ロボティクス技術などを使って、人やくらしを豊かにする「Well-Being(ウェルビーイング)」に取り組むパナソニックの組織「Aug Lab(オーグラボ)」は7月6日、第2期活動成果を発表した。「人と自然の関係性」に焦点を当て、水、空気の流れを感じて動くミストインスタレーションや水や照度に応じて動くコケの環世界インターフェースなどを披露した。
Aug Labは、「自己拡張」に関する研究開発を行うための組織として2019年4月に開設。義手や義足、最近ではパワーアシストスーツなど、人間、身体拡張技術と言われているオーグメンテーション技術を、身体的拡張だけではなく、感性の部分をも拡張する技術として捉え、研究している。
現在、パナソニック社内に10名程度のメンバーがおり、全員がほかの業務と兼任しているとのこと。エンジニアやデザイナーなど、幅広い人材が集っているほか、クリエーターやアーティストなどとの積極的なオープンイノベーションも進める。「こうした人たちとコラボレーションすることで、パナソニックに不足している感性の取り組み加速させたい」とパナソニック マニュファクチャリングイノベーション本部ロボティクス推進室室長の安藤健氏は話す。
屋内でランダムな風を再現する「TOU(ゆらぎかべ)」、3体から成るコミュニケーションロボット「babypapa」、離れた場所にも想いを届けられる遠隔応援デバイス「CHEERPHONE」と3つのプロトタイプを紹介した2019年度に続き、2020年度は水、空気を鮮明に感じるミストインスタレーション「Waft(ワフト)」、コケの環世界インターフェース「UMOZ(ウモズ)」、「MOSS Interface(モス インターフェース)」を発表。
Waftは、コンテンポラリーデザインスタジオwe+(ウィープラス)を共同研究開発パートナーに迎え、作り上げたインスタレーション。水槽の中にミストが充填され、人が前を通るとその動きに反応し、ミストが動くというもの。人感センサーやファンを使わず、空間を漂う空気や人の動きを捉えることで、焚き火を眺めるような刻々と変化する表情が楽しめる。
水槽の長さは2.4メートルになっており「空港や商業施設などのモニュメントのように使ってもらったり、さらに小型化して絵画のように自宅に飾ってもらったりできると思う。人が前を通らずとも、空調の流れをとらえ、ミストがきれいに動くことも確認している」(安藤氏)と、B2B、B2C双方への商品化も想定する。
コケの環世界インターフェースは、ドイツの生物学・哲学者であるユクスキュルが提唱した「すべての生物は自身が持つ知覚によって独自の世界を構築している」という考え方をベースに、ロフトワークとともに開発したもの。ここでは、コケの独自の世界を具現化することで、コケの特性(キャラクター)の面白さや、マテリアル的側面を取り入れているという。
UMOZは、照度、湿度センサーなどを装着し、湿度を与えると動いたり、日光の差す方向へ寄っていったりするというもの。コケは世界で2万種弱があり、日本でも1700種程度が存在するとのこと。日光を好んだり、湿った場所が得意だったりと特性もそれぞれで、UMOZではそうした特性をアルゴリズムとして実装し、コケが見ている世界を表現している。霧吹きで水をかけると動くなど、ペットのような反応が返ってくることが特徴で、動力には現時点でバッテリを使用する。
MOSS Interfaceは、コケと家電を連動したインターフェース。水を与えると電気が明るくなり、乾燥すると電気が暗くなるなど、コケの好き嫌いと部屋の照度が連動する。そのため、コケが好む状態をキープすることで、最適な照度が得られる。安藤氏は「生活に溶け込んだインターフェースとして展開していければと思っている」とコメントした。
「2019年度に発表した「ゆらぎかべ『TOU』は、京都市美術館で展示されたり、『CHEERPHONE』は車いすラグビーCHALLENGE GAME 2021で使用されるなど、社会実装に近づいてきた。いつまでに商品化するといった時間的な制限は区切っていないが、商品化にかなり近づいているものも存在しているので、早く実用化できるように取り組んでいきたい」(安藤氏)としている。
今回紹介したプロトタイプは、同日から9月下旬をめどに「パナソニックセンター東京」のクリエイティブミュージアム「AkeruE」(アケルエ)にて「自然から見た世界」をテーマに展示される。
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