Joe Biden米大統領は米国時間7月9日、コロナ禍で打撃を受けた経済が回復し始める中で、さらなる競争を促すことを目的とした大統領令に署名した。この措置は幅広い業種に影響を与えるが、特に影響を受けるのはIT業界だ。
Biden大統領が署名した大統領令「Promoting Competition in the American Economy」(米国経済における競争の促進)は、連邦機関に対する72の指令で構成されている。IT業界については、米連邦取引委員会(FTC)に対し、監視とデータ収集に関する規則の制定、インターネットのマーケットプレイスにおける不公平な競争手法への対策、独立系の修理業者や個人が機器などを「修理する権利」を不公正に制限しないことなどを検討するよう要請している。
また、Obama政権時代の「ネット中立性」規則の復活を求めているほか、合併や買収への監視の強化を促すとし、「独占的なインターネットプラットフォーム」について指摘している。
Biden大統領は9日の記者会見で、「独占企業による悪質な行為はもう許さない」と述べた。「競争なき資本主義は資本主義ではない。搾取だ」(Biden大統領)
競争するのではなく競合企業の買収を進めるIT企業の動きに関して、政治家や政府機関は厳しい監視の目を向けている。例えば、FacebookはInstagramやWhatsAppの買収をめぐり、反トラスト法(独占禁止法)違反の疑いで提訴されていた。連邦裁判所は先週、FTCと複数州の司法長官が同社を提訴していた2つの裁判で、原告の主張を棄却する判断を下している。FTCは30日以内に修正した訴状を提出することができる。
大統領令は、IT企業がビジネスの一環として膨大な量の個人データを収集する手段についても踏み込んでいる。この問題は、これまでにもFacebookやGoogleをめぐって議論されてきた。
また、独占的なオンライン小売マーケットプレイスを運営し、自社製品のほか他社の製品を販売する企業の規制を求めている。FTCに対し、大手インターネットマーケットプレイスにおける不公平な競争に対応する法律を適用するよう促した。このような法の執行は、Amazonがターゲットとなる可能性が高い。同社は2020年、米国のEコマースの売上高の約40%のシェアを占めていたとされている。新しくFTCの委員長に就任したLina Khan氏は、エール大法科大学院に在籍していた2017年に、Amazonによる反競争的な慣行の可能性を取り上げた「Amazon's Antitrust Paradox」(Amazonの反トラスト・パラドックス)という論文を発表している。Amazonは、同氏が客観的な視点で手続きを進められないと主張し、同社に対する反トラスト法違反の疑いをめぐる調査に同氏を関与させないよう求めている。
連邦議会議員も、このようなマーケットプレイスを運営するウェブ小売業者について問題視してきた。米議員らは6月に入り、シリコンバレーに集中する「無秩序な力」と見なすビッグテックの影響力を制御するために起草した5つの法案を発表している。
さらに大統領令は、FTCに対し、ブロードバンドプロバイダー間の競争を促し、透明性を高めることを目的とした複数の対策を求めている。これには、Donald Trump前政権下で撤廃されたネット中立性規則の復活も含まれる。
アメリカ自由人権協会(ACLU)は大統領令を称賛する一方、5人目のFCC委員を指名し、そのような行動を促すことを大統領に強く要請した。FCCは現在、民主党と共和党それぞれの委員が2名ずつとなっており、膠着した状態にある。
ACLUの上級法律顧問Kate Ruane氏は9日、「Biden大統領がネット中立性を復活させ、ブロードバンドコストの引き下げ、必要な透明性の確保を促す対策をFCCに指示したことを称賛する」と述べた。「しかし、FCCがこれらの目標を達成するには、FCC委員が完全にそろう必要がある。Biden大統領は、直ちに5人目のFCC委員を指名しなければならない」(Ruane氏)
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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