スクエニがゲーム開発資料をサルベージする狙い--SFC「ワンダープロジェクトJ」開発秘話 - (page 4)

過去の資料を整理することは未来の開発につながる

 三宅氏は、このように過去の資料がきちんとアーカイブされ、それを当事者が詳細に振 り返られることのメリットは大きいという。過去の資料を単にライブラリ化するだけではなく、資産化して有効活用するのは、現在の開発者にとっても有益な資産になりえると語る。

 資料は、開発終了直後ほど「もういらないのでは」と考えがちとしながらも、時間が経過するほど、当時の開発体制や開発のありかたがわかるもので価値を持つものと主張する。さらに、対外的に発表することの価値もあり、広報支援にもつながるとしている。また、昨今では遠隔で仕事をすることにより、会社への帰属意識が持ちにくいという課題もあるが、会社のルーツを明文化することにより、人事支援にも価値を持つものとした。

過去資料の整理の目的・ゴール
過去資料の整理の目的・ゴール

 三宅氏はAI開発に従事していることで知られているが、2004年にスクウェア・エニックスに入社した際、これまでどのようなAI開発が社内で行われていたのか、その資料がなく、さらには先輩に聞こうとしても、すでに忘れていたり退職していたりと、これまでの流れがわからない状態だったという。三宅氏曰く「大海の上の小舟の状態」と表現するような、どちらに進んでいいのか、それがいいともダメとも言われないという苦しい時期があったことを振り返る。

 そして「これまでの流れがわかるということは、これからの流れもわかる」とし、表面的な見えにくい深い流れがわかることは、開発をするうえでも重要だと説く。社歴の長いベテランの方であれば頭のなかにあったり感覚的に理解していることでも、それを誰でもわかる形にしておくことは、社内教育や新人教育の観点からも大事だとした。

 その会社におけるゲーム開発の流れは外側からは見えないところにあり、アクセスがしにくいものにもなっていると指摘。それを改善して、これまでのゲーム開発の流れを開発者目線でまとめて、次の開発者に伝えていくことは、次の目的や目標がバトンを渡すように見えやすくなる。そして、それぞれの会社のルーツを探すことは、社内で還元することはもとより、社外でもファンにも還元することにつなげていくことも大事だとした。

開発にもたらす価値
開発にもたらす価値

 また、資料を資産に変えことについてはコストがかかるものではあるが、それに見合う価値があることを証明していくことで、この活動が継続的に続けられるとも語った。

資料を資産へ
資料を資産へ

 三宅氏は講演をまとめる形として、過去の資料を整理することは未来の開発につながること、また過去の資料からは、今は何ができて何ができないのかという、現在の位置を知ることもできること、未来を予測することについては過去の流れからさかのぼるのがいいとした。

 そして自分の仕事について、たとえ小さなものでもあっても会社全体の方が見える形で残しておくことは、それが20年経過したころには、技術の流れを後に伝える大切な資料になりえるもとし、残しておくことが大事だとした。

お伝えしたかったこと
お伝えしたかったこと

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