ソニーグループは、2022年度第1四半期(2022年4月~6月)の連結業績を発表した。売上高および金融ビジネス収入は、前年同期比2.4%増の2兆3114億円、営業利益は同9.6%増の3069億円、調整後営業利益は同5.4%増の3070億円、税引前利益が同2.9%増の2913億円、当期純利益が同3.0%増の2181億円となった。
ソニーグループ 副社長兼CFOの十時裕樹氏は、「売上高および営業利益は、第1四半期として過去最高を更新した」と述べた。
一方、2022年度通期業績見通しは、売上高および金融ビジネス収入は、5月公表値に比べて1000億円増とし、前年比15.9%増の11兆5000億円。営業利益は500億円減とし、同7.7%減の1兆1100億円、税引前利益が600億円減の同4.3%減の1兆700億円、当期純利益が300億円減の同9.3%減の8000億円とした。
「第1四半期の営業利益は、見通しを上回る水準となったものの、第2四半期以降の事業環境には不透明感が残る。市場環境が大きく変化し、インフレの進行、各国の金融政策により、世界経済のさらなる減速が懸念される。対処すべきリスクや課題は広範囲で、多岐に渡る。環境変化の影響の見極めと迅速な対応を事業運営の最優先課題として取り組んでおり、通期業績見通しにも、これらの影響を合理的に想定できる範囲で反映している。引き続き、最大級の警戒感を持って事業を運営していく」とし、「セグメント別では、ゲーム市場全体の状況を見直したゲーム&ネットワークサービス(G&NS)において営業利益の通期見通しを修正したが、残りの5分野は据え置いている」とした。
2022年度第1四半期のセグメント別業績は、ゲーム&ネットワークサービス(G&NS)分野の売上高は前年同期比2%減の6041億円、営業利益は37%減の528億円となった。また、通期見通しは、売上高で前回公表値に比べて400億円減の3兆6200億円、営業利益は500億円減の2550億円とした。
「第1四半期は、為替による増収効果があったものの、アドオンコンテンツを含むソフトウェアの販売減があった。想定に対して約25%のマイナスとなっている。ゲームプレイ時間が大幅に減少していること、前年同期に比べて大型タイトルの発売が少なかったことが影響している。また、ソフトウェア開発費の増加もあった。通期見通しの下方修正はソフトウェアの販売減やBungieの買収が想定以上に早く進み、買収関連費用が130億円増加し、約570億円になることが要因」と説明した。
7月15日にBungieの買収を完了。6月27日にはHaven Entertainment Studiosの買収を完了しており、「コンテンツ開発力強化に加えて、買収したスタジオとのシナジーにより、新規IPの創出やライブゲームサービス、マルチプラットフォームへの展開を加速し、自社制作ソフトウェアの強化を図る」と述べた。
第1四半期におけるプレイステーションユーザーの総ゲームプレイ時間は前年同期比15%減となっている。「6月単月では、5月から3%改善して持ち直しているが、想定していたエンゲージメント水準を大幅に下回っている。主な要因は、主要市場において、コロナ感染が縮小し、外出機会が増加。ゲーム市場全体の成長が減速していることにある」とし、「自社制作ソフトウェアを含めた大型タイトルのリリースが予定されている下期に向けて、『PlayStation 5』の供給台数を増加させたり、『PlayStation Plus』の新サービスの訴求などに注力する」と述べた。7月は回復トレンドにあることも示し、「中長期の成長やトレンドについては、懸念はない」と述べた。
PlayStation 5の通期販売台数は1800万台を計画。2021年度第1四半期実績では240万台を出荷している。「第1四半期の販売台数は部品供給の問題や物流遅延などにより、想定よりも若干少ない」としながらも、「販売台数見通しは、現時点では1800万台に据え置いている。だが、上海でのロックダウンの影響からの回復や、部材供給状況の大幅な改善がみられることから、年末商戦に向けて供給スケジュールの前倒しを進めていく」と語り、「PlayStation 5は供給が十分にできていない状況が続いている。需要に応えていくことが大事である。下期は販売台数が本格的に増加する」などとした。
なお、PlayStation 5の値上げの可能性については、「現時点で価格について伝えられるものはない」として明言を避けた。
音楽分野の売上高は前年同期比21%増の3081億円、営業利益は10%増の610億円。通期見通しは、前回公表値から400億円増の1兆2800億円、営業利益は据え置き2300億円とした。「第1四半期は、為替のプラス影響や、ストリーミングの売上げ増が貢献した。映像メディアプラットフォームの利益貢献は1割強になっている」と述べた。
