しかし、1回の遠隔医療診察や1回の検査で誰かをADHDと診断することは、標準的な治療では「例外」だ、とAmbrose博士は言う。臨床診断では、医療提供給者が患者と面会して家族歴を精査し、非言語の手がかりを観察する。そうした手順を経て、標準的な診療が実践される。1回限りの短時間の遠隔医療診察だけでは、完全な形にならない可能性がある。
Hafeez博士は、オンライン診断の精度(懸念事項については後述する)に「懐疑的」である一方で、メンタルヘルスの治療に対する需要が高まっていることも認識しており、迅速な診断を提供するサイトについて、より詳細な検査の前段階となる「予備的な」ステップとみなしていると語った。
ADHDを診断するのに、1回の診察だけでは不十分だ、と同博士は言う。「ADHDに関わるすべての併存疾患が考慮されているわけではないからだ」
ADHDと診断された人は、他の精神疾患や併存疾患も患っていることが多い。BMC Psychiatryに掲載された2017年のレポートによると、例えば、ADHDの成人患者が不安障害を患っている可能性は最大50%に上る可能性があるという。ADHDを患う成人や子どもには、うつ病や双極性障害などの気分障害もよく見られる。
ADHDと診断されて治療を受けているが、実際には別の精神疾患を患っている患者をよく見かける、とHafeez博士は話す。双極性障害を見逃して、ADHD治療薬を与えることは、特に危険だ(Cerebralは双極性障害を治療できるとしている)。
Hafeez博士によると、「ADHDの治療に使用する刺激剤は、実際に、気分障害を患う人に非常に激しい気分反応を引き起こすことがある」という。その結果、躁病やうつ病、さらには自殺念慮の原因となる可能性もある。一般に、双極性障害を患う人は、一般の人と比較して、自殺による死亡のリスクが10倍~30倍高くなることもある。
そのため、Hafeez博士は、双極性障害の疑いもある患者がADHDの治療を求めた場合、慎重に対応している。双極性障害は、ADHDと誤診される可能性がある病気の中で最も危険なものであると同時に、不安、うつ病、学習障害に次いで最も一般的な疾患でもある。
遠隔医療が拡大し続け、自分自身のメンタルヘルスに関心を持つ人が増える中で、治療へのアクセスと診断の安全性も改善されていくというのが理想だ。
「人々が苦しみ、傷ついているということを心に留めておきたい。現状、必要な治療を受けるには3カ月~6カ月待たなければならないというのは、合理的でも公正でもない」とAmbrose博士。「医療制度に携わる者として、そのニーズに対応できていないのは非常に残念なことだと思う」
本記事に記載している情報は、教育と情報提供のみを目的としており、健康や医療に関するアドバイスではありません。病状や健康の目標について質問がある場合は、必ず医師やその他の資格ある医療供給者に相談してください。この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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