Microsoftが複合現実(MR)ヘッドセットの次期モデル「HoloLens 3」の開発を2021年半ばに打ち切り、結果として同社のメタバース戦略が混乱に陥っているとBusiness Insiderが報じた。また、Microsoftの2画面デバイス「Surface Duo」の情報で定評のあるWindows CentralのZac Bowden記者は、この「Android」搭載デバイスの第3世代モデルについて、2022年中に発売されることはなさそうだと伝えている。
もし事実なら、これらの延期は必ずしも悪いニュースではないというのが筆者の見解だ。製品が期待に応えられないのであれば、機能や戦略をむやみに投入してうまくいくのを願うのではなく、いったん立ち止まって仕切り直すのは悪いことではない。
まずHoloLensについては、仮に報道の通り2021年に中止または延期されていたとしても、これが初めてではない。同社は2017年、年内に発売を見込んでいたHoloLens 2の開発を中止してHoloLens 3に取り組むと報じられた。2019年にHoloLens 2が発売された時には、複数の重要な改善が加えられていた。
Microsoftは当初、HoloLensを企業および一般消費者向けと位置づけていたが、コストの面で企業向けであることにすぐに気が付いた。HoloLensの生みの親であり、人工知能(AI)とMRのテクニカルフェローを務めるAlex Kipman氏は、HoloLensが一般消費者向けの商品になるという青写真をインタビューやプレゼンテーションで繰り返し提示している。しかし、現在遅延している、HoloLensの技術を用いた米陸軍用ヘッドセットに関する220億ドル(約2兆5000億円)の契約は、MicrosoftがHoloLensに関する戦略を適切に定めている例といえるだろう。
企業よりも消費者に関心のある一部の従業員にとって、それが苛立たしいことは間違いない。これまでに何百人もの従業員が同社を退職し、消費者向けにAR、仮想現実(VR)、クロスリアリティ(XR)の提供に取り組むMetaなどの企業に転職したと報じられているが、その背景にはこうした葛藤があるのかもしれない。
HoloLens 3に関する報道について、Microsoftの広報担当者は次のようにコメントしている。「Microsoft HoloLensは、MRやメタバースなどの新たなカテゴリーに向けた当社の計画において、依然として不可欠な部分だ。当社は引き続き、HoloLensおよび今後のHoloLens開発に取り組んでいく」
Microsoftが本当にHoloLensとSurface Duoの開発を加速させるのではなく減速させるのであれば、筆者は称賛を送りたい。どちらのデバイスもユーザー体験という点で満足できる水準に達しておらず、次期モデルを投入する前に改善が必要だと思われるためだ。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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