回転寿司チェーン「くら寿司」を運営するくら寿司は12月8日、寿司の安定供給や新たなユーザー層の獲得などに向けた新戦略として「スシテナブル」と「6つのチャレンジ」発表した。
「安くて美味しいお寿司の永続的な提供」を通じて、継続的な成長の実現を目指すための施策だ。
その取り組みのひとつが、11月1日に設立した水産専門会社「KURAおさかなファーム」と「原魚」卸売開始だ。テクノロジーを使った水産養殖を手がけるウミトロンと協業し、同社が開発したAIやIoT技術を活用したスマート給餌機などを活用している。
AIやIoTを積極的に活用することで、漁業者の作業負担の軽減とより効率的な養殖、そして「収入の安定」、さらには水産業のデジタル化により、生産地域の活性化にもつながる取り組みを目指す。
この活動の第一弾として、同社が養殖を手掛ける「オーガニックはまち」を12月9日より全国のくら寿司で販売するほか、同時に原魚の卸売として、一部小売店での販売を開始する。
オーガニックはまちは、国際的基準を満たす日本初のオーガニックフィッシュとしてオーガニック認定機構(OCO)が策定した認証を取得。通常の天然魚と比べて、疲労感や日常生活の体調の改善が期待できるといわれる「オルニチン」が3倍含まれるという。オルチニンはシジミに含まれることで知られるが、「オーガニックはまち3切れで味噌汁一杯分のオルニチンがとれる」(くら寿司取締役 広報・マーケティング本部長の岡本浩之氏)と説明した。
新たなユーザー層の獲得として同社が注目しているのは、1990年代後半に生まれた、10代から26歳になる「Z世代」だ。「スマホネイティブ」でTikTokなどSNSや動画による情報発信と拡散力を持ち、流行や消費の新たな担い手になると見て、Z世代が「来店したくなる店舗作り」に力を入れる。
その一つが、12月9日にオープンしたグローバル旗艦店「くら寿司 原宿店」だ。東京・「ラフォーレ原宿」の向かいと原宿の中心に位置し、店舗面積は通常の2倍(212坪)の大型店舗だ。同店舗は“世界一映える寿司屋”を目指し、日本を代表するクリエイティブディレクターの佐藤可士和氏がプロデュースした。
「大手回転寿司チェーン初」となるクレープマシーンを導入し、2色2層のクレープ生地を実現。「映える」商品を提供するほか、「バルコニー」や「窓際カウンター」でもスイーツを食べられるようにするなど、シェアしたくなる店づくりをしている。
コロナ禍において、厳しい状況が続く飲食業界の中でくら寿司は、全体で過去最高となる売上1476億円、経常利益で31.7億円の黒字決算と絶好調だ。グループでは新規に約50店舗の出店を行っている。
時短営業の影響を受けた1年だったにもかかわらず、日本国内で大きく伸ばした要因に点について、(1)スマートくら寿司の全国推進、(2)くらランチ/持ち帰り。(3)(鬼滅の刃など)話題の企画――の3点にあると分析した。
スマートくら寿司は、予約からチェックイン、会計に至るまで、店員を介さず行えるシステムだ。食べた皿の枚数は、小型カメラとAIを活用して、店員を介さず正確な枚数を自動計算する。
くら寿司 取締役副社長の田中信氏は、「日本国内においては、感染対策としてのスマートくら寿司の前倒し導入により、過去最高の約125億円を設備投資した。これは前年に比べて32%増となる。世界中がコロナ禍に苦しんでいる中、将来へ向けてこれだけの規模の戦略投資を実施できたのは、当社の強固な財務基盤によるもの。今期以降、結果として現れてくるものと確信している」と自信を見せた。
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