米国防総省が、大型クラウド事業「Joint Enterprise Defense Infrastructure(JEDI)」に関する100億ドル(約1兆1000億円)規模のクラウドコンピューティング契約を解除したことが米国時間7月6日に明らかになった。この契約は、MicrosoftとAmazonが関わる法的争いに発展していた。同省はキャンセルの理由について、「要件の進化、クラウドに関する知識の拡大、業界の進歩」により、現状の契約では同省のニーズを満たせなくなったためと説明している。
CNBCが先に報じていたこの契約解除により、さらに何年にもわたり続く可能性のあった訴訟に終止符が打たれることになるが、国防総省のある幹部によると、そのことが今回の変更を促したわけではないという。
「JEDIは、同省のニーズが今とは異なるときに計画されたものだ」と、同省の最高情報責任者代理を務めるJohn Sherman氏は述べ、さらに「われわれを取り巻く環境は進化し、従来型と非従来型の両方の戦闘分野で優位に立つための新たな道すじが保証されている」とした。
Microsoftは2019年10月にJEDI契約を獲得した。この契約の規模は10年間で最大100億ドルに上る見込みだったが、発注先の選定について、AmazonはDonald Trump前大統領が国防総省の意思決定に干渉したために契約がMicrosoftに渡ることになったと主張。Amazonは同年11月に国防総省を提訴し、またその後この契約に関するMicrosoftの作業を一時停止することを求めていた。
Microsoftは6日に公開したブログ記事で、今回の決定に至った国防総省の考えを理解しており、1つの契約が同社と国防総省との関係を決めるわけではないと述べた。
Microsoftの米国規制業界担当プレジデントを務めるToni Townes-Whitley氏は以下のように記している。「国防総省は、何年にも及ぶ可能性のある訴訟を続けるか、あるいは別の道を探すかという難しい選択に迫られていた。重要な技術アップグレードを準備することによって米国のセキュリティを確保することは、いかなる単一の契約よりも重要であるため、われわれは、ミッションクリティカルな技術を確保するために別の道を進むことにした国防総省の決定を尊重する」
Microsoftはこのブログ記事の中で、国防総省の監察総監は2020年に、調達過程における干渉の証拠はなかったと結論付けたことにも触れた。
国防総省はJEDIに代わって、新しいクラウド契約を複数の業者と結ぶことを計画している。MicrosoftやAmazon Web Services(AWS)のほか、Google、Oracle、IBMなど、契約条件を満たすことのできるベンダーを含む、「限定された数の業者からの提案」を求める考えだと、Bloombergは報じている。
Amazonは6日、国防総省の刷新に向けた取り組みを支援できることを楽しみにしていると述べつつ、JEDIの契約先決定には政治的な介入があったとの見解を改めて表明した。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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