中国電力は4月4日、「完全自立型EVシェアリングステーション」の実証事業を開始すると発表した。同日発表した太陽光発電設備を導入する法人向け新サービス「ソーラーカーポートPPAサービス」とともに脱炭素社会の実現に向けた取り組みを加速する。
完全自立型EVシェアリングステーションは、太陽光とEVをかけ合わせた新たな取り組み。電力系統から完全に分離、独立したソーラーカーポートと蓄電・制御システムを一体化し、太陽光発電電力のみで運用するEVステーションに、カーシェアリングサービスを組み合わせた、世界初の実証事業になる。
広島県立広島産業会館(広島市南区比治山本町12-18)の駐車場に設置し、約5年間実証事業を実施する計画。広島県が実施場所などを提供し、ソーラーカーポートの開発・提供をパナソニックが担う。オフグリッド型蓄電・制御システム、可搬型蓄電池システムの開発・提供をAZAPAが請け負うといった4者での取り組みだ。
カーポートには日産自動車の「リーフ」とマツダ「MX-30 EV MODEL」を1台ずつ導入。昼間はソーラーカーポートから蓄電池へ給電し、夜間は蓄電池からEVへ給電することで、太陽光発電だけでEVを賄う。
中国電力 代表取締役社長執行役員の清水希茂氏は「企業や自治体においては、カーボンニュートラルへの取り組みが加速している。中国電力でも地域をカーボンニュートラル化するため、グリーン電力やEVソリューションサービスなどの提案活動を展開しており、今回の完全自立型EVシェアリングステーションもそうした活動の一つとして加えていきたい」とコメントした。
一方、広島県知事の湯崎(右側は「大」が「立」)英彦氏は「今回の実証事業は、県民や事業者のEV利用、太陽光発電設備の普及促進につながると思う。中山間地域などではガソリンスタンドが閉鎖され、いわゆるスタンド空白地域が増えている。完全自立型EVシェアリングステーションが増えれば、そういった地域でもエネルギーの利用ができる。さらに災害時の電源として、EVも移動できる電源として利用できる。今回は可搬型蓄電池も備え、これも災害時に使える。いろいろな効果が期待できる」とレジリエンスでの利用も見据え、その活用度の高さを評した。
実証実験は、5年程度を予定しており、ソーラーカーポートには蓄電池、制御システム、非常用コンセントなどを装備。デジタルサイネージも備え、発電状況などを常に見えるようにしているという。
中国電力では2月1日に、カーボンニュートラルに向けた取り組みをサポートする「脱炭素ソリューション推進室」を設置。3月31日には村田製作所とのグリーン電力などの供給に関する契約を結ぶなど、脱炭素化に向け大きく舵を切っている。中国電力 販売事業本部脱炭素ソリューション推進室室長の前原利彦氏は「カーボンニュートラルをいかに実現できるか、中国電力ではさまざまな切り口を用意し、企業をサポートする取り組みを進めている」と現状を説明する。
「なかでも先行している取り組み」(前原氏)と言われるのが太陽光だ。専用の再生可能エネルギー発電設備を開発し、発電する「グリーン電力」について、自家消費による「オンサイト型(PPAサービス)」と電力系統を介した供給の「オフサイト型(コーポレートPPA)」をそろえる。
同日に発表した、ソーラーカーポートPPAサービスも、そうした太陽光発電による取り組みの1つ。「工場などの広い屋根や敷地を持たない、高圧・低圧の法人向けに提供していきたい」(前原氏)と、太陽光発電の導入を幅広くサポートする。
ソーラーカーポートPPAサービスは、中国電力がソーラーカーポートの設置、メンテナンスを担い、ユーザーはソーラーカーポートで発電した電気に応じて月々のサービス料金を支払うだけで、太陽光で発電した電気を使用できるというもの。初期投資がいらず、建物に太陽光発電設備を設置することが困難な場合でも導入できることがメリットだ。
4台と2台の2タイプをそろえ、契約期間は15年。契約期間満了後は、ユーザーに無償譲渡する。提供エリアは、岡山県、広島県、山口県(見島を除く)、兵庫県の一部、香川県の一部、愛媛県の一部になる。
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