「Apple Watch Series 8」の正式発表は今秋の見込みだが、そのラインアップをほのめかす情報がAppleから飛び出した。舞台となったのは、先週開催されたAppleの年次開発者会議「Worldwide Developers Conference(WWDC)」だ。この会議の基調講演でウェアラブルデバイス向けOSの次期バージョン「watchOS 9」がプレビューされた際、あるメッセージが明確に伝えられた。それは、「健康とフィットネス」がApple Watchのキーワードになる、というものだ。
watchOS 9ではスポーツ、特にランニング関連の測定指標や睡眠モニタリングが強化され、服薬管理ツールが登場する予定だ。次期Apple Watchがどのような進化を遂げるかは公式の発表を待つほかないが、watchOS 9がワークアウトに重点を置いていることを考えると、年内にタフ仕様の「Apple Watch Explorer Edition」が登場するといううわさも現実味を帯びてくる。
watchOS 9の内容は、Appleが幅広い層のユーザーを取り込もうとしていることを示すものだ。例えばプロのアスリート、スポーツを気軽に楽しむ層、健康上の理由から心拍数を把握する必要のある人々などだ。秋に登場すると言われる新型Apple Watchは、このビジョンに沿った、新たなハードウェアを搭載している可能性が高い。個人的にはバッテリー駆動時間の改善に期待したい。
watchOS 9では新しいワークアウトツールや測定指標がいくつも導入されるという。例えば歩幅や接地時間といったランニング向けの新データ、心拍数範囲の追跡機能、インターバルトレーニング、トライアスロン用の「マルチスポーツ」ワークアウトタイプ、スイミング用のキックボード検出機能などだ。2021年にはサイクリングのワークアウト自動検知機能が追加された。
新しいApple Watchのラインアップがどうなるかは公式の発表を待つほかない。しかしエクストリームスポーツ向けの堅牢なApple Watchが発売されるとうわさされる今秋に、watchOS 9が登場するのは偶然ではないだろう。Bloombergは、カシオの「G-Shock」のような高い耐衝撃性能を備えたApple Watchが登場すると報じている。この新型ウォッチはApple社内で「Explorer Edition」と呼ばれているとされ、堅牢性をさらに高めるためにラバーケースが採用される可能性もある。記事は、このデバイスは通常のSeries 8や次世代「Apple Watch SE」とは別に、アスリートやハイカー向けの端末として発売されると伝えている。
Apple Watchにはすでにフィットネス愛好家向けの機能が多数搭載されている。多彩なワークアウトに対応し、アクティビティーの達成目標やリマインダーを設定できるほか、心拍数の通知機能を備え、酸素摂取量(VO2)の最大値や増加といった指標も計測できる。しかし現時点では、アスリートに重宝されるようなランニングに特化した機能はない。これに対して、例えばGarminのランニング専用ウォッチには、レースの種類に合わせたトレーニングプログラムやペースガイダンス、ケイデンス(1分あたりのステップ数)やストライド(歩幅)といったランニング関連の指標に加えて、モデルごとの特別な機能が用意されている。
Counterpoint Researchの調査によると、Apple Watchは2022年第1四半期のスマートウォッチ世界出荷台数の36.1%を占める、世界で最も人気の高いスマートウォッチだ。watchOS 9にはランナーのための各種計測機能が追加されるが、よりニッチな競技スポーツ向けの機能を強化することで、Appleは市場支配をさらに強固なものとできるだろう。
しかし、watchOS 9の新機能をもってしても、ランニング専用スマートウォッチが提供しているような詳細なフィードバックをApple Watchが提供することは難しい。それでもwatchOS 9の登場は、Apple Watchがこうした専用機との差を大幅に縮める助けとなるはずだ。
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