでのロックダウンの影響があったものの、航空市場の回復によるアビオニクスの増販や、Blue Yonderの連結化によって増収になった」という。また、「Blue Yonder自体の調整後営業利益は黒字だったが、買収に伴う無形資産償却費の計上などにより、合計ではマイナス70億円の連結化影響が出ている」とした。
Blue Yonderの2022年度第1四半期の売上高は3億900万ドル、SaaS ARRは、5億1400万ドル。リカーリング率は68.3%となっている。
インダストリーの売上高は前年同期比4%増の2965億円、営業利益は前年並みの265億円。「情報通信インフラや車載向けのコンデンサ、産業用およびEV用のリレーが増販となったが、半導体不足やロックダウンの影響、半導体事業および液晶事業の終息により、減収になったのに加えて、半導体不足、ロックダウン、原材料高騰のマイナス影響が大きく、増販効果があった情報通信インフラ用コンデンサや円安効果ではカバーできずに、わずかに減益になった」とした。
エナジーの売上高は前年同期比21%増の2278億円、営業利益が13%減の163億円となった。旺盛なEV需要を背景に、車載電池の販売が拡大して増収になったが、原材料の高騰、物流費の増加に加え、開発費や増産に伴う固定費の増加によって減益になった。
その他分野の売上高は前年同期比6%増の2843億円、営業利益が2%減の150億円。エンターテインメント&コミュニケーションは半導体を中心とした部品調達課題の影響により減収となったが、ハウジングは、内装ドアや床材などの建材、雨どいや外壁材、エコキュートがけん引して増収になった。
なお、2022年度(2022年4月~2023年3月)連結業績見通しは据え置き、売上高は前年比6.9%増の7兆9000億円、営業利益は0.7%増の3600億円、調整後営業利益は6.2%増の3800億円、税引前利益は0.1%減の3600億円、当期純利益は1.8%増の2600億円とした。
梅田グループCFOは、「半導体不足や原材料高騰の影響が大きくなった2021年度第2四半期以降、収益性が低下している。直近では、そこにロックダウンの影響が加わり、経営環境としては苦しい状況となっている。だが、ロックダウンが解除された2022年6月には、業績が大きく改善しており、長らく低調に推移してきた業績は、2022年5月をボトムに回復に転じたものと考えている」と発言。「2022年4月からスタートした事業会社制において、各事業会社が、競争力強化の取り組みを加速させている。オペレーション力の徹底強化や、エナジーおよび空質空調事業などの増販に加えて、原材料高騰に対しては、価格改定の取り組みをさらに進めることによって、第2四半期以降の業績を回復させたい」とした。
パナソニックグループでは、くらし事業において、同社が販売店の在庫リスクの責任を持つ一方、価格を指定する新たな販売スキームをスタートしており、現在15%を占めているこのスキームの比率を、2022年度には2割に引き上げる計画を打ち出している。
余った在庫はパナソニックに返品できること、販売店には在庫リスクがないこと、消費者はどの店舗でも同一価格で購入できる仕組みとなり、「消費者、流通、メーカーの関係については、三方良しを実現できる」と説明する。
梅田CFOは、「実売価格を戻すために、1年に1回、新商品を出すという商品ライフサイクルよりも、お客様への本質的な提供価値を高めるほうにリソースを投下し、よい循環に持っていくことができるスキームだと考えている。この新スキームに適用していける商品を順次増やしていくことになる」とし、「真に機能すれば、三方良しが実現できる。さまざまな意見があることは理解している。丁寧なコミュニケーションが必要である。どこでも同じ価格で購入できるということで、店舗がショールーム化してしまうのではないか、価格交渉ができなかったり、値引きをしている商品に流れてしまうのではないかといった意見もある。新スキームは、適正価格で安定させて、お客様にお役立ちができるところにリソースを投入していくというサイクルを回すことで、三方良しが実現できる」と述べた。
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