CES開催中のラスベガスで、いまだに驚嘆する場面というのは、そう多いものではない。思いつく数少ない例は、たいていOculusがらみだった。これまで出会う機会がなかったMojo Visionという会社がどんなものを見せてくれるのかも、全く予想していなかった。極小のディスプレイを作っていることは知っていたし、拡張現実(AR)コンタクトレンズの類を開発していることも知っていた。だが、CESの公式出展企業ですらなかった。そこに筆者が注目した理由を説明しよう。
ラスベガスにあるホテル「ザ・パラッツォ」のスイートの一室。テーブルに置かれたケースに、コンタクトレンズが1つ入っていた。レンズには何らかの回路が組み込んであり、中央に小さい点がある。手に取ってみた。話で聞いていたとおり、まぎれもなく、筆者がデモで見てきた中で最小の技術だ。
実際に目に入れてみたわけではない。頼んでも、まだ装着させてはくれないだろう。その代わりに手にしたのは透明なプラスチックの棒で、その先にコンタクトレンズが取り付けてあった。ぎりぎりまで目に近づけてのぞき込むと、目の前にスクリーンが写し出される。緑色に光る、ペン先ほどの点の中に、デモの文字情報がループしながら表示される。時刻や、スポーツの結果。天気。心拍数などの健康データ。友だちから届いたようなメッセージ。まるで、世界最小のスマートグラスが目の中にあるようだった。スマートコンタクトレンズ。これこそ、Mojo Visionが目指しているもので、まさに2020年にふさわしい技術といった感じだ。
「過剰に宣伝して、結果的に幻に終わってしまうような製品を展示するつもりはなかった」と語るのは、Mojo Visionの製品およびマーケティング担当バイスプレジデント、Steve Sinclair氏だ。同氏は、Appleで初代「iPhone」に関わった経歴を持ち、Motorola Mobility時代にはRick Osterloh氏(現在はGoogleのハードウェア部門責任者)のもとで、製品マーケティング担当バイスプレジデントとしてスマートウォッチの「Moto 360」や完全ワイヤレスイヤホン「Moto Hint」、そしてスマートフォンの「Moto X」を発表している。
Mojo Visionのチームには、Apple、Amazon、Google、Microsoft、Philips Healthcare、Zeiss Ophthalmology、Johnson & Johnsonなど技術系と医療系のさまざまな企業から人材が集まっている。「われわれは、世界初の、真のスマートコンタクトレンズを開発することに全力を挙げている。『真の』とは、長時間装着でき、装着者が必要とするときにARで情報を投影できるソリューションの機能をすべて組み込むという意味だ」、とSinclair氏は話している。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」