8月24日、オンラインで開催されたゲーム開発者向けイベント「コンピュータエンターテインメントデベロッパーズカンファレンス2021」(CEDEC2021)において、「資料を資産へ、スクウェア・エニックスにおけるゲーム開発資料発掘プロジェクト [Wonder Project J編]」と題した講演が行われた。
この講演は、スクウェア・エニックス社内で進められている過去資産のサルベージプロジェクト「SAVE」の活動についてと、そこで得られた開発資料をもとに、1994年に発売されたスーパーファミコン(SFC)用ソフト「ワンダープロジェクトJ~機械の少年ピーノ~」に関する企画や開発エピソードが語られた。登壇したのはスクウェア・エニックス テクノロジー推進部 リードAIリサーチャーの三宅陽一郎氏と、第四開発事業本部ディビジョン1(プロデュース&制作)シニアマネージャー/プロデューサーの藤本広貴氏。
冒頭は三宅氏からSAVEについて説明があった。過去資産のサルベージプロジェクトとして、開発経験者を含めた3名が主要メンバーとして担当。それぞれに本業があり、専任はいないながらも個々に長所を活かしつつ、連携をしながら進めているという。
スクウェア・エニックスをはじめ、旧スクウェアと旧エニックス、さらにタイトーやクエストといった各社の資産があり、1953年に発足したタイトー以降、およそ70年分の過去資料があるとされる。それらは複数の倉庫に分散されて保管されており、ダンボール1万箱以上あるという。このなかには事務資料も含まれており、開発関連資料はだいたい1割強程度。管理リストに書かれているのはざっくりとした部署と内容となっているため、管理開始時期や前後の内容から見当をつける必要があり、新・旧・部・社も混在しているという。
そして資料など目的となる対象が、どの倉庫どの段ボールに入っているかがわかるように、中に入っているもののリスト化や、全体写真に個別写真、紙資料のPDF化など、内容物の可視化を行い、段ボール単位でディレクトリ管理。今後は迅速な手配を目指しているという。
そもそもこのプロジェクト立ち上げのきっかけは、2019年夏のこと。三宅氏は、研究に必要な技術資料を探すために、旧エニックスのデータを社内デジタルライブラリで調査したが、見つからなかったためアナログ資料を取り寄せることに。
しかしながら、詳細な倉庫管理情報がなかったため、1倉庫分まるまる取り寄せることになったという。そしてその内容物を確認したところ、開発者にとっては宝の山といえる資料があり、これはきちんと管理すべきという思いになったと語る。また、ゲームの資産管理における先行事例の調査や相談をしたことが、のちにSAVEの立ち上げにつながることとなった。
スクウェア・エニックスでは、基本的に全て段ボールで倉庫管理されているという。倉庫管理表には大まかな情報が書かれているものの、実際に段ボールの中がどうなっているのかは不明の状態にあるという。そして資産管理のための事前調査として、旧エニックス地下倉庫の段ボール群を運び込み、中身を確認した。
そこにあったのはゲームソフトやグッズ、仕様書、宣伝素材、個人資料、営業資料などなど……。さまざまな物が入っていたなかで、段ボールのなかに埃が詰まった状態のものも多く、あまり保存状態は良くなかったという。三宅氏は、おそらく旧エニックスの地下倉庫で保管されていたものが、旧エニックス本社ビルを畳む際に、そのまま段ボールに詰めて現倉庫に送ったとものと推察され、現状をきちんと把握している人もいない状況だという。
2019年冬には大まかな状況を把握し、過去の資料に関する取り組みや対応を検討。2020年春には社長へ直接プレゼンを行い、正式なプロジェクトとして発足したという。もともと細く長くプロジェクトを実行していこうと考えていたところで、新型コロナウイルスの影響により、全社的な在宅ワークの推奨などで作業が滞るほか、資料破棄の危機が想定されるなど、プロジェクトの進行に懸念点が出てくるようになった。
これまでSAVEについて、組織としては存在していたものの、社内広報活動はしていなかったことから、2020年秋ごろに社内向け報告会でSAVEの活動概要を報告。全社的にSAVEの存在が知られるようになったとともに、個人資料などの譲渡をお願いしたところ、SAVEのもとに資料が集まってきたほか、問い合わせや相談も入り始めたという。
2021年夏の現在においては、旧エニックス資料についてはデータ化・インデックス化が終了(タイトル毎の分類はまだできていない)。そして個人開発資料は散発的に依頼が舞い込む状況だという。三宅氏は、まだ膨大な資料が倉庫に眠っているとし、SAVEの活動はまだまだこれからの状態で、引き続き活動を続けていくとしている。
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