10月25日から5日間連続で開催された本誌主催のウェブセミナー「CNET Japan FoodTech Festival 2021」。テクノロジーの側面から食の価値や安全性の向上、食に関わる社会課題などの解決を目指す各社の取り組みを紹介するこのイベントは、今回で3回目。2020年に続き2回目のオンライン開催となった。
昨今取り沙汰されることの多いフードロスの問題。食料の無駄をなくすための活動はさまざまな領域で行なわれているが、生産現場における無駄の解消に取り組んでいるのがリデンだ。4日目の前半に登壇した同社は、LINEをベースにしたデジタルツールによって、高齢者の多い農業従事者であってもストレスなく扱えるようにし、フードロスの解決とより効率的な流通を目指している。その取り組みの詳細について、代表取締役の上原郁磨氏が解説した。
現在、世界において1年間に発生しているフードロスは13億トン、日本国内だけでも同612万トンにもおよぶとされている。上原氏によれば、生産、加工、小売、消費という4つの段階それぞれでフードロスが発生しており、そのうち生産のところだけを見ても国内で年間150~200万トンものロスがあるという。
リデンがフォーカスしているのは、まさにその生産現場だ。一般的に知られている生産現場のフードロスの例としては、余剰生産品や、収穫した作物のサイズ・見た目が流通品としては適さない規格外品がある。味などの面では全く問題ないにもかかわらず、通常の流通ルートでは販売できないため仕方なく廃棄している。これを減らすことでフードロス削減につなげようというわけだ。
そこでリデンでは、ロスになる作物の買取を独自に行い、必要としている加工業者や小売店に販売する仕組みを作り上げることで、フードロス削減を目指すことを考えた。
ただし、作物の買取をするための新たなICTの仕組みをいきなり導入したところで、生産現場ですぐに利用してもらえるとは限らない。まず、高齢者の多い農業従事者のITリテラシーの問題が1つ。作物が本当に安全なものなのか、どのように育てられたのか、という生産状況の可視化をしなければ、安心して売買できないという課題もある。さらに、買い取ったとしても、その後実際に必要としている事業者を見つけるマッチングまでの時間がかかってしまえば、作物が傷んで結局廃棄せざるを得なくなる。
余剰作物の買取とフードロス削減の実現には、これら「ITの活用」「生産状況の可視化」「マッチングまでの鮮度保持」という3つの課題のクリアが必須。そのためにリデンが提供しているのが、スマートフォン1つで農業経営をサポートするというサービス「agmiru」だ。
agmiruは、主に農業従事者の経営管理のためのツールで、作業管理をはじめとして、農作業に関連する資材の購入、気象情報や市況情報の収集、農薬・肥料辞典、青色申告をはじめとする各種申請、といった機能が盛り込まれている。最大のポイントは、それらの機能をコミュニケーションツールのLINEを経由して利用できるところだ。
たとえばLINEで「作業管理」と入力するだけで、その日の作業内容などを対話式で入力して情報登録できる。これによって農業従事者の「ITの活用」という課題を克服している。
「生産状況の可視化」については、資材の購入、資材の使用、収穫した作物の納入・売上という各ステップにおいて、従来は手書き書類で手続きしていたところを、agmiruを介して行うことで電子化、データとして蓄積できるように進めている。
こうして収穫物の生産状況や出荷時期が可視化されることで、余剰作物が生まれやすいタイミングの把握が可能になる。さらに販売先となる事業者を探しやすくなるほか、販売するためにどんな設備が必要となるのかも明確になる。ここでリデンが手を組んだのが、DENBAという企業だ。
DENBAは、独自特許技術として、水を共振させ水分子を活性化させる技術を用いた食品鮮度保持サービス「DENBA+」を展開しており、輸送用の冷蔵コンテナ内に特殊な電場を発生するパネルを設置し、氷点下でも不冷凍保存を可能にするサービス等を提供している。このDENBA+が設置されたコンテナに作物を保管すると、酸化防止や制菌作用を働かせることができ、本来の鮮度を1カ月程度保持できるとのこと。冷凍し続けるわけではないため電気代が少なく済み、電場を発生するパネルも安価なことから、低い導入コストもDENBA+の利点だ。
これまでのフードロス解決の一手法としては、農家から消費者に直販するなどの「流通経路のスリム化」が一般的だった。それに対してリデンは、DENBA+を活用し「時間的な制約を取り払う」ことを目指しているのが肝。保管可能な時間を長くとれれば、その分販売先とのマッチングの時間に余裕をもたせられる。ある意味時間稼ぎが可能になることで、作物の「需給調整」の役目も果たせると上原氏は語る。
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