仮想現実(VR)を使ったエクサゲーミング(エクササイズとゲーミングの造語)が近年、爆発的な人気を呼んでいる。「PlayStation VR」あるいは「Oculus」のヘッドセットを使って、「Beat Saber」や「Supernatural」といったゲームで運動する人が増えてきた。それと比べて、VRによるエクサゲーミングが高齢者の認知機能改善に及ぼしうる影響は、あまり知られていない。
だが、VRによるエクサゲーミングあるいは「ゲームエクササイズ」に関して、認知機能低下を遅らせる可能性があると示唆する研究は増えている。それが、高齢者の健康や生活の質(QOL)に大きな影響を持つかもしれないというのだ。
米国立老化研究所の報告によると、軽度の認知機能低下はアルツハイマー病などの認知症の原因になりやすいという。米国では、580万もの人がアルツハイマー病を抱えており、治療法は確立していないものの、研究は進んでおり、老化に伴う認知障害の治療法および予防法の理解を深めるのに役立っている。
VRによる治療法に、身体的および精神的な効果があることは知られている。そして、心と体が連動すると驚くべき効果を持ちうることが明らかになりつつある。
VRエクサゲーミングは、仮想現実環境とテレビゲームを組み合わせたものだ。VRエクサゲームの大半は2Dだが、VRヘッドセットの普及に伴って、3Dのエクサゲームも、健康やウェルビーイングの向上に対する関心の増加により、人気を博しつつある。
エクサゲーミングは目新しいものではなく、運動指向のゲームに関する研究は1980年代までさかのぼる。VRテクノロジーが最初に発展した頃のことだ。任天堂の「ファミリートレーナー」が記憶にある年齢なら、エクサゲームをプレイしたことがある最初の世代かもしれない。
1990年代には、何社かのメーカーが参入してハイエンドのフィットネス機器を開発するようになる。任天堂とLife Fitnessが共同開発した「エンターテインメントエアロバイク」や、Cybergearの「Tectrix VR Bike」、そして「Tectrix VR Climber」などだ。だが、いずれの製品も高価すぎて、消費者や企業に普及するには至らなかった。
2010年代に入ると、エクサゲーミングは「Xbox」や「PlayStation」、任天堂「Wii」、あるいは「Nintendo Switch」などによる運動ベースのテレビゲームと同義になる。それ以前の製品と比べると、値段もずっと手頃になり、一般家庭に取り入れやすくなった。
2021年に600人以上を対象として実施された調査によると、エクサゲーミングも含めたVRの娯楽利用は、新型コロナウイルス感染症に伴うロックダウンと外出制限が続いた間の、心身のウェルビーイングに効果を発揮したという。
VRエクサゲームは、家庭でプレイしても気軽に運動を楽しめるが、医療やリハビリの現場で利用されるケースも増えている。さらには、最小限の監督のもと、患者が家庭で安全に運動できる選択肢もある。
Ryan Glatt氏は、カリフォルニア州サンタモニカにあるPacific Neuroscience InstituteのPacific Brain Health Centerでパーソナルトレーナーを務め、認定を受けたヘルスコーチでもある。そのGlatt氏が若い頃に気づいたのは、「Dance Dance Revolution」のようなテレビゲームが、他にない心身上の効果をもたらすということだ。
「子どもの頃、私は肥満体で、脳しんとうをきっかけにADHD(注意欠如・多動症)と診断された。自分のテレビゲーム中毒を良いことに活用できる方法はないかと考えていた」、とGlatt氏は話している。同氏はエクサゲーミングのおかげで減量に成功し、ADHDの症状も改善されたという。その後、長じてからはゲームに対する情熱がキャリアに結び付くことになった。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」