NTTは5月12日、2021年度通期の決算を発表。営業収益は前年度比1.8%増の12兆1564億円、営業利益は前年度比5.8%増の1兆7685億円と、増収増益の決算となった。同社の代表取締役社長である澤田純氏によると、いずれも過去最高の数字を記録したとのことで、当期利益は初めて1兆円を超えたとのことだ。
また今期はNTTドコモやNTTデータなど、グループ会社の再編を実施したこともあって、セグメントの見直しも実施。グループとなったドコモとNTTコミュニケーションズ、NTTコムウェアが「総合ICT事業セグメント」、統合を打ち出したNTTデータとNTT Limitedが「グローバル・ソリューション事業セグメント」へと変更がなされている。
そして新しいセグメント別の収益、利益を確認すると、総合ICT事業は行政による携帯料金引き下げの影響が2021年度で2700億円に達するなどモバイル通信収入が減収となったものの、スマートライフ事業の好調やコスト削減の進展などで増益を達成。またグローバル・ソリューション事業は、国内外の旺盛なデジタル化需要を捉えたNTTデータが好調で大幅な増収増益を達成している。
その上で、澤田氏は2022年度の業績予想を公表。外部環境の大きな変化がある中でも、グループ企業のシナジーを生かして全てのセグメントで増収増益を見込むとしており、営業収益は対前年比4436億円増の12兆6000億円、営業利益は対前年比514億円増の1兆8200億円と、やはり過去最高の業績を予想するとしている。
総合ICT事業セグメントではコンシューマー向けの料金引き下げ影響がまだ続くものの、「2022年と2021年は影響が残るが、ずっと影響が続く訳ではなく、下げ止まりが来る」とドコモ代表取締役社長の井伊基之氏は説明、法人事業やスマートライフ事業の成長により、ドコモ単独でも増収増益を図るとしている。
また、グローバル・ソリューション事業セグメントでは、NTT Limitedが半導体不足の影響により受注してもサービスを提供できない状況が続いているが、それを織り込んでも増益を達成する見込みだという。
さらにNTTは、今回の決算に合わせて新たな人事も発表。現在NTTの副社長を務める島田明氏が新たに代表取締役社長に就任予定で、澤田氏は代表権のある会長職に就任するという。島田氏は、澤田氏が副社長の時代から8年間にわたってNTTの改革に携わっているのに加え、グループ内外での経験を持ちバランスが取れた経営者であると澤田氏が判断、交代に至ったとしている。
その一方で、澤田氏は引き続き代表権を持ち続けることになる。この点について澤田氏は、自身が進めたNTTデータとNTT Limited、ドコモとNTT Com、NTTコムウェアの再編がまだ途上であることから、その責任を共有するためだとしている。
他にもNTTは今回、取締役や執行役員などの女性比率を3割以上にする、社外取締役を1人増員するなどの大幅な人事見直しを図っている。大規模な人事を決行した理由について澤田氏は、1つにコロナ禍などによる環境の変化に対応するべく、リモートワークを主体とするなど新しい経営スタイルを確立するため、そしてもう1つに、総務省幹部への接待、会食に関する問題が取り沙汰されたことを受けてガバナンスを強化するためだとしている。
なお今回の決算説明会では、ドコモの2021年度通期決算についても説明がなされており、NTT ComやNTTコムウェアを含めたグループ全体での営業収益は前年度比0.2%減の5兆8702億円、営業利益は1.2%増の1兆725億円と、減収増益の決算となっている。
ドコモ単独での業績は料金引き下げの影響が大きく響いたものの、コスト削減と成長領域がカバーして減収増益となっている。一方でNTT Comは減収減益となるが、井伊氏によるといずれも業績予想の範囲内だとしている。
さらに井伊氏は2022年の業績予想についても説明。営業収益は対前年比1138億円増の5兆9840億円、営業利益は対前年比115億円増の1兆840億円と、引き続きの増収増益を目指すとしている。中でも井伊氏がその成長ドライバーは法人事業とスマートライフ事業であり、2025年度にはそれら2つの事業で、コンシューマー向け通信事業に並ぶ収益を創出したいとしている。
法人事業に関しては、NTT Comとリソースを統合して事業強化とコスト効率化を図ることにより、営業利益は対前年比で274億円増の2790億円を目指すとのこと。また井伊氏は中小企業向けのビジネス強化に向けて営業体制を強化する方針も打ち出しており、NTT Comに各地域の支社を設けるのほか、新たに「ドコモビジネスソリューションズ」を設立、ドコモから5000人の人材をシフトして地域のデジタル化支援に向け営業強化を図るという。
もう1つの成長領域であるスマートライフ事業について、井伊氏は伸びをけん引するのがマーケティングソリューションと金融、決済の2つになると説明。前者についてはドコモの会員基盤を生かした顧客公道データを活用、プロモーションや商品開発の支援をしてメーカーのバリューチェーンを支える事業を展開するとしているほか、後者については「dポイント」の会員プログラムの見直しを図り、周辺の金融サービスとの連携を加速してマネタイズを図っていく方針だという。
他にも規制緩和が見込まれるヘルスケア、メディカル領域や、XRなどの領域で新規事業に力を入れていきたいとしており、XRに関しては事業本格化のため10月に独立した事業会社を設立。リソースを集中投下してプラットフォーム的要素を持つXR事業を早期に開始したいとしている。
一方のコンシューマー通信事業については、5Gの契約数が1153万に達したことから、2022年度はそのおよそ倍となる2250万契約を目指すとのこと。5Gの実力をフルに発揮できるスタンドアロン(SA)運用によるサービス開始に向け5Gの顧客基盤を拡大し、SA運用を生かるサービスを提供したいとしている。
その5Gエリアについても、5G向け周波数帯のみで整備された「瞬速5G」の基地局数が4月28日時点で2万局を達成、今後は4G向けの周波数帯を転用し、2年間かけて人口カバー率90%を実現したいとしている。
従来5G向け周波数帯にこだわってきたドコモが4G周波数帯の転用に方針転換した理由について、井伊氏は政府の「デジタル田園都市構想」により5Gエリアの早期拡大要請が来ていることから、「4Gの利用を組み込まないと間に合わない」と答えている。
また楽天モバイルが求めているプラチナバンドの再割り当てについて、井伊氏は再割り当てによる周波数の最大利活用には賛同していると回答。ただし既存顧客への影響やコストなど、具体的な再編に向けた方法の議論に道筋を付けないと、その結論が出ないのではないかとも答えている。
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