ディーカレットDCPは4月27日、同社が事務局を務めるデジタル通貨フォーラムにおいて、デジタル通貨「DCJPY」を活用した企業決済の実証実験を実施したと発表した。
海上輸送で発生する滞船料などの決済を題材に1月、三菱商事とNTTが実施。商材はバイオマス燃料だったという。
今回の実証実験は、貿易取引の各種料金の決済における課題にデジタル通貨とスマートコントラクトで寄与するための技術の検証と、導入効果の確認などが目的。
契約当事者間の作業の重複、請求から決済に至るオペレーションの煩雑さ、資金化までの長いタイムラグといったさまざまな課題の解決を目指し、二層構造デジタル通貨プラットフォームの実験環境を構築。実験環境上でのスマートコントラクトの作成、実績データの登録と関係者間の確認、滞船料などの費用の自動計算、デジタル通貨での自動決済の検証を実施したという。
なお、決済の利用、検証を担当した三菱商事とNTTのほか、両社が産業DX推進を目的に設立した共同出資会社であるインダストリー・ワンが全体企画、基盤の構築、実験の推進、評価などで協力。ディーカレットDCPが二層構造デジタル通貨発行のためのシステムを提供し、デジタル通貨は検証用のものを利用したという。
ディーカレットDCPは、今回の実験により、スマートコントラクトを用いてDCJPYで決済する仕組みが有効に働くことを証明し、付加領域にプログラムを組み活用を望む事業者と二層構造プラットフォームによる連携が可能であることを確認したという。
また、スマートコントラクトを活用した貿易取引の契約自動執行により、案件の登録から決済までをひとつのシステムで一貫して実施できること、企業間決済に関連する作業について最大約80%の削減が見込めることも判明したという。スマートコントラクトを用いたDCJPYによる決済を行う仕組みは、日本の中小企業から大企業まで、共通する企業間決済業務において効果を発揮し、特に決済件数が多く、業務の複雑性が高い企業ほど効果を得やすいと説明している。
加えて、既存の電子マネーなどを用いたデジタル決済は、自社の経済圏の拡大や経済圏内での顧客ロイヤルティの向上などを狙うために相互運用性が制約されることが多いが、DCJPYは共通領域を通じた相互運用性を確保するため顧客の利便性が高まるとともに、企業にとっても経済圏をまたいで提供できるサービスを新たに構築するためのインフラとして機能するという。
自社開発したアプリの一部にDCJPYの機能を組み込み、これを共通領域に連携させる“Digital Payment as a Service”ともいえる形で、デジタル通貨決済サービスを自らの広範なサービスの一部のように提供することもできるとしている。
日本におけるデジタル通貨の実用性を検討する取り組みとなるデジタル通貨フォーラムは、日本を代表する銀行や小売り、運輸、情報通信など、広範な分野にわたる80社以上の企業や銀行、自治体、団体、有識者が参加。オブザーバーとして関係省庁や中央銀行が参加している。
デジタル通貨フォーラム内の分科会の1つとなる産業流通における決済分科会は、ブロックチェーンを採用したデジタル通貨やスマートコントラクトの知見を幅広く獲得するための実証実験を企画、推進すべく、デジタル通貨フォーラムメンバーとして活動しているという。
なお、デジタル通貨のDCJPYは、円と完全に連動する「円建て」のデジタル通貨として設計。当面の間、民間銀行が債務として発行することを前提としており、かかる債務は「預金」と位置づけられると想定して検討を進めている。名称は仮称となっている。
DCJPYを発行、送金、償却するために、共通領域と付加領域の2領域を設けており、二層構造デジタル通貨プラットフォームという仕組みで連携。
付加領域は、さまざまなニーズに応じたプログラムの書き込みが可能であり、これによりDCJPYをモノの流れとリンクさせた形で決済に用いることなどができるとしている。
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