——村上さんはこれまでいくつもの企業で要職を歴任してきました。職を変えるタイミングでは企業のどこを見てきたのか、あるいは何を重視して選んできたのか、教えてください。
自分がそのときにテーマにしていることと、その会社がやっていることが合うかどうかですね。たとえばピー・アイ・エムのときにヤフーと一緒になるタイミングでは、小さな会社でちまちまやるより、ヤフーのPCユーザーをモバイルに移行するスケールの大きなものの方が面白いと思ってみんなでヤフー入りを決めました。自分のやりたいことと会社のやりたいことがクロスするポイントが、最も重視してきたところだと思います。
特に僕の場合は、実際に使うユーザーがどれぐらいたくさんいて、その人たちがどれだけ喜んでくれるか、みたいなところが自分のやりがいに直結していることがわかっているので、そういうものかどうかが自分自身フルコミットする上ではすごく大事にしてるポイントです。
——ビジネスSNSとも言われるLinkedInは、日本ではFacebookがそのポジションを持っていたりするところもあるので、ある意味チャレンジだったのではないかとも思うのですが。
その時はグローバルのプロダクトを開発しているチームに行きたい、という気持ちが明確にあって、それを日本にいながらにしてできるという珍しいポジションだったんですよね。一般的には、米国や欧州に大きな開発拠点があるので、グローバルのプロダクト開発に関わりたいなら海外に来い、という話になるんです。LinkedInのときはたまたまそういうポジションが日本に出てきたので、チャンスだったんです。
それに加えて僕自身、個人的なテーマはずっと変わらずに来ました。主なテーマは「テクノロジーで社会に貢献する」「ダイバーシティ」「働き方改革」の3つです。特に最後の「働き方改革」は、コロナ以降、日本でもワークスタイルは徐々に変わってきたところがあるものの、社会全体で見ると大きな進歩はありません。
人材の流動性が上がって、人がもっとフラットに企業と接するようになれば、幸せな人はもっと増えるだろうと思います。そんな信念も含め、この3つの自分のテーマにマッチしているところで働きたい、というのは以前からずっと自分の軸としてありますね。
——村上さんのキャリアを考えるとフリーランスとして活躍したり、起業したりすることもできるのではないかと思います。それでもあえて企業に勤め続けるのはなぜでしょうか?
それはズバリ、企業の持っているアセットを利用したいからです。今インパクトを出したいと思ったときに、その企業のビジョン・ミッションに共感できて、その資産をある程度活用できそうなのであれば、それを使わせてもらった方がインパクトを出しやすい。起業もしようと思えばいつでもできると思いますが、今のところ起業してまでやりたいテーマが見つかっていない、というのが理由でもあります。
自分じゃないとできないことは何か、というのをよく考えます。反対に自分でしかできないことでなければ、他の人がやればいいと思っているくらいです。自分が今、めちゃめちゃ頑張って起業してまで取り組みたいテーマがあるかと言われるまだ見つかっていなくて、代わりにエンジェル投資を通じて、昔一緒に働いていた人を応援して起業を後押ししたりしているんですよね。そういう活動をすることで、ある程度自分の「起業欲」みたいなものを消化できているのかもしれません。
フリーランスという意味では、今手がけている社外取締役などの副業がフリーランスに近い動き方ではあります。そういう働き方をする人が日本で増えれば、もっと多様性が出てきて働きやすくなるし、働いてる人のハッピーも増えるはずです。ランサーズに参画しようとしている理由はそういうところにもあります。働き方改革のところはLinkedInでやり残した部分でもあるので、もっといろいろな働き方をした方がいいよね、というメッセージはこれからもどんどん伝えていきたいなと思っていますね。
(後編に続く)
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