仮想現実(VR)の触覚グローブを家で初めて使ってみたが、ぎこちない体験となった。ニットのグローブを手にはめ、プラスチック製の指先を調整して、大型のプラスチック製バッテリーパックの裏にホルスターをていねいにねじ込む。「Oculus Quest 2」のコントローラーを、グローブ上のスロットにすべり込ませる。それから数分間、VRの中でロボットの部品をつまみ上げたり、ボタンを押したり、レバーを引いたりしてみた。妙な感触で、細かいケーブルに引かれて指がつっぱる感覚は、まるで操り人形のようだった。仮想の炭酸飲料の缶を触ったりつぶしたりすると、カチッという感じの抵抗を感じる。指でやっていることを疑似的に感じることはできた。
筆者が装着した触覚グローブ「SenseGlove Nova」が、一般のOculus Quest 2ユーザー向けではないことは明らかだ。第一に、価格が5000ドル(約57万円)もするし、第二に、Oculus Quest 2の通常のアプリやゲームでは使えない。筆者も、SenseGlove Novaで動くデモ用アプリを別途ダウンロードしなければならなかったし、グローブをBluetoothでOculus Quest 2にペアリングするには、その前に開発者モードに切り替えるという手順を要した。SenseGlove Novaは、基本的にWindowsのVRおよび拡張現実(AR)ユーザー向けに設計されているが、Oculus Questシリーズのヘッドセットでも動作する。
だが、触覚グローブは現在のVRが持つ、かなり特異な問題を浮き彫りにする。万人が有用性を認め、実際に仕事の役に立つには、新しい操作方法はどう進化すればよいのかという問題だ。
現在のVRの世界は娯楽ゲーム用のヘッドセットが大半で、長時間の装着には向いていない。付属するコントローラーは、家庭用ゲーム機のゲームパッドに似たものを手首に装着する形が主流だ。Oculus Quest 2のコントローラーも、VRコントローラーとしてはおなじみの形で、アナログスティックとボタンが付いていて、指の動きをある程度トラッキングするが、用途はゲームや、せいぜいフィットネスで、仕事には向いていない。Oculus Quest 2など一部のVRおよびARヘッドセットでは、コントローラーを使わないハンドトラッキングが登場しているものの、物理的な入力なしでの高精度操作は、まだ実現が困難だ。Microsoftの「HoloLens 2」では、登場から2年以上たった今も、ハンドトラッキングしか使われていない。HoloLens 2の開発者であるAlex Kipman氏は、振動などの物理的なフィードバックを、次に必要なステップだととらえている。
Facebookの親会社であるMetaも考え方は同じで、今後の研究の取り組みについて、既に詳細を発表している。ニューラルインプットを感知できる触覚フィードバックを備えたリストバンドや、小さな空気袋を利用して触覚を再現する大型の触覚グローブなどの開発に取り組んでいるという。HaptXなどの企業は、さまざまな圧力の感覚を生み出せる高度な触覚グローブを既に開発しているが、こちらは価格が桁違いに高い。HaptXのグローブは、筆者もまだ試していない(ぜひ試してみたい)。今まで試した中では、それに最も近いと思われるのがSenseGlove Novaだ。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」