キッズインフルエンサーと児童労働--規制進むフランス、米英でも法整備求める声

Katie Collins (CNET News) 翻訳校正: 編集部2022年08月16日 07時30分

 親の笑い声や励ましの言葉を聞きながら、カメラの前でふざけてみせるのは21世紀の子どもなら誰もがやっていることだ。これは、ほとんどの子どもにとっては遊びの1つにすぎない。しかし、「Instagram」や「TikTok」で活躍しているキッズインフルエンサーにとっては仕事だ。

カメラの前に立つ子ども
提供:Phynart Studio/Getty

 キッズインフルエンサーの生活は、まるごとコンテンツになる。親は、子どもが親しい人にしか見せない仕草や、目を覆いたくなる大失敗でさえ、インターネット上で他人と共有する。現在、こうした行為は「営利目的のシェアレンティング」と呼ばれていると、ハーバードロースクールの学部長補佐で、「Sharenthood」の著者であるLeah Plunkett氏は言う。シェアレンティングは、share(共有)とparenting(子育て)を合体させた造語だ。

 「営利目的のインフルエンサーコミュニティーの大きな特徴は、プライベートな体験、時にはきわめて親密な体験さえ収益化しようとする点だ」と、Plunkett氏は先ごろのインタビューで語っている。

 「Ryan’s World」のRyan Kaji(10歳)さんは、「YouTube」チャンネルの登録者数が3300万人に迫り、オリジナル玩具も販売する。こうしたスターに刺激され、ここ数年でキッズインフルエンサーの数は激増した。このソーシャルメディアのニッチな市場は、特定の視聴者に刺さるコンテンツを生み出すことで成長し、今や多額の広告費を集めるまでになっている。一山当てようと、自分の子どもを使って、この市場に参入しようとする親も出てきた。

 しかし、このニッチな市場は固有の問題を抱えている。子どもが親から過剰な労働を強いられ、経済的に搾取されるリスクは、その1つだ。安全やプライバシーの問題、さらには心と体の健康に対する目に見えない深刻なリスクも存在する。

 今や大金が動く産業に成長しているにもかかわらず、ソーシャルメディアに登場する子どもを保護する規制がほとんどないことも、問題に拍車をかけている。子役など、エンターテインメント業界で働く子どもについては、米国、英国、オーストラリアをはじめ、多くの国がずいぶん前から法律を定め、子どもの収入を保護し、労働時間を制限してきたにも関わらずだ。

 インフルエンサー産業や児童保護、児童労働法に詳しい学者や弁護士、専門家の間では、この状況を看過すべきではないという認識が共有されている。カーティン大学のインターネット文化研究者Crystal Abidin氏は7月、インフルエンサー業界を調査している英国議会委員会に出席し、インフルエンサーに年齢の上限はないが、「下限はあるべき」だと訴えた。

プライバシーと同意

 子どもがコンテンツ制作の仕事を始めるルートは2つある。1つは、比較的年齢の高い子どもに多いケースで、親を説得してYouTubeのチャンネルを作ってもらうというものだ。もう1つは、親が自分の子どもを主役にしたコンテンツを作り、子どもを1人で、または家族の一員として登場させるというものだ。比率としては、このルートの方が多い。

 親がすでにソーシャルメディアのインフルエンサーとして活動している場合、子どもは生まれた瞬間からインフルエンサーの仕事に参加するようになる。誕生シーンすら公開され、新生児の時から自分専用のソーシャルメディアハンドルが用意されている。こうした子どもたちは、産声を上げた瞬間から画面の中にいるのだ。このような環境では、子どもは自分のプライバシーを選択することもコントロールすることもできない。

 キッズインフルエンサーの保護者の中には、子どものコンテンツをインターネットに投稿する時は本人の同意を事前に得ており、子どものプライバシーを尊重していると主張する人もいる。Abidin氏は、YouTubeのインフルエンサー家族を追った初期の研究の中で、親は子どもがコンテンツ撮影を義務ではなく報酬だと捉えていることを視聴者にアピールするために、先回りした戦略をとっていることを発見した。

 「カメラに向かって、『今日は○○(子どもの名前)は宿題をしなかったので(または言いつけを守らなかったので)いない』などと言い、撮影に参加しないことを罰だと位置づける」と同氏は言う。

 一方、キッズインフルエンサー文化を批判する人々は、ソーシャルメディアを主体的に利用できる年齢に達していない子どもや、ネットワーク化された世界の中で、公衆の前に自分をさらすことの意味を完全に理解しているわけでもない子どもが、納得して同意するとは考えにくいと主張する。

 「Generation Shared(共有世代)」を分析する「TikTok」アカウント(@Mom.Uncharted)の運営者Sarah Adams氏は、インフルエンサーの親が子どもに動画を撮影し、インターネット上で公開することへの同意を求める行為を非難してきた。その中には、わずか1歳の子どもさえいた。

 「本人の同意は得ていると主張して、幼い子どもを撮影し、公開するという自分の行為を正当化している親にはうんざりする」と、彼女は先ごろ公開した動画の中で語った。「子どもが言うイエスやノーは、納得した同意とは別物だ」

 この点について、Plunkett氏は慎重だ。同氏は「親は子どもの存在やプライバシーを尊重することで、子どもに模範を示すことができる」と述べた上で、こう付け加えた。「(しかし)法律家としては、営利目的のシェアレンティングをめぐる問題に対応する上で、同意は必要なステップではあるが、十分ではないと言わざるを得ない」

 現在、弁護士や学者の間では、子どもが営利目的のシェアレンティングによって搾取されることを防ぐための必要かつ十分な規制が議論されている。しかし、議会の動きは鈍い。

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