2021年、NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)に約250億ドル(約3兆円)が費やされた。同年の世界全体での映画興行収入総額より数十億ドル多い。これほど印象的な数字にもかかわらず(あるいは、だからこそ)、NFTの評判はいまひとつだ。NFTの異様に高い価格に混乱する人や、NFTは手の込んだデマで、やがて崩壊する詐欺だと思い込んでいる人が多い。NFTの購入者を、「右クリックで保存」で無料で入手できるJPEG画像にわざわざ金を払うまぬけだと批判する人もいる。
だがこうした批判も長くは続かないだろう。2022年に入り、良くも悪くも、NFTは進化している。
人気のNFTコレクション「Bored Ape Yacht Club」(BAYC)を制作しているYuga Labsは先週、メタバースプロジェクトに向けて4億5000万ドルを調達し、評価額は40億ドルと発表した。1年前であれば、これは荒唐無稽に聞こえただろう。だが今では、これはNFTが次の段階に進む前兆だ。NFTはアートコレクションからエコシステムに移行しつつある。
Bored Ape Yacht Clubは、プロフィール画像向けにデザインされた1万点のサルの画像のNFTコレクションとして有名になった。2021年4月に1点200ドル(約2万4000円)で公開されたが、現在NFTマーケットプレイスのOpenSeaで入手できる最も安いBored Apeでも価格は30万ドル(約3700万円)だ。BAYCや、CryptoPunks、CyberKongz、World of Womenなどのコレクションの価格はすべて数万ドルで、ステータスシンボルになっている。今や、SNSのプロフィール画像にBored Apeを使うのは、重要な会議にロレックスの腕時計をしていくのと本質的に同じ行為だ。BAYCはオフラインのブランドにもなった。ファッションブランドと提携し、雑誌の表紙を飾り、作家のNeil Strauss氏がBAYCについての書籍を執筆中だ。
Yuga Labsは最近、オリジナルの仮想通貨「Ape Coin」を発表した。それはBAYCの所有者たちにとって重要な瞬間だった。「Web3」狂乱の前兆の中、BAYCのNFT所有者は無償で1万94トークンのApe Coinを受け取った。現在のレートで、サル1匹当たりおよそ11万8000ドル(約1400万円)に当たる。Yuga Labsにとってさらに重要なのは、Ape Coinが110億ドル(約1兆3000億円)という時価総額を持つ暗号資産だということだ。これは、同社が構築しているエコシステムに、多量の金が投じられることを意味する。
ティーザー動画によると、同社のメタバースプロジェクト「Otherside」は、プレイヤーが自分のNFTをゲーム内のキャラクターあるいはアバターとして使えるMMORPGゲームになるようだ。リークされたYuga Labsのプレゼン資料によると、同社は2022年、メタバース内の仮想の土地の販売で1億7800万ドル(約220億円)の売上高を見込んでいる。詳細は不明だが、Yuga Labsの最高経営責任者(CEO)、Nicole Muniz氏はThe Vergeに対し、Othersideを発展させるために、複数のゲームスタジオと提携していると語った。先述のプレゼン資料によると、Othersideは「他のすべてのメタバースを淘汰するメタバース」になるという。
アートコレクションからエコシステムへの進化の中心にあるのは、Web3というコンセプトだ。これは、暗号資産推進者がインターネットの次期バージョンと呼ぶものだ。Web1は90年代の静的なウェブページで、Web2は、ユーザーをクリエイターに変えたソーシャルメディア革命の時代。Web3は、ブロックチェーンに統合されたインターネットで、Web2を継承するが、ユーザーが作成したコンテンツとデータを適切に所有できるようになる。
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