「TikTok」の動画を見ていて、自分がADHD(注意欠如・多動症)だと思い込んだことはないだろうか。ひょっとすると、実は子どものときからそうで、自分が注意力散漫だったり忘れっぽかったりするのは、それが原因かもしれないと最近になって気づいたということはないだろうか。
あるクリエイターがADHDに関するTikTok動画で、大人になってからそう診断される気持ちを語っている。
「ポンコツの1989年式シボレー・シェベットに乗ってるところを、ちょっと想像して。マニュアルのね」、とそのクリエイターは語る。「ある日、Tesla車の記事が目にとまって、試乗しにいったら、凄くスムーズに動くの」
彼女の例えによると、他の人は、調子が悪くなったときに車を直すもっといい「道具」を持っていたし、そもそも以前からずっとTeslaに乗っていた、というのだ。残念ながら、そんな風にTeslaを手に入れること、つまりADHDと診断されて治療を受けることは、必ずしも容易ではない。診療を受けられない、コストがかかる、医師が検査に回してくれないといったことが障害になる可能性がある。
メンタルヘルスに関する認識が高まり、遠隔医療と医療へのアクセス向上の需要が増えてきたことを受けて、オンラインでのADHD診断と治療が注目されている。専門家による簡単な診察で(場合によっては、オンラインの問診だけで)迅速に診断できるとうたわれている。ADHDの診断を下せる医療供給者を探す長いプロセスが不要になり、何週間も、ときには何カ月も予約で待たされることもなければ、法外な治療費を請求されかねないという事態にもならない。確かに、オンラインのADHD診断は重大な欠陥を補うものだが、決定的なリスクも伴う。誤診の問題だ。
ADHDは、ごく一般的な精神疾患の1つであり、そのほとんどは子どもの時期に診断され、特に男子に多い。通常は、不注意もしくは注意力散漫とされるタイプ(例えば、物事に集中したり作業を完了したりすることが日常的に困難)、異常に活動的または衝動的なタイプ(常に落ち着かない、衝動的に行動する)、その両方が見られるタイプがある。
児童がADHDと診断されることは珍しくなく、その場合は精神刺激剤が処方されることも多いので、子どもがむやみにADHDと診断されていると憂慮する声もある。その一方、最近ではメンタルヘルスにまつわる偏見を晴らそうとする試みがソーシャルメディアに現れている。TikTokなどのプラットフォームでユーザーが体験談を共有し、支援が得られるように互いを励まし合っている。それを見た一部の大人が、子どもの頃に見落とされた可能性があるADHDの治療を求めるようになってきたのだ。見落とされたのは、学校である程度成績がよかった、うまく振る舞うためのサポート十分にあった、あるいは「異常に活動的」とまではいえなかったからである。
ADHDであっても、少女や女性は異常に活動的とは見えにくい。それが、女性の体をもって生まれた人のADHDが見過ごされやすい原因の1つとも考えられている。ADHDに関するNPOのChildren and Adults with Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder(CHADD)によると、女性が自身をADHDだと認識するのは、自分の子どもが遺伝率の高い精神疾患であるADHDだと診断されてからの場合が多いのだという。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス