Glatt氏は、Pacific Brain Health Centerの「Fitbrain」トレーナーとして、ゲームとフィットネスを脳の健康と組み合わせることに取り組んでいる。臨床医や研究者と協力して、軽度認知障害(MCI)のある高齢者の記憶機能を改善しようとしており、そのためにエアロバイクやトレッドミルと、2D用のタブレットまたは3D用のVRヘッドセットを使って、運動と認知機能の訓練を組み合わせているのだ。また、機器を使わない着座型または起立型のVRエクササイズや、VRを使用しない2Dでの動作練習も取り込んでいる。
Pacific Brain Health Centerの外来記憶クリニックは、高齢者の認知障害を予防し、可能であれば治療することを目指すハイテクジムだ。Glatt氏によると、同センターは、臨床の現場で高齢者向けにVRエクサゲーミングを使った最初の脳トレーニングジムの1 つだという。
「Fitbrainプログラムを始めたのは4年前のことで、文献で使われることがある名称を借りるなら、本格的な『臨床ゲームセンター』の設立を目指してきた。ゲームを楽しむわけだが、意図するのは娯楽だけではない。治療的な効果を期待している」(Glatt氏)
調査研究では、VRエクサゲーミングが記憶障害の予防に有望だという結果が現れつつある。Glatt氏と新たな科学的調査によれば、アルツハイマー病などの認知症やパーキンソン病、さらには多発性硬化症などの神経症状に効果が期待できるという。
「健康的な老化を考えるとき、皆が興味を抱くのは認知機能低下の予防と緩和だ」、とGlatt氏は語る。「エクサゲーミングに関する研究のほとんどで、まさしくその改善にエクサゲーミングが有効であることが明らかになっている」
Glatt氏によると、エクサゲームに取り組む高齢者は、実行機能、つまり、行動を計画したり、整理したり、反応したりするための脳の機能に改善が見られる可能性があるという。認識力、平衡感覚、気分、QOL、足取り、歩速などの改善につながる場合もある。
結果はおおむね用量依存的だ。つまり、エクサゲームで認識力を刺激すればするほど、脳に対する効果も高くなる。
「魔法の薬というわけではない」、とGlatt氏は述べている。「短期間で多くの人が改善を感じるかもしれないが、効果を維持するにはエクサゲームを繰り返し続ける必要がある。普通の運動と同じように」
成人・老人精神科医であり、Pacific Brain Health Centerの所長を務めるDavid A. Merrill医師は、運動とゲームの間には相乗効果が存在すると話している。
「運動はおそらく、その最たるものとは言わないまでも、健康全般を、そして脳の健康と脳の機能の両方を改善する有効な介入の1つだ」と、Merrill医師は電話で話した。
Merrill医師によると、運動には血液循環の改善、神経発生(新しい脳細胞が形成されること)の活性化、海馬における記憶中枢の強化という効果があるという。そして、ゲーム要素を介して認知活動と身体活動を組み合わせることで、そうした効果はさらに上がる可能性がある、とMerrill医師は語る。
「二重課題」とは、それぞれ独立して実行したり測定したりすることもが可能な認知課題と運動課題を同時に行うことを指す概念だ。Merrill医師とGlatt氏によると、この二重課題が、運動単体よりも認知機能の向上に資する原因になっている可能性がある。
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