ストリーミング売上げは、音楽制作で27%増、音楽出版で42%増と伸長。主な音楽タイトルとして、Harry Stylesの「Harry's House」が世界的ヒットとなったほか、Spotify週次楽曲ランキング上位100曲のうち平均47曲がランクイン。「前年度の平均36曲から大きく伸ばしている。引き続き、ヒットを継続して創出する力を強化することに加えて、The Orchardなどを通じたサービスの拡充や、新興市場での事業拡大、ソーシャルやゲームなどの新たな領域でのビジネスパートナーとの連携など、収益基盤の拡大や多様化に向けた取り組みを進める」と語った。
映画分野の売上高は前年同期比67%増の3414億円、営業利益は100%増の507億円。通期見通しでは、売上高が前回公表値から500億円増の1兆3800億円、営業利益は1000億円と据え置いた。「第1四半期は、為替のプラス影響に加えて、テレビ番組制作における作品納入数の増加、映画制作におけるテレビ向けライセンス収入の増加が貢献した。米国における劇場興行は若者向けの大型作品だけでなく、コロナ禍で観客動員が見込みにくかったファミリー向け作品にもヒットが出始めている。2019年の水準を超える興行収入になる週もあるなど、回復基調にある」とした。
映画の大型作品として、2022年8月には、ブラッド・ピットさんが主演する「Bullet Train」を公開し、日本でも9月1日から公開する予定であるほか、動画配信サービス向けに優良コンテンツに対する需要が強く、独立系メジャースタジオとして、さまざまなパートナーにコンテンツを提供している強みがプラスに働くと見ている。また、メディアネットワークでは、アニメ配信事業のCrunchyrollが、海外アニメ市場の成長を背景に、有料会員数や業績ともに期待以上のペースで成長しているという。
エンタテインメント・テクノロジー&サービス(ET&S)分野の売上高は前年同期比4%減の5523億円、営業利益は25%減の536億円となった。売上高は前回公表値に比べて500億円増の2兆4500億円、営業利益は据え置き1800億円とした。「第1四半期は為替による増収効果があったが、上海でのロックダウンの影響や市況の悪化により、テレビの販売台数減が影響した」という。第1四半期のテレビの販売台数は130万台。前年同期は220万台だった。
また、「上海でのロックダウンによる製造事業所の稼働低下、デジタルカメラ向けなどの部品供給制約が想定よりも早く改善したことから、第1四半期の営業利益は見通し水準を大きく上回ることができた。だが、欧州をはじめとしたグローバルでの景気減速や、ドル高による業績への悪影響などが顕在化している。利益の上振れ分をこれらのリスクに充当するとともに、さらなるリスクの拡大に向けて、製品ミックスの改善や費用抑制などの追加施策も講じていく」としたほか、「在庫については、円安による在庫評価額の上昇や、供給に懸念がある部品の戦略備蓄分を除いても、若干高い水準にある。需要の軟化に備えて、在庫レベルの調整を進めていく。また、複数拠点での振替生産の手配、主要部品の生産の分散、オペレーションのDX化も進めており、市場変化に機敏に対応し、収益性の維持、改善に取り組む」とした。
イメージング&センシング・ソリューション(I&SS)の売上高は前年同期比9%増の2378億円、営業利益は29%減の217億円。通期見通しは、売上高は前回公表値から300億円減の1兆4400億円、営業利益は据え置き、2000億円を見込む。
「第1四半期は為替の影響により増収となったものの、研究開発費や減価償却費の増加などにより減益となった。通期見通しでは、中国スマートフォン市場の回復が、2022年度中には期待できないと判断。ミッドレンジやローエンド製品市場の減速と、それに対応したモバイル向けイメージセンサーの売上低減を織り込んだ。一方で、スマホメーカーでは、大判・高画質イメージセンサーを搭載したハイエンドスマホのラインアップが順調に進んでおり、カメラ機能の高画質化や性能向上のトレンドが明確になってきた。第2四半期以降、大判センサーの顧客展開を加速し、モバイル向けイメージセンサーの売上げ成長を牽引していくだろう。また、ロジック半導体の需給バランスの緩和を受けて、高付加価値イメージセンサーの生産が可能になっており、製品ミックスの改善を想定している。車載向けセンサーや『AITRIOS(アイトリオス)』によるソリューション開発にも投資をしていく」と述べた。
金融分野の金融ビジネス収入は前年同期比28%減の2978億円、営業利益は239%増の813億円となった。通期見通しは、金融ビジネス収入は1兆4400億円、営業利益は2200億円と、当初見通しを据え置いた。
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