スピルバーグ監督の「A.I.」から20年--ガジェットの未来について考えてみた - (page 2)

Scott Stein (CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル2021年07月29日 07時30分

 翌2002年に公開されたマイノリティ・リポートと並んで、A.I.はSpielberg監督のダークなSF観を代表する作品だ。この2作は、ブックエンドのように対を成す作品のように感じるが、筆者にはA.I.の印象の方が後年まで強く残っている。デイビッドに同行するロボットのテディベア、Jude Lawさんが見事に演じたロボットの「ジゴロ・ジョー」、そしてその3人組というところが、未来版「オズの魔法使い」のように感じられることなど、その気になれば、まだいくらでも語ることができる。

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提供:Warner Bros./Screenshot by Scott Stein/CNET

 なぜそう感じるかというと、これが遺棄されたテクノロジーについての物語だからだろう。デイビッドは、ガジェットのプロトタイプ。自分自身の存在について、次第に疑問を抱くようになり、その答えに納得がいかない。答えを得ることなど、誰にもできないことだろう。素晴らしいとされているテクノロジーのおもちゃが、数年後、さらに数十年後にはいったいどこへ行くのか、ということを夢想する物語でもある。かつてのAIロボット、Ankiの「Cozmo」や「Jibo」、ソーシャルネットワークやゲーミングプラットフォームが、砂のように崩れ去るところを想像してしまう。残るものもあれば、穴あきチーズのような姿になるものもあるだろう。生き延びるもの、作り直されるもの、部分的に手が加えられ改良されるものもある。

 「ウォーリー」のような映画でも、似たようなアイデアが描かれている。数々のSF作家も同じだ。Cory Doctorow氏やTed Chiang氏、Annalee Newitz氏などが思い浮かぶが、もちろんそれ以外にもたくさんいる。

 A.I.という冷淡な作品の存在は、筆者の子ども時代における最後の古傷のようにも感じられる。Spielberg監督が生み出した、家族向けの80年代作品の雰囲気が、A.I.でも前半にはかすかに残っている。だが、その感じは作り物だ。デイビッドが家族に預けられるのは、無理強いされた、実験にすぎない。今この瞬間のことしか考えていない、残酷な仕打ちだ。そして、筆者の好きなSF小説(Neal Stephenson氏が「七人のイヴ」や「Anathem」などで好んで描いた数千年分の時が飛ぶ設定、「ファウンデーション」の時間の跳躍、Charles Stross氏の「アッチェレランド」など)の定番として、A.I.でもかなりの時間が飛んでいる。エンディングは、筆者から見るとそれほど奇妙ではなく、茫漠と感じられるわけでもない。だが、テクノロジーの未来に対する宇宙的恐怖は感じる。小型の不思議な新製品、例えば新しい拡張現実(AR)ヘッドセットや小型のスマートウォッチ、ファームウェア更新まであるおもちゃのロボットなどを見たときにいつも抱く感覚だ。

 とはいえ、A.I.の多くの部分には、確かに未来予測が感じられる。都市の水没や、異常気象による破壊。テクノロジーに対して一般市民の根底に流れる不信感。ロボットに向けられる人間中心の差別意識と、そこから生じる宗教じみた集会。故Steve Jobs氏を思わせる、冷静で信念を持って神の役割を演じる新たなテクノロジーの創造者。そしてもちろん、ロボットとの間に感情的なつながりが芽生えるという、おなじみのテーマ。

 映画でもテレビドラマでも、筆者にとってはこれほど完璧に人工知能(AI)をとらえた作品はないと思う(もちろん、「2001年宇宙の旅」は傑作だ。「エクス・マキナ」には感動はしなかった。ロボットの映画は総じて好きな方ではない)。ロボット工学やソフトウェアは、厄介な領域だ。だが、A.I.でデイビッドに扮した俳優のHaley Joel Osment君の演技には、いまだに感嘆させられる。別の出演映画「シックス・センス」のわずか数年後のことで、初めて見たときは困惑させられる場面がところどころあった。デイビッドに感情移入するところなのか、それとも嫌悪感を抱くところなのか、と。だが今は、それが感情に訴えてくる魅力と反感との絶妙なバランスであることが分かる。Osment君のつるっとした顔や、うす気味悪い笑顔も、常に愛されたいと願う欲求も、完璧だ。

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