今回からは、ワーケーションに出かける前の準備や具体的な手続きについて紹介したいと思います。
まずは持ち物について。目的地をどこにするかという最大の決定事項は次回詳しく書きますが、ここで紹介する「持ち物」は仕事に関してどこに行くにしろ必ず持っていった方がいいというものです。以下をベースに、実際には「ワーケーションの本質とは?導入に二の足を踏む『企業の本音』」で紹介したWORKの種類や、旅程や旅先に合わせて必要なものを追加していってください。
仕事をスムーズに進めるために以下のアイテムは最低限持って行くことをおすすめします。
以上があれば、3泊〜1週間程度は支障なく仕事ができると思います。特にケーブルやコネクター類は現地での調達が難しい場合も少なくないので、普段使っているものを漏れなくすべて持っていくことをおすすめします。
また電波の悪いところだとスマホの充電が普段より早いスピードでなくなりますし、旅先では充電できるコンセントが見つからないことも多いので、スマホの充電式バッテリーを満タンにして最低1つは携帯しておくと安心です。さらに長期になるのであれば、筆者自身は旅先から書類の発送等が必要になった時に備えて会社の封筒や印鑑なども念のため荷物に入れておきます。
特に自分自身の経験上、意外に重要だったのがイヤホンの「ノイズキャンセリング機能」でした。都市部より地方に出かけた方が騒音は少ないイメージですが、田舎には田舎特有の「音」があり、意外にうるさいのです。過去に五島列島で夏にワーケーションをしていた際、窓を開け放ってオンライン会議をしていると、「セミの声や草刈りの音がすごいよ!」とメンバーから言われてしまったので、慌ててノイズキャンセリング機能で定評のあるイヤホンを通販で取り寄せました。
充実したノイズキャンセリング機能があるだけで、オンラインミーティングができる場所の選択肢は一気に広がり、釣りをしている合間に船の上からでも、まわりに子どもがたくさんいるビーチやプールサイドでも支障なくミーティングに参加できるようになりました。難しい話をする重要な会議や情報が外に漏れてはいけないミーティングもあるので、「いつでもどこでも」とはいきませんが、カジュアルなミーティングであれば、イヤホン1つでずいぶん機動性は高まりました。
また過去には、旅先でコピーやスキャン、紙の出力が必要になり、急遽コンビニの複合機を使うことになった際、USBメモリがたまたまバッグに入っていて助かったという場面もありました。紙への出力が必要な場面が想定されるのであれば、現地に自由に使える複合機がないことも十分にありえるので、旅に出る前に印刷していくことをおすすめします。
持ちものリストの中にある「ペン」と「ノート」は、旅先で電波があまり入らないけれど景色がすごくきれいな場所を見つけ、そこで集中して考えごとをしたくなった時のために、みつめる旅のメンバーはバッグに常備しています。ワーケーションをデジタルデトックスの機会を捉えて意識してPCやスマホから離れて過ごすのもアリです。
ワーケーションのベテランの中には、とあるものを3点セットとして旅の間はいつでも持ち歩いているという人もいます。外資系大手IT企業でマーケターとして働くAさんの場合、ワーケーションを「WORK100%」として捉えているがゆえの3点セットだそうです。
「僕自身はワーケーションにVACATIONはないと思っています。自分が知らない世界を経験したり、そこで得た知識を仕事に活かしていくことまでWORKに含めて考えるなら、起きている時間全部がWORKじゃないかと。僕の場合、専門がマーケティングで、いろんな問題をITの力で解決していくことが会社のミッションなので、ワーケーション先でも地域の人と話しながら『ITで役に立てることはないか?』と常に探しています。だから旅先にはPC、スマホ、名刺の3点セットは必ず持っていきます。滞在中は基本的にずっとONの状態なんです。漁師さんと鮭の遡上を見にいくときも、地域のお祭りに参加しているときも、いつでも仕事のアンテナが立っています。つまり五感を通して入ってくる情報がすべてWORKに関連づいているわけです。だから、僕にとってワーケーションは100%WORKなんです」
Aさんの例によく表れているように、ワーケーションの持ち物は、ワーケーション中のWORKをどのように捉えるかによって決まります。「ワーケーション中も仕事で成果を出せる人が『出発前』に決めている5つのこと」で紹介した5つの問いについて、ある程度出発前に自分なりの答えを出しておくと、旅先についてから「あ〜、あれを持ってこればよかった!」と後悔することが少なくなるかもしれません。
とはいえ、ワーケーションにはトライアルアンドエラーがつきものです。最初から何もかも完璧にやろうとせず、過ごし方も持ち物も毎回少しずつチューニングしながら、自分に最適なスタイルを見つけていきましょう。
(書籍「どこでもオフィスの時代」に関する情報はこちら)
鈴木円香(すずき・まどか)
一般社団法人みつめる旅・代表理事
1983年兵庫県生まれ。2006年京都大学総合人間学部卒、朝日新聞出版、ダイヤモンド社で書籍の編集を経て、2016年に独立。旅行で訪れた五島に魅せられ、2018年に五島の写真家と共にフォトガイドブックを出版、2019年にはBusiness Insider Japan主催のリモートワーク実証実験、五島市主催のワーケーション・チャレンジの企画・運営を務め、今年2020年には第2回五島市主催ワーケーション・チャレンジ「島ぐらしワーケーションin GOTO」も手がける。
「観光閑散期に平均6泊の長期滞在」「申込者の約4割が組織の意思決定層」「宣伝広告費ゼロで1.9倍の集客」などの成果が、ワーケーション領域で注目される。その他、廃校を活用したクリエイターインレジデンスの企画も設計、五島と都市部の豊かな関係人口を創出するべく東京と五島を行き来しながら活動中。本業では、ニュースメディア「ウートピ」編集長、SHELLYがMCを務めるAbemaTV「Wの悲喜劇〜日本一過激なオンナのニュース〜」レギュラーコメンテーターなども務める。
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