パナソニックとSQUEEZE(スクイーズ)は6月9日、ホテルにおけるアバターでの非対面接客や客室などの電力モニタリングをする実証実験をSQUEEZEが運営するホテル「Minn蒲田」で開始すると発表した。人件費約75%、電気代約10%の削減を目指す。
SQUEEZEは、2014年に創業。当時シンガポールにいた代表取締役CEOの館林真一氏が、遠隔から空き家をコントロールして民泊として運営していた原体験をもとに立ち上げた。現在、このときの運営ノウハウをホテル事業に展開している。すでに無人ホテルなど、全国で累計20棟のホテルを手掛けており、そこで培ったホテルの運営ノウハウを他社に提供するソリューション事業も担う。
「ホテルの運営は固定費が重く、約4割が人件費。その結果、大手であれば固定費を吸収した売上が得られるが、100室以下の中小規模のホテルでは、重い固定費に甘んじた経営をするか、従業員を業務委託にするなど、労務リスクを切り離して利益を出す構造になっている」とSQUEEZE 取締役COOの山口陽平氏は現状を話す。
今回の実証実験では、フロント業務に遠隔コミュニケーションシステム「AttendStation(アテンドステーション)」を導入し、離れた場所にいるフロントコンシェルジュがディスプレイ上のアバターを介し、接客する。アバターは操作しているフロントコンシェルジュの顔の動きと声に連動するほか、状況に応じてお辞儀をするなど、しぐさも選択でき、対面に近い接客が可能だ。
アバターのデザインは4種類用意し、希望にそったデザインもできる。アバターを映し出すモニターは、接客時以外はサイネージや掲示板として機能し、アバターが登場した状態でも、ホテル近隣の地図などを表示するなど、会話と画面表示の両方で、接客をサポートする。
これにより、ゲストの満足度を損ねることなく、フロント人員の人件費約75%削減を目指しており、将来的には、チェックイン作業を終えた後、宿泊客のスマートフォン内にアバターが登場し、おすすめスポットなどや客室を案内するといった形も検討しているとのこと。チェックアウトもスマートフォン画面からワンタッチでできるなど、非接触接客も実現する。
アテンドステーションは、今まで空港などの実証実験に使用されていたもの。リアルタイム翻訳機能も備え、英語で話しかけられると、オペレーター側には日本語の翻訳テキストが表示され、日本語で話すと相手には英語の翻訳テキストが表示される仕組み。英語、ドイツ、フランス、スペイン、ポルトガル、イタリア、オランダ、ポーランド、ロシア、中国の全10カ国の言語が対象になる。
「目指すのは、お客様の満足度を下げずにアバターを介したコミュニケーションを実現すること。実証実験では、コール時間、接客対応時間、画面共有回数、クレーム数など接客品質の可視化と今後の展開を見据えたフィージビリティ検証をしたいと思っている」とパナソニックシステムデザイン システムデザイン1部部長の東淳日氏はコメントした。
電力モニタリングと遠隔コントロールについては、家庭においてHEMSの中心機器となる「AiSEG2」を活用。これをホテルに導入することで、電気使用量を部屋単位で見える化し、原価管理を推進するほか、無人チェックインシステムと連携させることで、チェックイン・アウトに連動して、空調・照明のスイッチをオン・オフするなど、部屋ごとの電気代節約に結びつける。
パナソニック ライフソリューションズ社エナジーシステム事業部くらし空間イノベーションセンターコアビジネス推進室室長の川勝正晴氏は「AiSEGは2012年から住宅市場で、累計16万台を販売してきた。今回はホテルという居住空間にチャレンジしている。AiSEG2と分電盤を使って、光熱費を部屋別で管理できればコスト削減に向けた取り組みができる。お客様の滞在推定などから清掃タイミングの効率化などにもつなげていきたい」と電力量を可視化することで、ホテル全体のオペレーションの効率化にも期待を寄せる。
山口氏は「遠隔によるフロントコンシェルジュサービスや電力の見える化など、一連のノウハウをおリューションとして外部にコンサルティングしていきたい」とした。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス