地方・中小企業に残る「紙&掲示板コミュニケーション文化」の課題と解決の糸口

福山耕介 (ワークスモバイルジャパン 代表取締役社長)2021年08月02日 12時00分
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 コロナ禍を機に加速したDX推進。日々さまざまな企業の成功事例が報じられており、大企業を中心にデジタルツールを活用した新しい働き方が実現しています。一方で地方・中小企業に目を向ければ、電話や回覧板での情報伝達、ホワイトボードでのスケジュール管理など、昔ながらの働き方を継続している企業も少なくありません。

 社会やビジネスシーンを取り巻く環境が大きく変化する中、そのような企業は今後生き残れるのか。地方・中小企業が抱える本質的な課題と、その解決の糸口はどこにあるのか。全国の中小企業を巡り、各社の課題解決に向けたコンサルティングを手掛けてきた、ワークスモバイルジャパンの代表取締役社長である福山耕介が解説します。

全国行脚で見えた、地方・中小企業に残る「紙&掲示板コミュニケーション」の現状と課題

 机にうず高く積まれた書類の山、受発注業務でフル稼働しているFAXプリンター、社員の予定がびっしりと書き込まれたホワイトボード――。新型コロナウイルス感染症が流行するより少し前、地方の中小企業への「LINE WORKS」普及を目指して全国行脚していた際に幾度となく目にした光景です。

 それまでエンタープライズやパブリックセクターの顧客を中心に受け持っていた私は、大きなカルチャーショックを受けるとともに、この働き方こそが日本のマジョリティであることを強く思い知らされました。

 紙やホワイトボード(掲示板)を使っている地方の中小企業では、1人の事務職員が全社員のスケジュールを管理しています。外出中の社員の予定が変わった際に、オフィスにいる事務職員に電話連絡が届き、ホワイトボードの内容を書き替えているためです。

 そして、社員の大半が外出している場合には、変更された予定を他の社員は知りようがないため、その事務職員を介して社内コミュニケーションが行われます。たった1人が情報のハブとなっており、その人がオフィスにいなければ、誰がどこで何をしているのかを誰もわからない状態なのです。

 部長や社長のデスクには、紙で提出された日報・月報が積み重なっています。大量の書類を一番下から見なければ取り組みの経緯を把握できないでしょうし、そもそも書類に目を通せていないような環境も多く目にしました。

 社員の採用・育成面にも課題が見えます。ある建設会社では、入社してすぐ部署に配属されて現場に赴きます。しかし、社内の連絡手段が電話しかないため、業務相談を円滑に行えなかったり、同期の繋がりを作れなかったりと、社内コミュニケーションへの配慮がなされていませんでした。そのため、せっかく人材を採用してもすぐに辞めてしまうケースが多くあったようです。

 このように、私が見てきた多くの地方・中小企業では、コミュニケーション不全を原因とする様々な課題を抱えていました。しかし、経営者自身が「課題」として捉えているケースはそう多くありません。何も変えずともキャッシュフローは回っており、また対面や電話でのコミュニケーションこそが社内外の信頼関係を成り立たせるための最善策だと思われているため、わざわざデジタルツールを活用して業務を効率化・改善する必要性を感じていなかったのです。

非効率なコミュニケーションに隠れた「売上の機会損失」

 たかがコミュニケーション、されどコミュニケーション。ビジネスの起点はいつもコミュニケーションです。言うまでもなく、会社は「人」で動いているからです。先述したようなコミュニケーション不全に起因する課題は、中小企業の場合は特に、企業の売上に直結しています。つまり、社内外のコミュニケーションを改善することで売上を伸ばせるケースが多く存在する、ということです。

 例えば、地方・中小企業において、一般社員と決裁者とのコミュニケーションが円滑でない場合、本来ならばすぐに契約に進める案件であっても、あっという間に1週間、2週間とタイムラグが生まれてしまいます。

 売上の立つ時期が「今月か、来月か」によってキャッシュフローの安全性を損なう恐れのある中小企業にとって、提案から契約までの間、毎回訪問したり、FAXを送ったり、原本をやりとりしたりするアクションは、当事者が「当たり前」に思っていても、客観的に見れば優先的に改善すべきものでしょう。

 このような場合に、もしビジネスチャットを導入していれば、たとえ決裁者が出張中でも稟議書をチェックすることができ、決裁者から提出者への確認作業も手もとのスマートフォンやタブレット端末で対応できます。さらに、ビジネスチャットを起点に電子契約を導入すれば社内外のコミュニケーションがより円滑化し、決裁が早まることでキャッシュフローが改善、資金を必要以上に借り入れるリスクが低減するはずです。

 こうした特定の作業だけでなく、社員間や外部パートナー、顧客とのコミュニケーションにもビジネスチャットを活用すれば、コミュニケーション効率は格段に向上します。そして、“電話の折り返しを待つ時間”や“移動に費やす時間”を他の業務に充てられるようになれば、従来よりも多くの案件を受注できるようになるでしょう。

 実例として、ワークスモバイルジャパンが提供する「LINE WORKS」を導入いただいた、機器開発やプリント基板の設計・製造などを手掛ける有限会社ケイ・ピー・ディーでは、部品メーカーや委託先工場などとのやり取りにLINE WORKSを活用したところ、導入前後で案件数・売上が2倍に増加しました。営業方法は変えていませんが、メールからチャットに移行したことで取引先とのコミュニケーションが迅速化し、社員のリソースが生まれたことで、業績向上に繋がっているそうです。

