スマートフォンネイティブが見ている世界

ハッシュタグは「野菜手押し」や「かき氷」--Instagramで横行する薬物売買

 以前、Twitterで広がる大麻売買実態について解説したことがある。「#野菜手押し」などで検索すると、「営業してます、(ブロッコリー絵文字)1個6000めっちゃいい感じです! 連絡待ってます テレ #大阪手押し #野菜手押し」などのツイートが多数見つかる。

 「野菜」「アイス」「紙」などの隠語、ブロッコリー、かき氷、虹などの絵文字は、どちらも薬物を表している。野菜、ブロッコリーは大麻、アイス、かき氷は覚醒剤、紙、虹はLSDを意味する。

 「手押し」は対面で直接取り引きするという意味であり、多くは「テレグラム」でやり取りされる。テレグラムは運営側でも通信内容を見ることができない、秘匿性の高いメッセージアプリだ。警視庁捜査1課が令和元年以降に摘発した41件の強盗事件の95%超で、犯行グループがテレグラムを使っていたことでも話題となったものだ。

 Twitterや一部のマッチングアプリでは、このように薬物の売買が広がっているが、それはInstagramにも及んでいる。実態とリスクについてご紹介したい。

Instagramは「薬物販売の温床」

 Instagramで「#mdma」などの薬物名がついたハッシュタグを検索すると、「この検索は薬物の販売に関連している可能性があります」という警告が表示され、検索結果は表示されないようになっている。

 
 

 実は以前から、Instagramで薬物が販売されたり、ディーラーが薬物関係の単語で検索したユーザーに対して薬物関係の広告を配信したりすることが知られていた。

 ワシントン・ポスト紙で、薬物関係のハッシュタグへのクリックや、薬物ディーラーのアカウントの投稿に「いいね」をすることで、薬物関係のハッシュタグやアカウントのフォローをすすめられてしまうことが取り上げられたことがある。毎回おすすめされてしまうことで、薬物への誘惑を感じているユーザーが、薬物中毒に引き込まれてしまう恐れがあるというわけだ。

 Instagramがこの問題に対処しようとしたことは、先述の例でも明らかだ。しかし、対策が十分でなく、現在も蔓延していることがわかっている。

残る多くの「薬物販売」投稿

 「Tech Transparency Project」によると、Instagramにはまだ薬物関係のアカウントやハッシュタグが多く残っている。

 Instagramでは「#mdma」というハッシュタグは禁止されているものの、「#mdma」と入力すると、同じ薬物の代わりのハッシュタグが自動入力されたという。たとえばあるユーザーがInstagramの検索バーに「buyxanax」(Xanax、ザナックスは抗不安薬)と入力し始めると、入力が完了する前にXanax購入につながるハッシュタグが自動入力されたという。

 その後、ユーザーがアカウントをクリックすると、即座にディーラーに連絡が届いたという。これは他の死亡につながる薬物でも同様だったそうだ。また、あるユーザーが「#mdma」と入力すると、MDMAの俗語であるmollyを含めた「#mollymdma」というハッシュタグが自動入力されたという。

 これは調査結果発表後に改められているが、執筆現在も、「#mdmaforsale○○」ハッシュタグにはさまざまな薬物関係の投稿が見られる状態だ。この「○○」部分には、「london」や「newyork」「paris」「losangeles」などのさまざまな地名が入る。その土地で販売するという意味だろう。

 
 

 「Instagramはリア充のキラキラ投稿のみ」だったのは昔のこと。Instagramが若者のコミュニケーションのメインツールとなった結果、いじめに一番使われるSNSという調査結果もあるほどだ。今は、副業詐欺や犯罪アカウントなどがあふれる状態となっているのだ。

 
 

隠語で投稿される有害、犯罪情報

 もちろん、Instagramだけが恐ろしいSNSというわけではない。たとえば冒頭でご紹介したように、Twitterでは日本語の隠語で堂々と薬物が売買されており、もっと身近な危険な場となっている。隠語を使うのは、警察などの目をかいくぐりつつ、購入者やターゲットにリーチするためだ。

 それだけでなく、パパ活や闇バイト募集など、さまざまな場として使われている。パパ活は「優しいp募集します」「p活」などの隠語、闇バイトでは、「UDあり(受け子、出し子)」などの隠語を使い、多くの人が見るTwitterなどで募集をかけているのだ。

 このような場に使われているSNSは、すべて匿名で複数アカウントが作れる上、10代20代などの若者に人気のものばかりだ。周囲の保護者は、このようなものに好奇心を抱いた若者が、このような有害情報にアクセスしたり、ディーラーなどとつながったりして犯罪に巻き込まれることがないよう、見守るべきだろう。

高橋暁子

ITジャーナリスト、成蹊大学客員教授。SNS、10代のネット利用、情報モラルリテラシーが専門。スマホやインターネット関連の事件やトラブル、ICT教育に詳しい。執筆・講演・メディア出演・監修などを手掛ける。教育出版中学国語教科書にコラム 掲載中。元小学校教員。

公式サイト:https://www.akiakatsuki.com/

Twitter:@akiakatsuki

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画特集

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]