Facebookの内部告発者であるFrances Haugen氏が10月25日、ロンドンを訪れ、オンライン安全法案について議論する英議会の委員会で証言した。FacebookのプロダクトマネージャーだったHaugen氏が公の場に姿を現すのは、同氏がFacebookの内部資料をリークしたのは自分であることを明らかにして以来、1カ月弱ぶりとなる。このリークを機に、Facebookはさらなる批判にさらされ、特にシステムの安全性に注目が集まっている。Haugen氏は内部告発者として名乗り出た後、米議会でFacebookの「モラルの崩壊」について証言した。
今回の英議会での証言は、同氏がリークした内部文書をめぐる報道が世界中で過熱するなかで行われた。世界最大のソーシャルネットワークであるFacebookについては世界規模で監視の目が強まっており、Facebookにとどまらず、ソーシャルメディアプラットフォーム全体を規制すべきだという声が高まっている。規制の導入に向けた取り組みは、米国よりも、むしろ欧州や英国の方が先行している状況だ。
Haugen氏は英国の議員からの質問に2時間半にわたって答え、英国のオンライン安全法案(Online Safety Bill、旧称:Online Harms Bill)とからめながら、これまで公の場で発言してきた内容を繰り返した。同法案では、ユーザーの安全を守るという名目で、英国のメディア監視機関Ofcomがソーシャルメディアプラットフォームの規制当局となる。
同法案が可決されれば、規制に違反した企業は責任を問われ、罰金の支払いやサービスの停止を命じられるほか、極端な場合には役員が刑事告発される可能性もある。同法案はFacebookの最高経営責任者(CEO)Mark Zuckerberg氏を追い詰めるものになると思うかという質問に対し、Haugen氏は「Markが英国の動向を気にかけていないとは思えない」と答えた(Zuckerberg氏は2018年に英議会での証言を正式に要請されて以来、英国を訪れていないとみられる)。
「英国がソーシャルプラットフォームの規制をめぐる議論をリードする姿勢を示したことに、大きな期待と誇りを感じる」とHaugen氏は述べた。
Facebookに関しては、元社員のSophie Zhang氏も先週、英議会の委員会で証言した。Haugen氏はZhang氏と同様に、ソーシャルメディアプラットフォームに期待するリスク評価の内容に関して、英議会は具体的なガイドラインを作成すべきだと訴えた。「リスク評価の基準がなければ、Facebookが中身のないリスク評価報告書を提出してくることは間違いない。これまでも情報の提供を求められた際、Facebookは繰り返し大衆を欺いてきた」とHaugen氏は言う。
Facebookのコンテンツポリシー担当バイスプレジデントのMonika Bickert氏は25日に声明を発表し、オンライン安全法案の進展を歓迎した。「Facebookは有害なコンテンツに関するルールを定め、定期的に透明性レポートを発行しているが、当社を含め、企業が独自の判断で行動しないように業界全体の規制が必要だという主張には賛成だ」と述べた。
オンライン安全法案に対する同氏の見解と併せて、25日に行われたHaugen氏の証言の要旨を以下に紹介する。
最近のリークにより、Facebookの安全性ポリシーや人工知能(AI)システムは米国以外の国々にも影響を与えていることが明らかになった。例えば英国では、地域固有の攻撃的なスラングをシステムが理解できないために、嫌がらせ行為が見逃されるといったことが起こり得るとHaugen氏は言う。エチオピアのように6つもの主要言語があり、Facebookがそのうちの2言語しかサポートしていない場合、Facebookがユーザーの安全を確保することはさらに難しくなる。
Haugen氏は、Facebookのアルゴリズムが社会にもたらす害悪にも言及した。例えばミャンマーやエチオピアでは、誤った情報がFacebook上で拡散された後に政治的暴力が起きた。これはFacebookのエンゲージメントに基づく評価システムが引き起こす恐れのある深刻な結果の「序章」にすぎないとHaugen氏は警鐘を鳴らす。
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