「NeurOlympics」は一見、単純なテストだ。
この60分間の評価テストで、受験者は4つの単純なビデオゲームをプレイする。消えるアイコンを記憶するゲームや、反応の速さを測定するゲームなどがある。このテストの成績は、記憶力やスピードなどの特性を評価するアルゴリズムにかけられる。
米国カリフォルニア州とオランダに拠点を置くプロeスポーツチームのTeam Liquidは、NeurOlympicsの結果が、「リーグ・オブ・レジェンド」や「VALORANT」など、プロ競技として採用されている多くのゲームで勝利を得るための鍵が隠されているかもしれないと考えている。
Team Liquidのマネージャーたちは、NeurOlympicsの結果に基づいて、選手がチーム(通常5人で構成される)に適しているか、そして、どのような役割が適しているのかを判断する。Team LiquidのスタッフはNeurOlympicsについて、選手の行動を理解する手段であるだけでなく、コーチングを最適化して、才能とスキルをより効果的に伸ばす手段でもあると考えている。
Team Liquidのチーム開発コーチに新たに任命されたTanner Curtis氏は、「コーチは選手の学習の仕方をより深く理解できるようになるだろう」と話す。「われわれは、選手の強みと注力すべき課題を特定できるようになる」
Team Liquidは、レーシングチームAlpine F1のeスポーツチームとともに、プロスポーツを参考にしている。優位な点を見つけるため、食事や睡眠、トレーニング、マインドフルネスなど、パフォーマンスに影響を及ぼす全ての要素について精査、分析され、議論される、非常に競争の激しい分野だ。米ナショナルフットボールリーグ(NFL)は長年、Wonderlicテスト(1934年に考案された50問の多肢選択式テスト)によって、選手候補者の知能を測定していたが、2022年に運動能力とメンタルをテストするスカウティングコンバインの登場で廃止された。スカウンティングコンバインでは、コンピューターベースの「Player Assessment Test」が採用されている。NFLのクォーターバックであるMatt Ryan選手は、状況認識力を高めるため、認知トレーニングシステム「NeuroTracker」を使用している。
選手の認知能力をテストすることは、論争も呼んでいる。Wonderlicテストは、人種的バイアスがあると批判されてきた。少なくとも1人の選手は、自身のポジションであるラインマンに飽きてしまうのではないかとチームに思われ敬遠されないように、わざとテストで低い点を取ったという事例もある。もっと広い観点から、成績の向上に関して、定期的なWonderlicテストに実際的な価値はあるのか、と疑問を呈する人もいる。
ユタ大学の健康、運動科学、およびレクリエーション学科の教授であるMark Williams氏は、「これらのテストの結果によって、あるタスクにおける現在または将来の成果を何らかの形で予測できることを示唆する」証拠はない、と述べている。「実際のところ、才能を発掘する目的で使用することはできない」
それでも、Team Liquidは120人の選手のより多くにNeurOlympicsテストを受けてもらうことを目指している。他のどんな実験でも同じように、サンプルサイズが大きいほど、より包括的な結果を得られるため、Team Liquidはカジュアルゲーマーを含む組織外の選手のテストも開始したいと考えている。
「理想を言えば、各ゲームの上位300~500人の選手が欲しい。だが、基準点になるカジュアルゲーマーも求めている」(Curtis氏)
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