仮想現実(VR)ヘッドセットの「Oculus Quest」を装着した筆者は、部屋の中で、頭の大きな宇宙人たちに囲まれていた。彼らの頭が白と黒に点滅し、筆者は1人の宇宙人の方を向いて、目を凝らす。すると、ほどなく、その宇宙人の頭が爆発した。ほかの宇宙人の方を向くと、彼らの頭も爆発した。それから、部屋の反対側で点滅しているポータルマーカーを見つめ、筆者はその部屋から消えた。この一連の操作にアイトラッキング(視線追跡)は使用していない。後頭部のバンドの電極で筆者の視覚野を感知していたのだ。
David Cronenberg監督の映画「スキャナーズ」の、現実世界でのバーチャル版のようなものを実体験しているように感じた。だが、実際には、NextMindが開発したブレイン・マシン・インターフェース(BMI)のデバイスを試していただけだ。
冬の休暇に入る前、筆者は小さなパッケージが中に入った大きな黒い箱を受け取った。中身は、ヘッドバンド付きの黒い円形のデバイスだ。デバイスには小さなゴム足のパッドがところどころに配置されている。1年前のCES 2020で発表されたNextMindの399ドル(約4万2000円)の開発者キットは、多くの企業が目指しているもの、つまりBMIに焦点を合わせている。NextMindは、脳の信号を読み取って、注意を向けているものの追跡、物体の制御、あるいはそれ以上のことを目指しているのだ。
BMI技術の本当の潜在能力や可能性を理解するのは難しい。さらに、この分野のスタートアップ企業の多くは、さまざまなことを試みてもいる。2019年にFacebookに買収されたニューロテクノロジー企業のCTRL-labsは、手と指の入力を送信できるリストバンドを開発した。別の会社であるWearable Devicesも、手首で神経からの入力を感知する「Apple Watch」向けリストバンド「Mudra Band」を開発しており、2021年中に出荷を開始する予定だ。
筆者は1年前にそのMudra Bandの初期バージョンを装着し、Mudra Bandが指の動きを解釈したり、指を曲げる強さを大まかに測定したりできることを実際に確認した。さらに奇妙なことに、Wearable Devicesのテクノロジーは、装着者が指を全く動かしていないときにも機能していた。義肢装具のように、手のない人々を補助するのに応用できる可能性もある。
意欲的なNextMindは、同様の支援技術の道をたどることを目標としているが、ニューラルデバイスによって物理的な入力の精度を向上させたり、デバイスをほかの周辺機器と統合したりできる世界も目指している。Facebookの拡張現実(AR)とVRの責任者であるAndrew Bosworth氏は、同社が開発するニューラルインターフェースについて、3~5年以内に初期段階のものが実現すると考えている。これはいずれスマートメガネなどのウェアラブルデバイスと統合される可能性がある。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス