村上臣氏が会社選びの軸にする「3つのテーマ」--ヤフーやリンクトインで得た気づきとは

藤井涼 (編集部) 日沼諭史2022年07月06日 09時00分

 大学在学中にITベンチャーの電脳隊に参画し、その後ヤフー、ソフトバンクでフィーチャーフォンからスマートフォンへの移行期にモバイル戦略などを担当した村上臣氏。ワイモバイルの立ち上げに携わった後、2017年にビジネスプラットフォームのLinkedIn日本代表に就任し、さらに2022年、同氏はそのLinkedInを後にし新たなチャレンジを始めている。

村上臣氏
村上臣氏

 そうした本業の傍ら、働く女性を支援するポピンズの社外取締役や、企業の新規事業創出をサポートするフィラメントのアドバイザーを勤め、さらに2022年6月末にはフリーランスと企業を結びつけるランサーズの社外取締役にも就任した。

 これまで数々のキャリアを重ねてきたなかで、同氏は「企業」や「働くこと」についてどのように考えてきたのだろうか。その話からは、1人1人が仕事や人生にどう向き合っていくべきかだけでなく、企業のこれからのあるべき姿も浮かび上がってきた。

 前編では、村上氏にこれまでのキャリアを振り返ってもらうとともに、同氏にとってのターニングポイントや企業選びの際に軸にしていることなどを聞いた。

「モバイル開発」とともに歩んできたキャリア

——まずは、ご自身のこれまでのキャリアを振り返っていただけますでしょうか。

 学生時代からお話すると、電脳隊というベンチャー企業を今のZホールディングス代表取締役社長の川邊健太郎らと立ち上げたのが最初です。日本では早い段階からモバイルにフォーカスした会社だったと思っています。僕はエンジニアとしてずっと物作りをしていて、プログラムコードを書きまくっていました。その後、一度電脳隊を出て、パイロットになりたかったので航空会社の自社養成枠を受けたものの不合格になり、縁があった野村総合研究所に新卒で入社しました。

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電脳隊時代

 ですが、10カ月ほどでドロップアウトして、電脳隊が他社とともに立ち上げたジョイントベンチャーのピー・アイ・エムという会社に入りました。そこで3キャリア対応の元祖グループウェアのようなものを作っていたところ、ヤフーに買収されたのが2000年8月。それからはトータルで17年余り、途中で出たり入ったりもしましたが、ほぼ一貫してモバイルに関わり、モバイル版のYahoo! JAPANを作ったり、iPhone誕生後はスマートフォンのアプリを開発したりしました。

 ソフトバンクではスターティングメンバーの1人としてワイモバイルの立ち上げにも携わりましたが、ある程度モバイルシフトをし終えたのを見届けて、リンクトイン・ジャパンの代表になったという感じです。ヤフーやソフトバンクグループにいた時間がやはり長かったですね(笑)。ヤフーに買収されたときは23〜24歳でしたから、自分のベースはそこでできたように思います。

——そこからリンクトイン・ジャパンに移ったのはどういった理由ですか。

 僕は国内で生まれ育ちました。留学もしたこともないし、海外で働いたこともないので、海外経験はゼロだったんです。ただ、僕が関わってきたインターネット周りのビジネスというのはシリコンバレーの影響を強く受けていますので、グローバルなプロダクトというものがどうやってできるのかを見てみたい、関わってみたいという長年の思いがありました。そこにLinkedInとのご縁があって、日本語版のプロダクトヘッド 兼 カントリーマネージャーとしてオファーをもらえた、というのが理由です。

 最初の2年半ほどは本社の中にプロダクトチームを持って、日本と英語圏以外のLinkedInを良くするためにプロジェクトマネージャー的にリードし、LinkedInの中に編集部を作ったり、プロダクト改善を進めていったりしました。それに目処がついてから、ちょうどコロナ禍に入り始めた頃にカントリーマネージャーとしての仕事がさらに増え、営業的に動いたり、リクルーティングで日本のオフィスを大きくしたりする活動を2年弱担当しました。そして2022年、退職して今に至ります。

ワイモバイルの立ち上げにも携わった
ワイモバイルの立ち上げにも携わった

——17年もの間、ヤフーやソフトバンクグループにいたわけですが、どのようなところが魅力でしたか。

 たとえばヤフーは、当時PCから利用しているユーザー規模がすごく大きかった。もし、みんながスマートフォンを持つようになったら、その全員がヤフーを使うかもしれないわけで、そういうスケール感ですよね。

 電車の中で目の前にいる人が自分たちが作ったサービスを使っていたりする。そういうのを目にすることができ、しかも自分がそこに少しでも関わって貢献できていると実感できるのは、非常に嬉しいというか、とてもやりがいがあったんですよね。

オンラインの「選択肢」が増えたことは日本にとって重要なこと

——キャリアを重ねていく中でいろいろな出来事もありました。東日本大震災が発生したり、新型コロナウイルスが蔓延したり。振り返ってみて、ご自身のキャリアにとってここがターニングポイントだったな、と思うところはあるのでしょうか。

 ヤフーにいたときに発生した東日本大震災は、日本にとっても、自分にとっても非常に大きな出来事でした。実は震災が発生した直後、2011年3月末に一度ヤフーを退職する予定だったんです。引き継ぎもしているところでしたが、3月11日に地震が発生したので、退職するどころではなくなってしまいました。プラットフォームを運営する立場として、やらなければいけないことがたくさんある。われわれにしかできない情報発信もある。なので、人事のところに行って退職届を返してくれってお願いしました。

 結局は少し延期して4月末で退職したのですが、インターネットのテクノロジーが社会に対してバリューを出すという意味では、震災は日本としてもすごく転機になったと思います。ヤフーは電力節減のための情報を提供したり、さまざまなところからアナログデータを集めてデジタル化したりしましたし、LINEも震災を契機に生まれましたよね。社会的責任みたいなものをテックカンパニーが意識するようになったのも震災がきっかけだったと思います。多くの企業がテクノロジーを使って何か始めようとしていた。こういう意識の変化は、2011年、2012年はすごく大きかったと思います。

——それまでのインターネットは世の中にとってどのような存在だったと感じていますか。

 “インターネット・ラブ”みたいな人たちがすごくたくさんいて、PC、2ちゃんねる文化、mixi文化などいろいろなものを引きずっていて、PCとフィーチャーフォンを分断していたように記憶しています。PCは仕事で使うもの、生産的なものとして好まれていて、一方のフィーチャーフォンはエンタメに偏っていた。フィーチャーフォンはDeNAやグリーのソーシャルゲームもあり、初めて持った自分のためのインターネット、みたいな感じだったと思います。

 そんな断裂を震災を契機に変えたのがスマートフォンでした。PCとモバイルで同じサービスをどこでも使えることが当たり前になり、PCとモバイルの垣根が崩れたと思います。モバイルでもPCのようなアプリをインストールできるようになり、生産的なこともできるしエンターテイメントもできる。さらにはクラウドサービスができたことによって、ほぼスマートフォン1台であらゆることが済むようになっていきました。PCからモバイルへ比重がぐっと寄っていった、というのが大きな変化だったのかなと思います。

——その後の大きな転機としては新型コロナウイルスかと思います。リンクトイン・ジャパンにいた当時、ご自身の考え方に変化はありましたか。

Linkedin本社にて
Linkedin本社にて

 リンクトイン・ジャパンに入社してから2年半くらい経ち、だいぶ慣れてきた頃でしたね。コロナが来て、会社としてはかなり早い段階で100%テレワークに切り替えました。2020年2月末には事務所をほぼ閉めて、全員が在宅勤務。オフィス入り口の電子錠のアクセス権も削除して、どうしても出社したいときは申請と承認が必要という形にしました。

 ところが、そうなったら思いのほかスムーズに在宅勤務に移行できたんですよね。考えてみれば、上司はほとんど全員が米国かシンガポール在住ですし、コロナ前も丸の内にあるオフィスに行ったところで結局そこからテレワークをしているようなものだったんです。そういう環境が普通だったので、在宅勤務になっても違和感はありませんでした。オフィスから家になってもやることは変わらない。もちろん人との接触や会話が減る、というところでは困ったりもしましたが。

 そこで気付いたのが、他の外資系企業もだいたいそんな感じだったのに、なぜか日本企業が大騒ぎしていたこと。一言で表すなら「DXができていない」ということなんでしょうけれども、そのギャップが明確に見えたのが、まさにこのコロナ禍だったなと思います。

 最近になって少しずつ以前のような日常が戻りつつあります。ただ、みんな少なくとも一度はオンラインでビデオ会議を経験した、というのはすごく大きなことだと思うんです。そういう意味では、日常が戻りつつあるとも言えるし、選択肢が増えたとも言えるんですよね。他社と会議するようなときも、「今回は会います? それとも会わないでリモートでやります?」みたいな会話が繰り広げられていたりするじゃないですか。そういう考え方はコロナ以前の日本には全くなかったので、選択肢が増えたのは今後の日本や企業にとってはめちゃめちゃ重要なことだと思っています。

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