VR用触覚グローブ「SenseGlove Nova」を体験--夢の技術、完成度はまだまだ - (page 2)

　SenseGlove Novaは価格を引き下げ（相対的に）、しかもワイヤレスで、これは他の大がかりな触覚グローブにない点だ。細かいコードが組み合わせてあり、それが指を動かすときに引っ張り感を与える。スマートウォッチやスマートフォン、ゲームコントローラーがブルブルするときのような抵抗や振動を、その引っ張り感で再現している。家に届けられたとき、グローブは小さなブリーフケースに入っていた。見た目は異様で、少しかさばり、手に固定するクリップが付いている。スキーグローブに、バッテリーパックとハードウェアを編み込んだといった印象だ。

　適切なモーション感知を加えるためには、依然としてVRコントローラーが必要だ。筆者が併用したOculus Quest 2のコントローラー用ブラケットは、プラスチック製の半円状で、そこに「Touch」コントローラーをはめる。コントローラーをはめると、グローブはやや重く、奇妙に感じられた。また、正しくセットアップしたうえでアプリを起動するには、グローブをはめたり外したりするか、誰かに手伝ってもらわなくてはならない。

OculusやSteam VRでトラッキングをするのに必要なアダプター。装着するとグローブが重く大きくなってしまう。
提供：Scott Stein/CNET

ものに触っているように感じるかどうかは微妙なところ

　アプリを起動して物体をつかもうとした時の感じは、以前Oculusを試したときとよく似ている。結局、ただのハンドトラッキングでも似たような動作をするのだ。違いが分かるのは、仮想のものに接触したときだ。指が引っ張られるように感じられる。まるで、操り人形使いに、糸でつながった指を操られているような感じだ。加えて、カチッという感じの振動を感じる。ちょっと故障しているようにも感じるし、接触しているとも感じられる。仮想世界にある物体との同期性は、短いデモの間、完全でないこともあった。

　ものの端とか、物体の細かな様子を「感じられる」という感じではない。目隠しをされたら、この感覚が何を表しているのか見当もつかないだろう。現在の設計では、ハンドトラッキングだけで何も感じない世界に比べれば役に立つフィードバックシステム、といったところだ。トラッキングにOculus Questシリーズのコントローラーを使うと、ヘッドセット内蔵のカメラで指先と手を追うよりは、トラッキング精度も向上する。

Oculus Quest 2とさまざまなデバイス。
提供：Scott Stein/CNET

遠からず、もっとスマートになるのか

　VRに関して、「仕事」に使うとか、ヘッドセットをコンピューターの拡張モニター的に使うと考えたとき、筆者が最も懸念しているのは、この不格好なコントローラーよりマシな形になるのかどうかということだ。コントローラーを外してハンドトラッキングに切り替えても機能するが、理想的ではない。

　HTCなどの企業からは、例えばVRでハンドトラッキングを拡張するリストバンドタイプの「VIVE Wrist Tracker」が2022年に登場するが、ビジネス向けに設計されているものが多く、振動による触覚にも対応していない。Facebook/MetaのAR/VR向けリストトラッカーが登場するのは、まだ数年先だろう。「Horizon Workrooms」のような実験的な仕事用アプリが、ノートブックやキーボードやディスプレイをVR上で再現しようとしているのは感心するが、うまく機能しないことが多い。

　触覚グローブは、VRの夢のひとつだ。古くは、筆者が子どもの頃に読んだ1990年代のサイバーパンク小説に登場したし、「レディ・プレイヤー1」のようにVRの未来を描いたユートピアもしくはディストピアでも決まって使われている。とはいえ、デモをしばらく体験したのち、プラスチックとケーブルの間の隙間に注意しながら、苦労してニット地から手を引き抜いたときには、正直ほっとした。触覚グローブは、まだ、理想の域には達していない。SenseGlove Novaのようなデバイスを見る限り、正解にたどり着く道を模索するには、まだまだ前途多難のようだ。