拡張現実(AR)はまだ、ほとんどの人にとってはスマートフォンでわずかな時間、お手軽でクールな体験ができるものにすぎない。気軽な社会的交流に注力しているSnapのような企業にとって、ARは理想的なものだった。しかし、Snapの最新のAR開発者向けツールは、これまでよりもはるかに長い時間を仮想空間で過ごす世界を指し示している。NianticやApple、Google、Qualcommなど、他の多くの企業も狙っている分野において、Snapは成功を収められるのだろうか。
Snapには、2021年にリリースした開発者向けARスマートグラスがすでに存在する。先頃、ホバリングできる自撮り用小型ドローン「Pixy」も発表した。同社のコンピュータービジョンエンジニアリング担当ディレクターであるQi Pan氏によると、PixyはいくつかのARエフェクトも備えるという。
Snapは、スマートフォンとスマートグラスを連携させるロケーションベースARや複数人による共同作業用のARを試してきたが、現在積極的に取り組んでいるのは、都市全体に広がる可能性のある大規模な体験を実現することだ。Snapは、ダウンロード方式のレンズ機能だけでなく、クラウドストレージ方式のレンズ機能を利用することで、レンズ1つで無限のコンテンツになり得るサービスを生み出そうとしている。同社は、ロンドンのゾーン1で大規模な実験を開始しており、360度カメラでスキャンして、域内のどこでもAR体験を実現できるようにしている。
より狭い地域用の、Snapのロケーション、ランドマーク向けARも、同様の仕組みで機能する。これらは現地でQRコードをスキャンするとアクティベートされる仕組みだ。しかし、より規模を大きくして、クラウドを利用できるようにすれば、ユーザーは都市グリッド内のどこでも、好きなときにこれらのレンズ機能を使用することができる。レンズは、Snapのアプリのほか、Snapのレンズ機能を実行するサードパーティーのアプリ内でもアクセス可能だ(これはDisneyなどの企業がすでに実現しており、写真をフィルター加工する単純なレンズエフェクトを利用している)。Legoとの提携では、長時間使用するタイプのARレンズを使って、複数人でブロックを組み立てることができる。こうしたツールは、Snapがより創造的でメタバースじみた体験を模索できる可能性を示唆している。
Snapの開発者が作成した、ミニアプリ形式の既存のレンズ機能(同社によると、2021年12月頃に3.5兆回だった閲覧回数は、現在では5兆回に増えているという)と、次に登場するツールの違いは、極めて大きいようだ。Snapは、現実のさまざまなチャネルのように、複数の恒久的な世界を実現することを目指している。それは、Nianticが世界規模のロケーションベースARテクノロジー「Lightship」を通して追求してきたことと本質的によく似ている。AppleやGoogle、Microsoftといった企業はすでにロケーションベースのARを模索しており、Metaも現在、都市をマッピングしてAR対応となるように取り組んでいる。
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