相変わらずプライバシーの問題を抱え、米議会による調査を受けているFacebookだが、ハードウェア開発には進捗があったようだ。先日、スマートディスプレイ「Portal+」の第2世代と、バッテリー駆動の新モデル「Portal Go」が発売された。物理的なカメラシャッターと持ち運び用のハンドルがついた、バッテリー駆動のスマートディスプレイが出ると同社の担当者から聞いたとき、私は楽観的な気持ちでいた。少なくとも、持ち運び可能なスマートディスプレイという新しいことにFacebookが挑戦していると思ったからだ。
しかし、Portal Goを1週間使ってみた今、この製品をお勧めするのは難しい。アプリは限られており、操作感も直感的とはいえない。その上、Facebook自体がプライバシーの問題を抱えているとなると、つい他の選択肢を勧めたくなる。この199ドル(約2万2600円)のPortal Goに1つでも驚くべき点があれば、相応の称賛を与えるつもりでいたが、そのような点はなかった。Portal Goは高価な上に、必要性がない。もちろん面白い点や機能がないわけではないし、最新のガジェットを見送るなら、その理由は知っておくべきだろう。というわけで、詳細を見ていこう。
ほとんどの人と同じく、私も「タブレットを買えばいいのでは」という疑問を持った。PortalにはAmazonの音声認識システム「Alexa」が内蔵されているが、Googleの「Nest Hub」やAmazonの「Echo Show」のような、スマートホームに特化した製品ではない。基本的にはチャットとリモート会議のためのデバイスだ。この疑問をFacebookに直接ぶつけたところ、返信が来たので全文を紹介したい。
1つ目の大きな違いは、Portalは人と人をつなぐことに焦点を合わせたデバイスであり、自宅での使用を前提に最適化されている点です。超広角スマートカメラを搭載することで快適なグループ通話を実現し、会話が長続きしやすいというメリットがあります。また、FacebookアシスタントとAlexaを内蔵することで、キッチンなど両手がふさがりがちな場所でのニーズが高まっている、ハンズフリー機能も実現しています。
Portal+については、かねて仕事に最適なデバイスだとお伝えしてきましたが、Portal Goも仕事用のセカンドスクリーンとして活躍します。ノートPCを使わずに同僚とつながり、メモをとり、資料を閲覧できるので作業効率が上がります。オーディオ面も優秀です。ビデオ通話用にチューニングされていますが、通話していないときは高性能なスピーカーになります。
Portalは、家族で共有できるデバイスとして開発されました。基本的にタブレットは個人用の端末で、家族の誰もが好きなときに利用できるとは限りません。Portalの「Household(家族)モード」には、この製品の設計思想がよく表れています。Portalは家族全員が共有できるコンピューターで、誰もが通話に利用でき、複数のユーザーを設定すればユーザーごとに体験をパーソナライズすることも可能です。
Portalがタブレットよりも共有デバイスとして優れているという主張は一理あるだろう。私の周りを見ても、子供がいる知人のほとんどは自分のタブレットを子供に触らせたくないと思っている。これは、子供向けのタブレットが市場にあふれている理由でもある。大きなラバー製の保護ケースと子供向けのアプリ、ペアレンタルコントロール機能を備えた持ち運び可能なタブレットは、家族のニーズに完璧にマッチした製品だ。
Portal Goは、複数のユーザーを設定することでユーザー別に体験をカスタマイズできるため、子供が誤って上司とZoomでつながってしまう心配がない。こうした子供用プロフィールは、スマートディスプレイの間ではまだ普及しているとは言えないが、タブレットでは一般的だ。例えばサムスンの「Galaxy Tab」シリーズには「Samsung Kids」モードが搭載されている。「iPad」には高機能なキッズモードはないが、「アクセスガイド」というモードがあり、タッチスクリーンをロックして子供が特定のアニメ番組だけを見られるようにすることで、親は仕事に戻ることができる。
スペックについては、画面の解像度はサムスンの「Galaxy Tab A7」(2000×1200ピクセル)やAmazonの「Fire HD 10」(1920×1200ピクセル)の方が優れている。どちらもAmazonやGoogleのスマートホームアプリをダウンロードすれば、スマートホームの管理にも十分使える。カメラのスペックはタブレットやディスプレイによるが、メガピクセルや視野角の点で言えば、Portal Goはほとんどの機種に負けている。
デザインの領域では、Facebookに軍配が上がる点もある。まず、持ち運び可能なスマートディスプレイという発想がいい。これは新しい挑戦だ。Portal Goはタブレットではないし、そのようにも見えない。背面には持ち手がついているので持ち上げやすく、重さは3ポンド(約1.4kg)と十分に軽量だ。どっしりとした下部から上に向かって次第に細くなるデザインも安定感があり、かつスマートだ。
布地で覆われた本体の中には、5Wのフルレンジスピーカーが2基、20Wのウーファーが1基内蔵されている。音楽やビデオを気軽に楽しむ程度なら、音量は十分だ。上部に物理的な音量ボタンがあり、直感的に操作できる点も気に入った。
もっとも、特にタブレットに折りたたみ式のカバーをつけ、立てた状態で画面を見られるようにしている場合、Portalの方がデザインの面で優れているとは言い切れない。Portal GoのディスプレイはShow 10のように回転もしないし、上位バージョンのPortal+のような傾斜もつけられない。それでもデザインは悪くないし、家事をしながら家のあちこちに持ち運び、ブラウザのブックマークから好きなYouTubeチャンネルを観るのは楽しく、その間はスマホやタブレット、ノートPCを別の用途に活用できた。
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