「#マスク売ります」「#使用済みマスク売ります」―このような言葉でTwitterで検索すると、使用済みのマスクを売るという若い女性たちのツイートが多数見つかる。
「使用済みマスク売ります。1枚 700円(送料込)〜 メルカリ/ヤフオク/PayPayフリマ/ラクマ(全て匿名配送) オプションでキスマーク+100円、メッセージメモ+150円 その他(要相談) DMで」
「女子高生の使用済みマスク売ります。○ルカリで売るので詳しくはDMで」
「使用済みマスクいる方いませんか? #マスク売ります #靴下売り子 #唾液売ります #下着売ります」
使用済みマスクが販売されている実態と背景、リスクについて解説したい。
「他人の使用済みマスクとか気持ち悪い。汚いし、そんなのをわざわざ買うなんて。コロナに感染するかもしれないし」と、強い嫌悪感を感じて拒絶している女性を見かけた。多くの人が同じように感じるだろうが、買う人がいることも事実だ。
“使用済みマスク販売”ツイートを見ると、口紅やファンデーションの汚れのついた使用済みマスクの写真がつけられていることが多い。中央にあえてキスマークを付けた写真が添付されていることもある。「キスマーク付きは+100円」などとなっており、プラスでオプション料金がかかるものだ。
多くの場合、販売には「メルカリ」などのフリマアプリを使う。フリマアプリでの取引なら、本名や振込先を公開せずに安全に販売できるためだ。SNS上で連絡をとった上で、ダミーの画像で「○○様専用」などとつけて出品し、購入させるというわけだ。
このような行為は、コロナ禍でお店が休みになり、バイトが入れられずに手を出す人も多いようだ。コロナ禍前もマスクを販売する例はあったというが、コロナ禍後に急増した。マスクでは販売しても500〜1000円程度にしかならないが、数を売ればお小遣い程度にはなる。
そのようなアカウントを見ると、元々使用済みの靴下や下着なども販売しているアカウントであることも多い。そのようなアカウントにとっては、マスクは単なる入り口で、別の商品の販売や、リピートにつなげるためのものという可能性もあるだろう。
つまり、使用済みマスクの販売は、ブルセラショップで着用済み下着などの販売の延長線上にある行為なのだ。しかも下着より仕入れコストが安く、商品を用意することも簡単というわけだ。
明らかにいかがわしさを感じるが、このような行為は、法律的に見て問題ないのだろうか。
東京都や神奈川県などの青少年健全育成条例(青少年の健全な育成に関する条例)によると、青少年から着用済み下着等を買うことは条例違反であり、購入者は30万円以下の罰金となる。「だ液やふん尿」なども罰則対象だ。しかし、ここにはマスクは含まれていない。
古物営業法での摘発の可能性もあるが、マスクは古物と考えられるものの、たとえば匿名でアカウントを次々と作っては消していた場合などは、実際問題として摘発は難しいだろう。
「うちはバイト禁止で、遊ぶお金がなくてかなり厳しい。マスクならどうせ毎日使うし、捨てているものでお金が入るなら、別にいいと思うけど」とある女子高生が言っていた。このような感覚の若者も多いかもしれないが、前述のようにたとえ摘発などにつながらなくても、使用済みマスクの販売にはやはりリスクが伴う。
使用済みマスクを販売していると、直接手渡しで販売することを求めてくるケースもあるという。手数料、オプション代などとして確かにその分収入は増えるだろうが、知らない相手と直接会うことのリスクは間違いなく大きい。性被害などに巻き込まれる可能性は十分に考えられるだろう。
また、「マスクをした顔が写っている写真を」などと写真を求められることもあるが、写真には個人情報が写り込んでいる可能性がある。自宅や行動範囲などを知られるとストーカー被害などにつながるリスクがあるので、くれぐれも気をつけるべきだろう。
コロナ禍の中、生活が苦しくなったり、つながりが持てずに孤独に苛まれたりしている人が増えている。このような投稿を見て気軽にバイトのように始めてしまうと、犯罪被害などに巻き込まれる可能性があるので、くれぐれも注意してほしい。
高橋暁子
ITジャーナリスト、成蹊大学客員教授。SNS、10代のネット利用、情報モラルリテラシーが専門。スマホやインターネット関連の事件やトラブル、ICT教育に詳しい。執筆・講演・メディア出演・監修などを手掛ける。教育出版中学国語教科書にコラム 掲載中。元小学校教員。
公式サイト:https://www.akiakatsuki.com/
Twitter:@akiakatsuki
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