 また別の例として、ある税理士事務所では、40代のお客様が創業社長である70代のお父様から事業継承を受ける際にビジネスチャットを活用しました。一般的に事業承継は、税理士が間に入り対面で必要事項をまとめるため、完了までに2~3年以上かかります。そこで、LINE WORKSでのやり取りをご提案し、関係者全員(このケースでは3人)のトークルームでご対応いただいたところ、事業継承を完了するまでの時間を従来の3分の1程度にまで短縮できました。創業社長には「早く息子に会社を継いでもらい、息子なりの経営をしてもらいたい」という思いがあったようで、従来よりも早く事業継承できたことを丁寧にご連絡いただきました。

 そのほか、先述した「情報のハブになっている事務職員」の例では、LINE WORKS導入後、全社員のスケジュール管理(ホワイトボード管理)業務に費やしていた時間を、社員の動きを精緻に把握していたからこそできる、会社の働き方改革のアイデア提案に使えるようになったそうです。

 このように、人的リソースが限られる中小企業ほど、コミュニケーション改善が売上や働き方改革に与えるインパクトは非常に大きいのです。

中小企業経営者におすすめの「失敗しにくいデジタルツールの導入方法」

 何らかの課題意識を持っていて、デジタルツール導入の最適解を模索している経営者の皆さま、また、ここまでの話に共感いただき、デジタルツールを導入する利点をご理解いただいた皆さまに、私がおすすめする「失敗しにくいデジタルツールの導入方法」をお伝えします。

 簡潔に言えば、「まず簡単に使えるツールを導入して成功体験を積んでから、徐々に他業務に広げていく」方法です。そして、その最初の領域に最適なのが、ここまで述べてきた「コミュニケーション」。つまり、ビジネスの要であり、社内外で行う毎日のコミュニケーションを、対面での会話や紙ベースでのやりとり、メールや電話、FAXからビジネスチャットに置き換えることです。

 私は、業務に関する一部のオペレーションをデジタル化するだけでは本質的なDXに繋がらないと考えています。例えば、印鑑(ハンコ)をいきなりデジタル化した場合、従業員にPCやタブレット端末を貸与しても、デジタルツールへの馴染みが薄ければ、操作方法がわからずにメールや電話で問い合わせることになるでしょう。こうしたフローが発生するようでは、一部業務がデジタル化されただけでオペレーションは何も変わっていません。

 だからこそ、多くの人がプライベートでも触れるほど身近な「(ビジネス)チャット」から導入し、社員全員にデジタルツールに慣れてもらった上で、誰も置いてきぼりすることなくDXを追求することをお勧めしたいのです。

 ビジネスチャットを導入する際、コミュニケーションの全てをいきなり集約する必要はありません。プライベートで様々なコミュニケーションをしているのと同様に、従来の手法と両立することから始めるのがよいと考えます。ビジネスチャットに慣れたら徐々に、日報、スケジュール管理、契約書、ハンコ、商談管理など、デジタル活用をする業務の幅を広げていけばよいのです。

地方の中小企業が時代に取り残されないために

 地方の中小企業がなかなかデジタル化に踏み切れないのは、各商圏におけるSIerさんとの関係性もあります。経営者自身にデジタルツールの知識がない場合、目的にあわせてどのツールをどう導入・活用すればよいのか判断できず、付き合いのあるSIerさんに相談することになるでしょう。その際、オンプレミスの大がかりなシステムが提案されるケースも多々あり、その高額なコストを知った経営者は導入を諦めてしまうのです。

 地場のSIerさんが悪いと言いたいのではありません。低コストで導入できるビジネスチャットばかりを提案していれば商売として成り立たないため、わざわざ経営が不安定になる方針は取らないでしょう。それでも、デジタル活用を前提とした働き方は徐々に全国に広がっています。このまま古い商慣習を続けていけば、いずれその商圏だけ時代から取り残されてしまうと思うのです。

 結局、デジタル化の重要性に気づいていない中小企業、気づいていても行動できていない中小企業を助けられるのは、唯一、地場のSIerさんなのです。そのためにワークスモバイルジャパンが協業・サポートできることがあれば当然力を尽くします。お客様にとっての最善の提案を一緒に考えましょう。地場のSIerさんがどう変われるかが、地方・中小企業のDX推進の肝になると考えています。

福山 耕介(ふくやま・こうすけ)

ワークスモバイルジャパン株式会社 代表取締役社長

2017年にワークスモバイルジャパン株式会社に参画し、執行役員 本部長としてパートナーセールスおよびプリセールスの責任者としてLINE WORKSのエンタープライズビジネスの全般を掌握。さらに新型コロナウイルスの感染拡大によって働き方が激しく変化する中、LINE WORKSの新たな市場の開発や、地域における営業スキームの開拓など、中小企業におけるICT活用の促進を進めてきた。2021年4月に代表取締役社長に就任し、47都道府県で働くすべての人たちに向けたモバイル環境における活発なコミュニケーションへの貢献や、より役立つビジネスチャットサービスの提供など、ビジネスパートナーと共に業界全体の発展に取り組んでいる。

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