Twitter対E・マスク氏--法廷闘争は長期化の様相

Queenie Wong (CNET News) 翻訳校正: 編集部2022年07月20日 08時00分

 億万長者のElon Musk氏とTwitterの不安定な関係は、複雑化の一途をたどっている。

イーロン・マスク氏
提供:James Martin/CNET

 Musk氏は米国時間7月8日、Twitterに対する440億ドル(約6兆円)の買収提案を撤回した。この決定は、泥沼の法廷闘争を引き起こすことになりそうだ。

 TwitterはMusk氏を相手取り、デラウェア州の裁判所に提訴した。同社はMusk氏の弁護士に宛てた7月10日付の書簡で、買収取引を取りやめるという決定は「無効で不当」なものだと主張した。一部の法律専門家は、このTwitterの主張はかなり説得力があると指摘する。

 TwitterはMusk氏から持ちかけられた買収取引に会社の未来を賭けていた。上場企業であるTwitterは、投資家から広告事業の拡大を迫られてきた。しかしMusk氏の提案を受け入れ、非公開企業に戻れば、株主の短期的な期待から逃れ、長期的な目標、つまりユーザーがプラットフォーム上での体験を細かく制御できる分散型ソーシャルメディアを作ることに専念できる。

 Musk氏は、自分がいかにTwitterにふさわしい経営者かをアピールしてきた。言論の自由を守り、Twitterのアルゴリズムをオープンソース化し、Twitterに横行している自動スパムアカウントを「駆逐」すると約束した。しかしTeslaやSpace Xの最高経営責任者でもあるMusk氏は今、いわゆる「買った後の後悔」にさいなまれているようだ。

 4月25日の買収発表後、Twitterの株価が大幅に下落していることも後悔の一因かもしれない。景気後退への懸念が高まる中、5月には株価が徐々に下がり、一時は25%以上の下げ幅を記録した。Musk氏は同月、買収額を引き下げる可能性を示唆したが、Twitterが値下げ交渉に応じる気配はなかった。

 デラウェア大学の元教授で、Weinberg Center for Corporate Governance創設者のCharles Elson氏は、Musk氏の今回の動きは現在の取引を停止し、より低い価格で新たな交渉を始めるための「カード」である可能性が高いと指摘する。

 「デラウェア州では、何らかの不正があったことを証明できない限り、買収取引から途中で降りることは非常に難しい」とElson氏は言う。「これは非常に高いハードルだ」

 取引を一旦破棄し、改めて価格交渉を行うのは、企業買収戦術の1つであり、過去にも成功例があると同氏は指摘する。例えば2020年にはフランスの大手ラグジュアリーブランドLVMH Moet Hennessy Louis Vuittonが、米国のジュエリーブランドTiffany & Coの買収契約を途中で取りやめた。理由は、米国の関税がフランスの製品に与える影響を精査する時間が必要だ、というものだった。最終的に、LVMHは当初の提案額より4億ドル安い、158億ドル(当時約1兆6200億円)でTiffanyを手に入れた。

 TwitterとMusk氏が締結した73ページに及ぶ買収契約には、所定の状況下で取引が打ち切られた場合、Musk氏は10億ドル(約1360億円)を支払うと定められているため、この金額をMusk氏がTwitterに支払って幕引きになる可能性もある。しかし裁判でMusk氏が勝てば、契約解除金さえ支払わずに買収取引から撤退することもあり得るだろう。

 Musk氏の弁護士Mike Ringler氏は、買収取引の取りやめを通知した書簡の中で、今回の決定はTwitterが複数の合意条項に違反し、「虚偽かつ誤解を招く説明を行ったと考えられる」ためだと説明した。この書簡は、TwitterがMusk氏への提供を怠った情報の例として、スパムアカウントや偽アカウントの数の算定プロセスを挙げている。Twitterは第1四半期に、同プラットフォームの1日当たりのユーザー数2億2900万人のうち、偽アカウントやスパムアカウントの割合を推定5%未満だとしていたが、Musk氏はその数はもっと多いと主張している。Ringler氏は書簡の中で、この指標は「Twitterの財務状況や業績を判断するために欠かせない基本情報」であり、Musk氏はこの指標について、さらに詳しい情報を求めていると述べた。

 書簡には、「世間の臆測と異なり、Musk氏は合併契約の締結前にTwitterのデータや情報を求めなかっただけで、こうしたデータや情報を確認する権利を放棄したわけではない」とも記載されている。

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