多くの企業は、人々がスマートグラスを使って没入感のあるメタバースの中で互いにつながれるようにしようと競い合っている。しかし今のところ、手元のスマートフォンとの連携を可能にする共通の仕組みはほとんどない。Qualcomm Technologiesが発表した拡張現実(AR)開発者向けプラットフォーム「Snapdragon Spaces XR Developer Platform」は、スマートフォンと将来のスマートグラスをつなぐ役割を担うことを目指すもので、オープンなウェブプラットフォームをサポートすることを重視している。
ただし、問題もある。今のところ、Snapdragon SpacesはQualcommのチップを採用する一部のハイエンドの「Android」搭載スマートフォンにのみ対応し、「iPhone」には対応していない。
Qualcommのチップはすでに、「Oculus Quest 2」「Microsoft HoloLens 2」「HTC VIVE Focus 3」といった既存の拡張現実(AR)/仮想現実(VR)ヘッドセットの大半に搭載されている。Qualcommはここ数年、VR/ARデバイスとスマートフォンの連携を試みてきた。Googleのように独自のチップの開発に乗り出す企業も増えており、こうした連携の実現に向けた関心が高まっている可能性がある。Facebookから社名を変更したMetaや、MicrosoftなどARやVRを手がける各社は、ヘッドセットとスマートフォンにおけるデバイス間の互換性確保に取り組んでおり、Qualcommの動きは、こうしたヘッドセットとスマートフォンの接続互換性を実現させることを最重視しているようにみえる。
ただし、Snapdragon Spacesはチップではない。ARとVRの分野では、ハードウェアがQualcommの強みだった。同社はSnapdragon Spacesについて、スマートグラスをより多くのスマートフォン向けアプリと連携させるために必要になるソフトウェアと位置づけているようだ。対応するSnapdragonベースのハイエンドスマートフォン(ただし同社は、どのチップがサポート対象になるのかをまだ明かしていない)とプラグイン式のスマートグラスを接続できるようになるほか、既存のアプリストアでアプリを提供することも可能になる。スマートグラスはスマートフォンを拡張するデバイスになり、スマートフォンの処理能力とセルラー接続を利用してユーザーの体験を強化できる。
レノボ、Motorola、OPPO、小米科技(シャオミ)が最初のハードウェアパートナーとなり、Snapdragon Spacesを使ったスマートフォン接続型ARグラスを2022年に投入する予定だ。レノボの「ThinkReality A3」が最初の商用デバイスになる。QualcommはDeutsche Telekom、T-Mobile、およびNTTドコモとも提携し、対応するスマートグラスの登場に合わせて各社の通信網で機能をテストするという。
Qualcommはまた、ハンドトラッキング技術の開発企業Clay AIRの買収を発表した。物体認識を手がけるWikitudeの買収と併せて、一連のAR対応グラスを動作させるのに必要なあらゆる機能の開発に求められるツールをできる限り取り込む狙いだ。Snapdragon Spacesは、ゲームエンジンの「Unreal Engine」および「Unity AR Foundation」「Unity MARS」に対応し、VRやARの標準規格「OpenXR」に準拠している。
QualcommはSnapdragon Spacesのリリースに先立ち、早期パートナー数社とこのソフトウェアをテストしている。「Pokemon GO」や「Pikmin Bloom(ピクミンブルーム)」などのゲームの開発元であるNianticは、5月に発表した独自のソフトウェア開発プラットフォーム「Lightship」を通じ、Qualcommのプラットフォームを利用して新たなAR体験を提供するとしている。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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