顔面にディスプレイを装着--メガネ型端末、TCL「NXTWEAR G」をレビュー - (page 3)

Scott Stein (CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル2021年08月05日 07時30分

スマートフォンで映画を見る

 想定どおりにTCLのAndroidスマートフォンで使用すると、操作のインタラクティブ性は若干上がるが、機能を瞬時に使えるかどうかという点での即時性は下がる。具体的にどんな感じか説明しよう。

 対応しているTCL製スマートフォンに接続すると、カスタムソフトウェアで、直接ミラーリングするか、あるいは「PC式」の特殊なレイアウトの横長モードインターフェースにしてスマートフォン本体をトラックパッドに設定するかを選ぶことができる。

figure_6
TCLのAndroidスマートフォンに接続すると、NXTWEAR G使用中にスマートフォン本体をタッチスクリーンに切り替えるかどうかをアプリ上で選択できる。
提供:Scott Stein/CNET

 PCモードの設定は、サムスンの「DeX」ドックソリューションでスマートフォンを使用したときのことを思い出させる。別モニターに出力する一方、スマートフォン本体がやはりトラックパッドになる。ただし、NXTWEAR Gではモニターが目の前にある点が異なる。自由にスクロールしてアプリを選択できるが、ディスプレイのデスクトップ領域のサイズに完全には最適化されていないアプリもある。Netflixなどのアプリは、小さい横長レイアウトで表示されることもあるが、動画を再生すると全画面モードになった(普通は小さいアイコンをタップすると全画面表示になる)。

 動画の視聴は快適だ。Netflixで「シェフのテーブル」シリーズを、YouTubeでDua LipaさんやThe Weekndさんなどのミュージックビデオを視聴してみた。映画や動画の再生こそ、NXTWEAR Gの本領だ。だが、太いつる部分に開いた小さい穴から流れてくるオーディオは、優秀とは言いがたかった。実用レベルではあるものの、一流の音質ではない。もちろん、いつでもヘッドホンを装着するという選択肢はある。

 交換可能なノーズチップが付属していて、分厚いNXTWEAR Gが少し浮いた状態で鼻の上に載る。そのおかげで、自分のメガネの上にしっかり合った状態でかけられた。その形でも十分に機能はするが、やはりもう少し改善されるとありがたい。これに比べると、「Oculus Quest」とMicrosoftの「HoloLens」の方が、メガネの上に装着するデザインは優れている。

 処方レンズ用として、磁石式の薄いレンズフレームも付属しているので、理論上はユーザー各自に合わせた処方レンズをNXTWEAR Gに装着できることになっている。だが、筆者は懐疑的だ。これまでも、スマートメガネの処方レンズについては、あまり恵まれてこなかった。極端な近視のせいで、大抵は対応しきれないのだ。

figure_7
MacBook AirのセカンドモニターとしてNXTWEAR Gを使うのは、意外にも快適だった
提供:Scott Stein/CNET

良い点

 NXTWEAR GのマイクロOLEDは鮮明だ。最初にノートブックで使い始め、しばらく使い続けた。十分以上に良好で、VRディスプレイをPCモニターモードで使うときと同じくらい良いと感じた。いや、それ以上かもしれない。

 メガネの周辺の視野から、まわりを見ることもできる。眼下でキーボードを打っている自分の手も、デスクの上にあるものも、腕時計やスマートフォンも見える。NXTWEAR Gをかけたまま、現実の世界も覗けるということだ。不思議な感覚だが、ノートブックの画面とNXTWEAR Gの画面を同時に見ることもできる(焦点距離は変わるが)。

figure_8
内側の部分がどれほど分厚いのか、この写真でお分かりいただけるだろう。
提供:Scott Stein/CNET

違和感のある点(眼前にモニターがある点を除いて)

 NXTWEAR Gは軽量だが、あくまでも比較すればというだけで、部分的には分厚いところもある。つるは極太で、自分のメガネの上にかけると違和感がある(当然だろう)。また、片方のつるからは、太いUSB-Cケーブルが出ていて、変な風に耳の後ろにぶら下がり、それが耳たぶに当たる。

 NXTWEAR Gでは、2Dの画面が固定の距離に投影されるだけなので、VRヘッドセットのように画面が空間に「固定」されているわけではない。頭を動かせば、画面もついてくる。それと同時に、周囲のオフィス空間も見えているので、頭を動かすたびに宙に浮いた画面の位置が変わると、方向感覚がよく分からなくなることがある。

figure_9
NXTWEAR Gを試用していた間はずっと、大体こんな見た目だった。
提供:Scott Stein/CNET

 同じ理由で、画面の端を見ようとして苦労することがある。現実世界のディスプレイを前にしているときのように、頭を動かしたりモニターやスクリーンに近づいたりしても、NXTWEAR Gの画面は眼前に固定されたままなのだ。画面の端を見たいときは、頭を動かすのではなく、眼球だけ動かさなくてはならない。前のめりになっても、画面は近づかない。

 もう1つ付け加えておきたいのが、顔面のNXTWEAR Gが高温になることがあったということだ。1時間以上装着し続けていると、フレームの上部がかなり熱くなり始めた。

これが最終的なスマートメガネの可能性か

 言われなくても分かっている。そもそも、なぜディスプレイを顔の前に装着するんだ、と問われるのも不思議ではない。だが、十分に優秀で携帯性も良く、最終的に快適で、値段も手頃になれば、試す価値はあるのではないだろうか。今後5年で、AR対応のスマートメガネという未来が本当にやって来るのだとしたら、NXTWEAR Gのようなメガネを便利な大スクリーンとしても使えるのは、確かにプラスアルファになるだろう。ホログラムを重ねて写し出すことが当たり前になる世界、そんな世界での暮らし方が確立するまでの、中間段階にもなりそうだ。TCLのNXTWEAR Gは、万能を目指しているわけではないが、現在のスマートメガネの姿をともかくも提示しているというだけで、十分に驚異的だ。

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画特集

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]