「サムスンの製品を3つ以上所有している人はいるだろうか」。Michelle Crossan-Matos氏が観衆に尋ねる。驚いたことに、多くの人々が惜しげもなく手を挙げた。彼らは、「NFT.NYC」カンファレンスでサムスンのイベントに足を運んだファンやジャーナリスト、企業幹部、観衆だ。
サムスンは創業以来、消費者市場と法人市場で大きな成功を収めており、米国の家庭の72%には、1つ以上のサムスン製品がある。Interbrandは現在、サムスンのブランド価値をGoogleに次ぐ5位と評価している。サムスンが食料品を扱う貿易会社として始まった会社であることを考えると、悪くない評価だ。
ブランド認知度の向上を目指すサムスンはこの6カ月間、メタバースのデジタルの分野で動向をうかがってきた。メタバースは、ますます多くの企業が成長の機会を見出している仮想プラットフォームだ。筆者は、同社の新たな開拓分野であるメタバースについて深く掘り下げるため、Samsung Electronics Americaの最高マーケティング責任者(CMO)を務めるMichelle Crossan-Matos氏に話を聞いた。
以下のインタビューは、分かりやすくするために編集を加えている。
--Michelle、お会いできて光栄です。最初に、サムスンのメタバースの道のりの始まりについて聞かせてください。御社がWeb3に進出するきっかけとなったのは、何だったのでしょうか。
すべてが始まったきっかけについて考えると、心が揺さぶられます。私はスコットランドの貧しい地域で育ち、教育を受ける機会も限られていました。勤勉と運があってその状況から脱しましたが、私は当時を一緒に過ごした子供たち、私ほど幸運に恵まれなかった子供たちのことをいつも考えます。
当社のメタバースへの最初の取り組みは、ニューヨーク市にあるサムスンの旗艦オフィスを再現した仮想体験「Samsung 837X」でした。私は、ニューヨーク市の通りにいるという刺激的な感覚を若者たちに与えるだけでなく、彼らがテクノロジーが内包する革新と善意について学ぶことができる場所を作りたいとも考えていました。正直なところ、それがきっかけとなって、われわれはメタバースを追求するようになりました。メタバースのおかげで、あらゆる子供の寝室からこの建物(「Samsung 837」)にアクセスできるようになりました。
--この1年間、大小を問わず、さまざまなテクノロジー企業が参入し、分散型プラットフォームへの取り組みを強化するようになったことは、間違いありません。サムスンの戦略は、他のテクノロジー企業とどこが違うのでしょうか。
ある重要な点について、われわれは他社とは違うやり方で実行しています。さまざまなプラットフォームを利用すると言うことです。これは、多くのメタバースで構成されるマルチバース戦略です。これまでに「Roblox」「Fortnite」「Decentraland」(837X)を使用し、現在では、「Discord」も利用しています。このマルチバースという概念を初めて聞いたとき、言いにくい言葉だと感じたと同時に、メタバースで実現しうる影響とその範囲について考えたことを覚えています。
われわれは、自社のメタバースで、製品の機能そのものに関する会話をしているわけではありません。そうした製品が、より崇高かつ大規模な当社の優先事項とどう結びつくのか、という話をしています。あなたはメタバースでどれだけの持続可能性キャンペーンを見たことがありますか。Samsung 837Xにアクセスした人は、当社がテクノロジーを他の目的に転用したり、アップサイクリング(訳注:元の用途より価値が高くなるよう再利用すること)したり、地球をより良くする取り組みを先導したりしていることを学ぶことができます。われわれはメタバース内での教育を進めており、ユーザーの力になることもできれば良いと考えています。
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